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コンテンツをころすもの。

ネットで投稿されていた漫画『100日後に死ぬワニ』が、おととい最終回を迎えた。

そして炎上した。
最終回の投稿直後に映画、書籍、物販のプロモーションが行われたこと、エンディングムービーとして制作されたいきものがかりの新曲PVに電通のプランナーの名前があったことがその理由らしい。

個人の思いつきでこつこつ投稿していたものが共感を得て広まる。そういうSNSならではの動きを楽しんでいた人々が、商品を売るための大掛かりなキャンペーンだったと知るや、一気に興ざめして怒り出す。

コンテンツの横にそっと「電通案件」の四文字を添えられただけで、純粋に楽しんだ気持ちがどこかに霧散してしまうような感覚が僕にもあった。

でも、驚いたことにこれ、本当にキャンペーンじゃなかったらしい。

いきものがかりの水野さんと作者のきくちさんの語るところによれば、「100日目」を目指した奇跡の物語が舞台裏にもあったようだ。それがこんなふうに曲解されたことに、きくちさんは涙ながらに悔しさを語られていた。

それでも、あの四文字のインパクトが消えない。二人の「本当の」話すら動画で観ないと半信半疑に感じられてしまうほど。それぐらい今回の動きは「人がいやがること」に触れていたのだと思う。

でも、よく考えるとちょっとへんだ。僕たちの触れる多くのコンテンツには電通が関わっている。感動したものもいくらだってあるだろう。

それに広告に感動した事だっていくらでもある。

これらのCMが「電通案件」だったか分からないけれど、そうだとしても感動は消えない。

では、なんで今回はいやだったのか。
僕自身の話しかできないけれど、個人の投稿として見ていたつもりが、大きな組織のキャンペーンと言われて白けた感覚があった。読後の余韻を楽しんでいるタイミングにすぐお金の話をしだすのも「ん?」とかすかな違和感をおぼえた。

その違和感が「電通案件」という言葉とぴったりだったんじゃないかと思う。そして真相として「電通の関わりはない(PVのみ)」と語られた今でも、この四文字が貼り付いて離れない。なにかとてもいやな感じがすることを想起させるすごいコピーだったのだと思う。

コンテンツの中身を吹き飛ばしてしまうほどの。

別に『ワンピース』だって『鬼滅の刃』だってお金はからんでいる。映画化も物販もなされている。でも、いやだと思ったことは一度もない。

なにがこんなにいやがられたのか。
一日でコンテンツを突然死させるほどのインパクトを持ったのか。
この不信感のような感覚は、どこから来たのか。

いくつかの解説記事を読んでみたけれど、まだしっくり来るものはない。
ワニにも作った人たちにも全く落ち度がないどころか、純粋な気持ちでつくったものなのに、こんなことになってしまうのは、なんだか不思議でこわい気がする。

でも、きっと時間が経てば、この騒ぎの余韻は消えて、ワニだけが残るんだろうな。

そうして、なんのノイズもなくこの作品を読んだ人が感じるものが、きっと「ほんとう」なんだと思う。

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