春の夜の夢のごとし

春の夜の夢の如し。

奈良石切での『未二観レビューの手ほどき』四回目が終わった。

前日の『円坐影舞空棺』を含めて、実に充実した時間だった。

でも、まだこの二日間の出来事を振り返る気にはなれないし、そもそも言葉にならない。

いまは、最後にした影舞とかけてもらった言葉のじーんとしたあったかみがあって、

幸運な人生だな、とただただ思うばかり。

ほかほかだ。

そんな中、参院選があって、吉本興業が揺れている。
どちらもとても気になっていて、石切でも仲間たちの前で妙に力説していた。

ぼく自身の人生も、世の中も、大きく変わろうとしている。
その地殻変動の揺れが伝わってくる気がして。

『奢れる人も久からず、
 ただ春の夜の夢の如し』

という『平家物語』の一節がまた思い起こされる。

また、と書いたのは、僕はこの一節を何度も何度も思い出しているからだ。人生のふとした折に、この一節が頭の中で謳われる。

人の一生がいいこともそうでないことも丸ごと引っくるめた、春の夜の夢のようなものだとしたら。

蒸し暑い夏の夜に、ふっと、そんな思いがよぎって「いずれにしても、自分の一本道を行くしかないんだよな」と思いを改める。

それはきっと、そう悪くない道のはずだ。

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澤 祐典
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