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癌を告知された日に、すき焼きを食べる。~子宮体癌体験記~

2014年3月7日金曜日。

記念日とか一切覚えられない私でもこの日は覚えている。
(いや、本当はカレンダーを遡ったのだが。。。)
猛烈に寒い日だった。雨も降っていた。多分だけど。

この日、私は癌の告知を受けた。
病名は子宮体癌。

癌の告知って、もっと仰々しく、
家族とか呼ばれてされるのかと思っていたら
案外さらっと伝えられてそこに驚き。
こんなことになるなんて思っていなかったので、うっかり1人で聞くはめになってしまった。。

まさか・・・私が・・・癌?
ガーーーーン。とか言ってる場合ではない。

癌って、あれですよね?
へたしたら、死んじゃうかもしれない、あれですよね?
色んなことが頭をぐるぐるめぐって、体から血の気がひいていくのがわかった。
手先が少し震えていることにも。

「ちょっと、お茶のんでもいいですか?」
そういってペットボトルからお茶を飲み、ほんの少しだけ落ち着いてから先生の話を聞いた。

・前の週に取ったMRIの結果、子宮体癌である可能性が高いこと。
・この病院(地元の総合病院)でも治療はできるが、希望があればがんセンターか大学病院を紹介してもらえること。
・手術をして、抗がん剤治療もしなければならないかもしれないこと。

ふと先生の手元にある書類に目を落とすと、そこに、Level4と書かれてあった。
待ってくれ。それってなんか、めっちゃ進行してるってこと?
さっきお茶を飲んだ喉が、砂漠くらい乾くのがわかった。
でも聞かなきゃ。自分の体のことだら。

「先生、このLevel4ってのは、すごく進行してるってことでしょうか?」

しばし沈黙。

「いえ、違います。それは、ステージのことですね。このLevelというのは、癌である可能性のことです。ほぼ間違いなく、癌だということです。」

なーんだ、そういうことか。ホッ。
ホッとしてる場合じゃないのだが、めちゃめちゃ癌が進行してて、もう手遅れなのでは?と一瞬思ったことで、驚きのハードルが下がってしまっていたのだ。

もともと、肝が据わっているタイプなので、この頃には随分と落ち着きを取り戻していた。
他に持病などもなく、癌の治療のみになるので、がんセンターの方が良いだろうという先生のアドバイスもあって、がんセンターの紹介状をもらって翌週に行くことにした。

紹介状の準備を待っている間に、母に電話を入れた。
「癌かも。来週、がんセンター行くわ。」母の顔が思い浮かんだ。私と違って母は気が小さい。きっと顔面蒼白に違いない。帰ってから直接伝えればよかったなと少し後悔した。

紹介状ができて看護師さんから受け取った。その時の看護師さんの表情と、「お大事に」の言葉と、深々と頭を下げた姿が妙に重くて、あらためて大変な病気になってしまったな…と実感。

家に帰ると、案の定、顔面蒼白の母がへたり込んでいた。
「とりあえず、まだ癌かどうかもわからんし(本当はほぼほぼ確定だけど)、来週がんセンター行ってみるわ。」
相変わらず顔色の無い母が無言でうなずいた。

ちなみに、準備されていた夕飯はすき焼きだった。すき焼きって、なんかお祝い的な感じじゃないかい?今すき焼き?と思って少し笑ってしまった。

こんな時でも、すき焼きは美味しい。
こんな時でも、お腹って空く。
モグモグ食べる私の横で、小鳥の食事くらいの小さい一口を運ぶ母。
いつもと変わらぬ雰囲気を必死で醸し出している父。

ごめん、こんな歳(当時36歳)でめっちゃ心配かけてる…
と、思って胸が苦しくなったけど、やっぱりすき焼きは美味しかった。

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