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【翻訳】Slavic Saturday:マムーナ

この記事は「グウェントで学ぶスラヴ文化」をテーマに2021年8月24日に Notion 上で公開されたものの移転記事です。原則として当時のまま転載していますが、ほとんどの画像は転載していません。

著者:DrDenuz 翻訳:nippongwent
この記事は「Team Bandit Gang」の記事「Slavic Saturday: Mammuna (EP1)」の日本語訳です。元記事のURLは既にリンク切れとなっています。
URL:https://teambanditgang.com/slavic-saturday-mammuna-ep1/

スラヴ伝承が語るマムーナ

昔のスラヴ人たちにとって、森とその中にある沼はどこにでもあるものでした。農場や村の周り、山でさえ、森に囲まれていました。それらの森には精霊が棲んでいました。スラヴの神話に登場する精霊は、ほとんどが友好的な存在ではありません。夜の影に潜む悪魔の話は、スラヴの部族や国中に広まっていましたが、その中でも最も恐ろしい話の一つがマムーナです。

マムーナの棲家

マムーナは通常、川や小川、湖の近くにある雑木林に棲んでいます。

特徴

「Dziwożona(波語:“野生の女” ぐらいの意味)」または「Boginka(波語:“女の精霊” ぐらいの意味)」としても知られるマムーナは、邪悪で危険な沼の女悪魔です。彼女の髪は長く、いくつかの資料によれば、マムーナの体は髪で覆いつくされています。彼女は長い乳房を持ち、通常はそれを肩に引っかけて乗せていると言われています。

垂れ下がった乳房

その胸を使って洗濯をしているとも言われています。また、彼女の乳房は、捕まえた者たちに母乳を与えたり、口に入れて窒息させるために使われていたり、叩くために使われているとも考えられています。

子ども攫い

日が沈むとマムーナは子どもを攫い始めます。彼女は「šestonedieľka」(*1)と呼ばれる女性の子どもを攫います。
「šestonedieľka」の子どもは、「捨て子」または「取り換え子」と呼ばれるマムーナの子どもと入れ替えられてしまいます。マムーナの子どもはすぐにわかります。黒ずんでいてとても醜く、大きさが不釣り合いで、障害や病気を抱えています。腹部が大きかったり、頭が異常に小さかったり大きかったり、こぶがあったり、手足が細かったり、体に毛が生えていたり、長い爪があったりします。歯も早く生えてきます。子どもはとても邪悪で、周りの人間はその巨大な悪意に耐えなければいけません。母親を怖がり、寝ようとせず、騒がしさを恐れ、とても大食いです。

取り換え子

大人になった場合(実際のところ、子どもの頃に死んでしまうため、そうなるのはまれ。多くの場合は親に殺されてしまっているかもしれません)、障害を持ち、会話ができず意味不明に捲くし立て、人を信用しません。
子どもを攫われたくない母親は子どもの手首のあたりに赤いリボンを巻きつけ(*2)、子どもの頭に赤い帽子を被らせて月明りが顔に当たるのを防がないといけません。どんな状況であっても、日が暮れた後に赤ん坊のおしめを洗ったり、赤ん坊が寝ているときに目を離してはいけません。
「Dziwożona」を退ける別の方法は、セイヨウオトギリソウかイトシャジンの花を家に置いておき、危険が迫ったときに握ることです。
子を攫われた母親には、我が子を取り返すわずかばかりの機会があります。取り返すためには、取り換え子を柳の小枝で叩き、その泣き声で子を取り換えたマムーナを呼び起こします。そうすれば、マムーナは攫った子を元の母親に返します。しかし、その子が生きたままとは限りません。
子ども取り返す別の方法が語られている寓話もあります。母親は取り換え子を厩肥場(*3)に連れていき、白樺の小枝で鞭打ち、卵の殻で水をかけ、「あなたのを連れて行って、私のを返して」と叫びます。するとマムーナは自分の子を哀れに思って連れて行き、攫った子は返します。

別の資料では、マムーナは様々な薬草の効能に通じており、森で迷った人を助けるのが好きな老婦人だとしています。

*1:「šestonedieľka」はスロヴァキア語で「六日曜日の女」という意味で、6週間前にお産した女性のことを指す。
*2:この習慣は今もポーランドの一部地域に残っているが、元来の意味は失われてしまっている。
*3:この原文は「a midden」で「ごみの山」という意味ですが、元記事(リンク切れ)に示される絵からもわかるように、ここでは家畜の糞尿と藁が混ざった廃棄物や生ごみ(厩肥・堆肥の原材料)を山にしておく場所のことです。適切な言葉が見当たらなかったので、漢字でイメージしやすい「厩肥場」としました。平地の少ない島国の日本では「a midden」は「貝塚」や人肥中心の「肥溜め」を真っ先に思い出しますが、スラブ圏は内陸部なので、家畜から出た廃棄物をまとめた場所となるようです。たった一つの単語にも文化の違いを感じます。ついでに、イェネファーが少女の頃は豚小屋に住んでいたことを思い出しました。

結語

これは「Slavic Saturday」の最初の記事です。ファンのみなさん、このほかにも多くの生き物たちについて語る予定です。来週の土曜日にまたお会いできることを楽しみにしています。

DrDenuz は Bandit Gang のゲストライターです。 彼についての情報はこちら:TwitterTwitchYouTube

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※「日本グウェン党」の記事は「CDPRファンコンテンツガイドライン」に従って作成された非公式のファン作品であり、CD PROJEKT REDによって承認されたものではありません

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