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「エゴン・シーレ展」で見たもの

1月26日から東京都美術館で始まった「エゴン・シーレ展」に行ってきました。

日本では31年ぶりの大規模展だそうです。ずっと行きたいなと思っていたくせに、エゴン・シーレのことを知らなすぎるのでネットで予習することに。

1890年にオーストリアのウィーン近郊で生まれたシーレ。子どもの頃、興味のない学業は全く身が入らなかったけれど美術はずば抜けていて、16歳という若さでウィーンの美術アカデミー(すごい美術学校)に入学したんだそう。亡くなってから評価される画家が多いイメージがあるなかで、彼はかなり若い頃から評価を受けていたんだ…!

その後シーレは、師匠のクリムトはじめ「ウィーン分離派」の作品やゴッホに影響を受け、どんどん吸収し自分の作品に取り入れていったそう。

第一次世界大戦の兵役や、恋愛、現実的な結婚を経て、当時ヨーロッパで流行っていたスペイン風邪によって、妻がおなかの子(妊娠6カ月)とともに亡くなり、そのわずか3日後、シーレもまた罹患して28歳という若さで亡くなってしまう——。

というところまで調べました。なんて悲しい最期なんだろう。。

そんな感じでざっくり予習を済ませ、美術館へ。始まって3日目かそこらだったのでまだ空いていたように思います。

エゴン・シーレの人生の歩みとともに見ていくたくさんの作品。この頃はクリムトの影響を受けているな、この頃にゴッホの作品と出会ったんだろうなと想像できるような絵画もあり、素人の目でも楽しめました。

他にも、同じ時代を生きたウィーン世紀末の画家、クリムトやコロマン・モーザー、オスカー・ココシュカ、リヒャルト・ゲルストルの作品もたくさん見ることができました(クリムト以外知らなかった)。

こちらのサイトで展示されている絵画を少し見ることができます。

シーレは詩も多く残しているそうで、作品の中で大きく展示されているのも印象深かったです。

9章の部屋のみ撮影可でした

至高の感性は宗教と芸術である。
自然は目的である。
しかし、そこには神が存在し。
そして僕は神を強く、
とても強く、最も強く感じる。

エゴン・シーレ、詩「芸術家」1910

シーレが二十歳の頃に書いた詩。どこの国でも昔の若者は大人びている人が多いというか、陶酔しているというか、自分の世界と揺るぎない主張があるなぁなんて思ったりしました。

エゴン・シーレ モルダウ河畔のクルマウ(小さな街Ⅳ)(1914年)
撮影可エリアにて

クルマウはシーレの母親の故郷で、度々訪れては絵を描いていたそう。これ、どこから見ている構図なんでしょうね。おもちゃっぽいメルヘンのような街並みなのに、どこか物悲しい雰囲気が素敵でした!

エゴン・シーレ 荷造り部屋(1917) 撮影可エリアにて

これは第一次世界大戦の兵役中に描いた、軍の関連施設の絵。こうやって絵を描けるっていうことは割と厳しくない軍隊に配属されていたんだろうなと勝手に想像しました。絵が描けたり歌や楽器が上手い人は戦地で人気者だったのかもしれないですね。シーレはどうだったんだろう。

また、シーレの自画像を2作品ほど見ることができます。彼の代表的な作品でもあり、今回の美術展の顔になっている「ほおずきの実のある自画像」は思っていたより小さいサイズでしたが、やはり一際目を引くものがありました。シーレって自信家でナルシストだったんじゃないかな。見てと言わんばかりの自画像は、元気をもらえるパワーを放っている気がしました。いや実際は知らんけど。

第13章「裸体」のドローイングは薄暗い空間に展示されており、やっぱりここは1番の見どころだったように思います。男性も女性も美しかった。独特な線で描く肉体と、緑と赤、グレーなどでほんのり色づいている体が、肌の色じゃないのになまめかしくてドキドキしました。独特なポーズも見ていて飽きないし、裸に靴と靴下というスタイルも、素っ裸よりも色気があるのはなぜなんでしょうね。

今回はそこまで際どいものがなかったけれど、調べるとかなり色々なポーズや露出度高めなドローイングがあって、アートなのかそういう性癖なのか、当時近所に住んでいた人々はシーレの作品の理解に苦しんだだろうと思いました。そりゃ街から追い出されるよね…。

最後のグッズ売り場はなかなか混んでいて、絵葉書が置いてある空間はごった返していました。

なんとか買ったものは3枚。

真っ黒な背景の「菊」は一目見て気に入ったから。クリムトの影響をすごく受けている頃の作品だそう。よく見ると菊の花に金色が施されています。そして「頭を下げてひざまずく女」は紫の靴下とブーツが素敵だったので。どんな会話を繰り広げながらこの絵を描いたのかなあと色々なドラマを想像したくなります。「背中向きの女性のトルソ」は1番気に入った作品。少し見える緑のトップスも、お尻の柔らかさも曲線も色の付け方も足首のキュッとしたところも全部好きです。

本当は「ストライプのドレスで座っているエーディト・シーレ」も欲しかったけど、いつも3枚と決めているので諦めました。

28歳でこの世を去ったエゴン・シーレ。短い人生でこれほどまでの濃ゆい作品を残せたのは激動の時代が背景にあるかもしれないけど、やっぱり彼が天才だったからなんだろうな。年齢を重ねた時の作品も見てみたかった。

1章から14章まで120点以上あるのにあっという間でした。行ってよかったです!

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