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甲府市の防災アプリ取組を視察

 江東区では年々水害被害への警戒感が高まっている。同じく水害被害が懸念される自治体から何か教訓を得ることができないか。そこで山梨県甲府市の取り組みを取材した。
 周囲を山で囲まれる盆地にある甲府市には多くの河川が流れる。過去にはたびたび河川が氾濫し、見かねた武田信玄が堤防「信玄つづみ」を作ったのは有名な話だ。その危機は地球温暖化が進む現代でも高まっている。現在も氾濫可能性のある河川が10あるという。
 そこで甲府市が、取り組んだのがソフト対策だ。2018年から「甲府市防災アプリ」を導入し、昨年にリニューアルを実施した。アプリでは、その時の避難情報や避難所検索、安否登録機能などが利用できる。防災マニュアルや甲府市のお知らせなども見ることができるため平時から情報収集アプリとしての機能もあわせ持つ。
 江東区でも同様の機能を持つアプリは作られている。やや異なる部分は地図を使いやすくした点だ。避難所検索の際にAR(拡張現実)機能を導入。スマホがネットにつながっていなくても自身の位置が分かるようコンパス機能も搭載した。地図が読めない人も迷わず避難所に行けるよう工夫を施している。
 アプリを導入しても使い方がわからなければ意味がない。甲府市では、全31地区を職員が回ってアプリの説明を行ってきた。今年からは水害が心配される地区をさらに細分化。避難所ごとに細かく説明を行っていくという。デジタル導入だけでなく、“アナログ”な方法も駆使し、利用を呼びかけた。その結果、甲府市の人口約18万人の中で、ダウンロード数は2万件を超えた。着実に浸透してきているという。
 江東区の防災アプリのダウンロード数はこの10年で、約4万5000件と54万人の人口比でみると決して高くはない。今年度新たにアプリの改良を実施する予定だが、機能充実だけでなく、周知の方法も合わせて考えていく必要があると実感した。

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