見出し画像

ベーコントマト肉厚ビーフセットが食べたかった

両親が『昼ごはんマックが良い』と言うので、近くのマックに向かった。ちょうどお昼時だったので5組ほど並んでいた。
混んでいるためだと思うが、定期券を買う時によくある、列に並んでいる客に店員が先に注文を聞いてメモを取り、レジでそのメモを見せるシステムを取っていた。
「ダブル肉厚ビーフセットでポテトとコーラ、ベーコントマト肉厚ビーフセットでポテトとスプライトを2セット。」
そのように伝えると慣れた手つきで店員がメモを書き、渡してくれた。
レジでメモを渡すと店員が手際よくレジを打ちメニューを読み上げていったのでそれに一応「はい」と答えていった。

会計を済ませてレシートの番号が読まれるのを待つ。人生の中でこの時間が1番何をしていいか良くわからない。2番目はエスカレーターに乗っている時だ。スマホで漫画を見ても良いが、マックの店員は異常に手際が良いので、1話分スクロールできるか微妙ですることがない。

番号を呼ばれたのでカウンターまで取りに行く。
ポテトの入った紙袋とバーガーが入った紙袋、少し高級な卵パックみたいな台座に置かれたドリンクが取っ手のついたビニール袋で纏められていた。

ドリンクが2つしかないと気付いたのは店の外に出た時だった。紙袋の中身を確認するとポテトも2つ、バーガーも2つしかなかった。
ここでレシートを確認する。お察しの通り、セットが1つずつしか注文できていなかったのである。メニューを読み上げている時に気づけば良かった。金額が明らかに安かったことをもっと不思議がるべきだった。
後悔してももう遅い。
なぜならマックのポテトは青魚よりも足が早いからだ。
私は1度帰宅することにした。

家に着き、先程の状況を両親に説明した。『またマックに行くの?』と聞かれたが、私の性格上もう一度同じお店に行き、店員に不思議な顔をされるのは耐えられないので、「コンビニでなんか買ってくる」と言った。

正直かなりマックの口だった。ここでタイトルを回収させてもらうとベーコントマト肉厚ビーフセットが食べたかった。しかしそれが叶わないことは確約されてしまったので、幾度も聞いた入店音と気の抜けた『いらっしゃいませ』に合わせて、機械的な涼しさが充満した空間に入った。

パンのコーナーを見ると、ホットスナックのチキンを入れるためのバンズが見えた。私にはそれがとても煌めいて見えた。徐にカゴに入れる。レンチンでできるハンバーグ、サラダ、オニオンソースは気がつくとカゴに入ってた。スプライトは無かったので、三ツ矢サイダーにした。

家に帰る。くたびれたポテトだけがテーブルにあった。バンズにマーガリンを塗りトースターで焼く。ハンバーグはレンチンし、サラダにオニオンソースを和えた。気の毒に思ったのか、『冷蔵庫にチーズとベーコンがあるからそれも挟んだら良いんじゃない?』と父親に言われた。完成形が表紙の写真だ。美味しいと言えば美味しいけど、別に別々で食べれば良いなって思ったし、やっぱりトマトがないのが致命的だったと思う。

後日マックに行った時は、もちろんベーコントマト肉厚ビーフセットを頼んだし、メニューの読み上げは、スマホを無くして友達に電話で鳴らしてもらった時の注意深さで聞いた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?