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人間の一番古い記憶とは何か?
アートでもエンタテインメントでもそうだが、人にコンテンツを訴えようとするとき、なるべくその人の「奥」に届けようとする。なぜなら、その方が深く刺さるからだ。刺さって抜けなくなるからである。
それゆえ、人は人の奥を目指す。では、「奥」とは何か? そこにはいろいろな定義があるだろうが、一つには「一番古い記憶」というのがあるだろう。
人は、記憶に支配されている。特に、古い記憶ほど人を支配する。だから、その人の一番古い記憶を知れば、その人を刺せるということになる。その人の奥にコンテンツを届けられるようになる。
では、人にとって一番古い記憶とは何か? そのことについて、ぼくは、生まれたばかりの赤ん坊を見ていて、ある仮説が思い浮かんだ。
生まれたての赤ん坊には、五感というものがない。まず視覚がないし、味覚もない。嗅覚もないが、聴覚は少しある。そういう、人間として不完全な状態で生まれてくる。
そんな赤ん坊に、すでにほとんど完璧なまでに備わっている感覚がある。それは触覚だ。赤ん坊は、触覚だけは、すでに成人とほとんど変わらないような状態で生まれてくる。
例えば、希に生まれてからも自力で呼吸できない子供——産声を上げられない子供がいる。医者は、そういう子供のお尻を叩く。なぜかというと、お尻を叩かれたショックで泣き始める場合があるからだ。そして、なぜ赤ん坊がお尻を叩かれてショックを受けるかといえば、彼らには触覚が備わっているからである。
生まればかりの赤ん坊に触ると、敏感に反応する。そもそも、お腹が減るというのは触覚の仕事である。お腹に痛痒を感じ、それが苦しいからおっぱいを飲もうとする。赤ん坊は、他の四つの感覚が未発達でも生きていける。しかし触覚が未発達だと、生命を維持することはとたんに難しくなる。
ところで、人間の脳というのは、各器官に対応した細胞が脳にある。感覚もそうで、触覚なら触覚の細胞、視覚なら視覚の細胞、嗅覚なら嗅覚の細胞が、それぞれ脳にあるのだ。
そう考えると、脳の各器官に対応した細胞のうち、最も古いのは触覚の細胞ということになる。このことから、脳が最も最初に記憶するのは、おそらくこの触覚に対応した細胞が何らかの反応をしたときではないだろうかと考えられる。つまり、何かに触ったときではないだろうか。
では、何に触ったときか?
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