ちいさな冒険のための乗り物

仕事が休みなので、原付に乗って美味しいパン屋に行った。
3人入るのがやっとの対面式のパン屋は、開店から30分しか経っていないというのにショーケースの中が半分くらいの量に見えた。いつもならもう少しいろいろ選んでいただける時間なんですが…と店主が他のお客さんに話していたのを聞いていた。

半分にカットしてもらったカンパーニュとドライトマトのフガス、クリームチーズのサンド。そして同居人へのお土産に食パンを。（同居人はプレーンな味のパンしか食べない）

朝の空はどんよりとして湿度が重たくて、すべての予定を放り投げてゴロゴロしていたくなるほどだったのに、店から出る頃には太陽が出て風は気持ちよく吹いていた。
川沿いのコンビニに寄り、クリームチーズのサンドに合う飲み物を買う。原付は置いて散歩道のベンチで食べる。
パンはうまいし、達成感も満足感もある。なんて良い休日！

自分はこれを今までやってこなかったんだ、もったいなかったなと思う。
原付の免許を取ったのは、たった一年ほど前の今頃なのだ。自分の誕生日当日に試験を受けた。
誕生日に免許を取る！初めての運転免許を！それはいい思いつきだと自画自賛した。
ちなみにバイク乗りの同居人は、16歳のとき原付免許の試験に2回落ちたそうである。負けるわけにはいかない。それに免許センターへ行く方法は同居人の送迎（バイクのうしろ）しかない。もし落ちた場合に再度予定をすり合わせるのも面倒だから、一発勝負だ。

そして私はそれに勝った。
「今日誕生日なんですね、ダブルでおめでとうございます！」と言ってくれた免許センターの方ありがとう。うれしさ倍増しました。

結局その後バタバタしていて、半年後に中古の原付がうちに来た。
生まれて初めて生身で公道に出た日、進路変更ができずに遠回りして帰って、泣いた。
怖すぎてもうこれはダメだな…と思い放置していたが、見かねた同居人がバイクで先導してくれたおかげで少しずつ乗れるようになった。

それでようやく、この乗り物のおかげで良き休日を過ごせるようになったのだ。まだ車通りの多い道は怖いし、5km圏内しか行けてないけれど。

さて、ここからどこまで行けるだろうか？自分でも楽しみにしている。

2024/6/30 （梅雨）

（※タイトル画像はイメージです）