夏の終わりに語りたい2010年代アニメの傑作、『のんのんびより』4話『夏休みが始まった』の話
皆様、今年の夏はいかがでしたでしょうか?
まあ今年も自粛自粛で動けなかった事でしょうし、むしろ今年の夏の思い出と言えばワクチン接種以外にない気がします(笑)
僕も先月の終わりにやっとこさワクチンを射てまして、今書いてる最中も実は腕が痛くて(笑)しかも1回目には出ないと思っていた熱も微妙に出ていてなんだかなあという感じですね。
まあ熱出ててもnoteだけは書いときたいので、今回は前々から書きたかったとあるアニメの神回を紹介させていただこうかと思います。
皆様、『のんのんびより』という作品をご存じでしょうか?
のんのんびより
いわゆる日常系と言われる作品でして、原作漫画は月刊コミックアライブにて今年まで12年間連載された人気作であります。
アニメも2013年に第一期が作られてから三期まで続き、映画化もされました。
監督の川面真也さんという方は今年『岬のマヨイガ』という映画も作っており、現在公開中でございます。今期待されている若手監督の1人と言えるでしょう。
で僕も一期は観まして、一応完走したんですが…まあ正直僕には合わない作品でして(笑)
そもそも日常系というジャンルにハマりにくい性格でして、まあ好きな作品もあるのですが『のんのんびより』に関しては最後まで観はしましたがそこまで…という感じでした。
ただ、じゃあなんで今更8年前の日常系アニメをわざわざ取り上げるのか。
実はこのアニメ、1話だけめちゃくちゃ神回があるんですよ(笑)
語り草になるアニメの神回ってあるじゃないですか。有名なのでは『おジャ魔女どれみドッカ~ン!』の第40話『どれみと魔女をやめた魔女』とか、『機動警察パトレイバー』の第29話『特車二課壊滅す!』とか。
『どれみと魔女をやめた魔女』では今夏に『竜とそばかすの姫』を作られた細田守さんが演出をされ、『特車二課壊滅す!』では巨匠押井守さんが脚本を手掛けられた。そういったファンの間で語り継がれるような神回というのは凄い方が携われていたりもして今振り返ってみるとそういった意味でも面白い。
で今回題材にさせていただく『のんのんびより』の第4話『夏休みが始まった』ですが、この回の演出欄を見てみると阿部栞土という方の名前が。
…誰?
って話じゃないですか(笑)検索しても全然引っ掛からなくて、最初本当に誰なのかわからなかったのですが、いろいろ調べていくうちにこの名前が阿部記之という方の別名義というのがわかりまして。
阿部記之さんという方はこれまで様々な作品を手掛けられている方でございまして、有名な作品で言いますと『幽☆遊☆白書』『忍空』『烈火の炎』『GTO』などの90年代を代表する作品から『BLEACH』『アルスラーン戦記』『BORUTO』まで有名原作を次々手掛けられている方なんですね。
そんな方が、『のんのんびより』の4話にゲスト演出として来られた。
そもそも『のんのんびより』は超ド田舎で暮らす小学生・宮内れんげと仲間達のほんわかした日常を描く作品なのですが、阿部さんが演出として手掛けた4話だけテイストが違う。
漫画は読んでないので原作にあるかどうかはわからないのですが、雰囲気は本当に他の話とまったく違うんですよ。
ストーリーをお話ししましょう。4話『夏休みが始まった』の後半パート、主人公のれんげがあてもなく歩いていると、橋のところで見知らぬ女の子と出会う。
このシーンかなり重要なので覚えといてください。
ほのかと名乗った左の少女は夏休みの間おばあちゃんの家に帰省しに来ておりまして、お父さんから借りたカメラで何かを撮影しようと外に出てきていた。
そんなほのかの話を聞いたれんげはほのかを写真映えする場所に連れていき、仲良くなるわけですね。風車小屋、ひまわりの咲く場所、神社、呼び寄せたたぬき…いろんな場所を2人で巡ります。
1枚目なんか久石譲の『summer』が流れていてもおかしくないですからね(笑)
ここでお伝えしときたいんですが、後半パートは全編通してほとんどこの2人しか出てこないんですよ。『のんのんびより』ってメインキャラが4~5人くらいいるんですよ、名前忘れましたけど(笑)
で本来ならばサブキャラ達が出てくるのが普通なのに、この『夏休みが始まった』ではこの回しか登場しないキャラクターと2人きりで話を進めている。
その特別感と言いますか、この話しか登場しない視聴者にとって思い入れもないキャラクターが、逆にこの話の神秘性を上げてるんですよね。
話を戻します。毎日のように2人きりで遊び、すっかり仲良くなったれんげとほのか。↑の3枚目の画像のシーンで、「明日は小さな滝に連れてくのん!」と言って別れます。
翌朝、大慌てでほのかの家に行ったれんげなんですが、チャイムを押して出てきたのはほのかのおばあちゃん。
そして衝撃的な一言を発します。
「残念なんだけど、うちの息子、ほのかのお父さんが、急にお仕事が入っちゃってねえ。昨日慌てて帰っちゃったのよ」
突然の別れが来たわけですね。まあ王道展開ではあるじゃないですか。でもこの後が凄くて。
おばあちゃんの言葉をすぐには受け入れられず、れんげは無表情で話を聞きます。おばあちゃんが戸を閉めた後もそこに立ち尽くすのですが。
悲しげなピアノのBGMが流れる中、カットを割らずにこの表情だけで30秒あまり動かない。
そしてゆっくりゆっくり、表情が崩れていく。
そして泣き顔は最後まで見せず、遠くからのカットに切り替わります。
で、ちょっとご自分の目で確かめていただきたいのですが、ここからカットが切り替わり、れんげもほのかも映さないシーンが連続して続くんですね。
ひまわり、風車小屋、神社と。
これ、2人が遊び回っていたところでして、しかしそこには2人の姿はなく無人なんです。
要するにこれってれんげにとっての一夏の終わりを画だけで表現してるんですよ。もう観ながら鳥肌がヤバくて(笑)
そして最後に、れんげが橋を渡るシーンで暗転します。
橋の上で出会った2人の物語が、れんげが1人で橋を逆行する事で終わる。話がそこまできっちり作られてるんですよね。
だから本当にこの話ってジュブナイルモノとして完成されきっているというか、多分2010年代の中でも一番くらいの神回なんですよ。
しかもちゃんとハッピーエンドで終わってるんですよね。2人が最初に出会った日、ほのかからカメラを貸してもらったれんげが誤って自分達に向けてシャッターを切ってしまう。さりげなく描かれてるんですが、話の最後、ほのかがれんげに送った手紙の中にその写真が入っている。
そして「来年も来る」という内容の手紙にテンション上がったれんげがお返しの手紙を書こうとするところで話は終わります。
『のんのんびより』観たことないよという方も、日常系自体少し苦手だよという方も、『夏休みが始まった』だけはマジでおすすめできます。他の話は別に観なくていいのでこれだけは観てみてください。
今回は以上になります。この話を単体で書こうかどうかしばらく迷っていたのですが、やはりガッツリ書きたいのと僕みたいなのではありますができるだけこのエピソードを後世に残したいという思いで書かせていただきました。
夏はそろそろ終わりますが、夏が終わるまでにどうぞ観てください。15分くらいの短編映画として見たらとても優秀なので。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
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