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【翻訳】Slavic Saturday:レーシェン

この記事は「グウェントで学ぶスラヴ文化」をテーマに2021年10月14日に Notion 上で公開されたものの移転記事です。原則として当時のまま転載していますが、ほとんどの画像は転載していません

著者:DrDenuz 翻訳:nippongwent
この記事は「Team Bandit Gang」の記事「Slavic Saturday: Leshen (EP8)」の日本語訳です。元記事のURLは既にリンク切れとなっています。
URL:https://teambanditgang.com/slavic-saturday-leshen-ep8/

導入

昔のスラヴ人たちにとって、森とその中にある沼はどこにでもあるものでした。農場や村の周り、山でさえ、森に囲まれていました。それらの森には精霊が棲んでいました。
スラヴの神話に登場する精霊は、ほとんどが友好的な存在ではありません。夜の影に潜む悪魔の話は、スラヴの部族や国中に広まっていましたが、その中でも最も恐ろしい話の一つがレーシェンです。
レーシェン/レーシーは東スラブ語で、森の神です。森全体と領域内のすべての狩りを司ります。

語源

ロシア語では「леший」と表記され、「レーシー」と読みます。英語に直すと「森から来た男」という意味です。
以下は様々な国での別名となります。

  • ボロヴォーイ / ポーランド語:Borowy / 「森の男」

  • ガイェヴォーイ / ポーランド語:Gajowy / 「林の男」

  • レシャク / セルビア・クロアチア語:Lešak

レーシーの見た目

人間形態では、長い白髪と髭、輝く緑の目と毛深い体を持つ老人のように見えます。
短い鉤爪や角も生えている状態で描かれることもあります。レーシーは旅人を安心感を与えておびき寄せるために人間の姿になると考えられています。通常、カフタン(注:トルコ風の全身服)に赤い帯を巻いて、柳の枝か杖を持っています。
普通の老人と見分けるのは難しいですが、いくつかの兆候があります。 —— レーシェンには影がなく、カフタンのボタンが上手に着けられていません。
怪物の姿のときは、皮膚は緑で木の皮のように厚く、髪の毛も同様です。森の中でのレーシェンの身長は、木の高さによって決まります。つまり、最も高い木と同じくらいの高さになり、一方で、森から出て野原を歩き回るときには草の葉と同じくらいの低さになります。

行動

レーシーは森の奥深くで過ごしているだけではなく、草原にも出かけることが知られており、多くの場合、夜に活動しています。
たいていの場合、森には一人の「緑の男」がいて、他にもいる場合は、その支配者がいます。
レーシーたちの中には、洞窟や森の荒れ地に住む孤独な放浪者もいれば、大きな家を建て、たくさんの妻や子供たちと一緒に暮らす者もいます。彼の主な役割は、森の安全を守ることです。この緑の男は、自分の森で泥棒や口笛、叫ぶことを許しません。森に来た迷惑な訪問者たちは、レーシーの咆哮や様々な悪戯で追い出されます。レーシーがこうした森の平和を乱す者を追い越すと、その者は記憶を失うと言われています。
レーシーは森だけでなく、森の住人もその手で守っています。オオカミとウサギは群れの一員として考えられており、そして彼の好きな動物であるクマは、しばしばレーシーの家の饗宴に招待されます。
彼の存在は、葉のざわめきや木の震えを聞くことでわかります。この森の神は豊かな音を出すことができます。それは動物の鳴き声、笑い声、口笛、拍手と様々です。また、やまびこを作ることもできますので、自分が言った言葉が2回聞こえてきたら、祈ったほうがいいでしょう。あなたはレーシーに遭遇してしまい、彼の手のひらの上にいるのですから。

レーシーの恐ろしい側面とその対策

レーシーたちは少女や子供を森に誘い込むのを好み、彼女らを汚した後に帰すとしても長い時間が経ったあとになります。森の近くに住む村人や入植者たちにとっては深刻な脅威です。
また、人間の子を誘拐し、自分の子と交換するのも好きです。 レーシーの子はたいていは強いのですが、とても愚かで大食いです。さらに、入れ替え子は12歳になると、森に逃げ帰ってしまいます。
森を通り抜けようとした人が不幸にも不機嫌なレーシーにばったり出会ってしまった場合、道に迷わされます。そうした不幸な旅人は沼に行ってしまい溺れるか、荒れ地に行ってしまい飢えで倒れます。
対策としては、様々な贈り物やお供え物、たいていは塩入りのパンを与えることで単純にレーシーを買収することができます。また、レーシーを圧倒し、支配するお守りもあります。最も簡単な予防策には、服を表裏逆に着たり、ブーツを左右逆に履くというものがあります。

訳注:買収できるというのが面白かったのですが、日本でも「送りオオカミ」というものがあります。現代では「女子を家まで送るふりをして襲う」という行為を指す言葉になっていますが、もともとは人が森や山を通る際に監視のために追跡してくるオオカミのことを指しました。対処を間違えると襲われますが、一方で旅人を見守っているという解釈もあります。旅人が無事に難所を抜けた場合は、そのお礼にオオカミに食べ物を与えたという民話が残されています。森のオオカミを統率する人型の神がいると考えた西洋と、オオカミそのものに神性を見出した日本との考え方の違いがあるのかもしれません(参考:Wikipedia

これは「Slavic Saturday」の8番目の記事です。ファンのみなさん、このほかにも多くの生き物たちについて語る予定です。これまでの記事はこちらで読めます。来週の土曜日に皆さんにお会いできることを楽しみにしています。
DrDenuz は Bandit Gang のゲストライターです。 彼についての情報はこちら:TwitterTwitchYouTube

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