まずは自分を取り戻さないとね_

「いることのすべて」の根っこにあるもの。

9月2日(日)に開催するイベント「いることのすべて」の言い出しっぺは、ぼくだ。

"お〜にゃ〜"こと近藤陽子さんが「居るだけ活動」というのをしていると知り、どんな活動か聞いてみたいと思ったのがきっかけ。

お〜にゃ〜さんはきれいな女性だし、イベントページも猫の写真だし、なんとなく「いい感じ」なのだけれど、根っこにあるぼくの動機はわりと根暗だ。

「アンタが生きてさえいればいい」

子どもに対して、母親がそんなふうに言う場面をドラマで見たことがある。

子どもを産んだ多くのお母さんが同じように思うらしいし、ぼくには子どもはいないけれど、めいっ子なんかを見ていると確かにそう思う。

でも、現実はそうじゃないよなぁ、とも思う。

ある年齢から「生きてさえいればいい」が変質して、周りに合わせた行動がとれること、学業の成績が優秀であること、十分な稼ぎがあることといった数々の条件が課せられることになる。

最初は「生きてさえいればいい」だった親も、わが子がその条件から外れることを心配するようになる。そして、子どもはその変化を敏感に感じ取る。

若いぼくらだって、女の子にモテたいと思ったなら、優しくなければとか、カッコよくなければとか、麻雀の牌のようになにか条件を揃えなければと思う。

そうして、この社会で生きるため、他人に認められるための条件が人生を支配するようになる。

牌を揃えることをしているうちに、装うことがうまくなったり、それができない自分を責めたり。そんなことばかりしていると、自分が本当はなにを思い、なにを感じているのかさえ、分からなくなる。

自分がいま抱えている苦しみは、結局のところ、その「条件揃え」ばかりしているからではないか。もはや誰かも分からない自分以外の他者の、お眼鏡にかなうように生きているからではないか。

そう思ってはみても、なかなかその癖からは抜け出せない。
少なくとも、ぼくはそうだ。

一方、なんの制約も、利害関係もない人と談笑したりしたときや、じっくりと人の話を聞いていったときに、思いがけず「この人は素晴らしいなあ」と思うことがある。

それはさっき言っていた「条件」とは別のところにある、でも確かに素晴らしいと思えるようなことで、そういう話を聞いていると、自分が拡がって豊かになるような感じがして、その人の苦渋に満ちた個人史も含めて「素晴らしい」と好きになる。

でも、そういうときに感じる価値と、学校や会社で必要とされる価値とは、かけ離れているように思えて、途方に暮れる。

いま、児童館でやっている学習サポートの仕事でも、子どもたちのよさは勉強の成績とうんと遠いところにあるように思えて、むしろ勉強することがそのよさを殺してしまうように見えることさえあって、やっぱり途方に暮れている。

学校から会社へ、勉強から仕事へ、どこに行っても勝っている人の声ばかりが大きくなって、そこで活躍できない人たちの生は、なんと本人たちの手で摘み取られてしまう。

「条件」に満たない人たちは、周りの目を気にして自分のことを語らなくなってしまうからだ。

そういう一切に対して、なんだかなぁと思っている。
もちろん、そこには、仕事というステージで活躍できていないぼく自身の負い目が含まれているのだけれど。

そんなところに「居るだけ活動」という言葉が飛び込んできた。

打ち合わせに行って聞くと、やっぱりただ「いい感じ」の活動ではなく、白鳥が水面下で必死にかくように、見えないところでグググッと踏んばっている筋肉の動きを感じた。

「居るだけ」を貫くには、それなりに力がいるのだ。

そんな話をだれかと共有してみたい。
「どうしてこんなことになっちゃってるんだろうね」と話してみたい。

そういった気持ちが、" かのスピッツも「猫になりたい」と言っていたけれど、ときどき、猫はいいなと思うことがある。" という案内文につながる。

ぼくたちの身体の細胞は、いつも「いること」に向けて働いている。
もう何もかも嫌になって「明日、目覚めなければいい」と思うような日にも、ちゃんと翌朝、目を覚ますようにうながす。

細胞はどんなにか「いてほしい」と思っていることだろう。
(なにも思っていないから、そうできるのかもしれないけれど。)

猫のように、細胞のように、ただ「いるだけ」でありたい。
細胞並みに「いてほしい」と自分のことを思いたい。

そして、できれば、周りの人と「いること」を祝いたい。

そんな思いが「いることのすべて」になった。

と、長々と書いてきたけれど、ぼくは要するに「らくに生きたい」ということしか言っていないな、と思った。そんなへなちょこな思いを、こんなにも真面目に語ることになっちゃうのは、やっぱへんだよね。

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