古文書_jpg

半壊の習字教室

超絶お久しぶりです。二宮なゆみです。

この前なんかのパスワード探してた時に、ブログのストックが出てきたから、せっかくなので載せておきます。日付は3年前でした。

そろそろnoteでちゃんと書いていきたいなぁ。




中居くんの番組、『ミになる図書館』の美文字選手権見た事ありますか?

字のキレイな男の人って結構好きだったりします。手がキレイで字がキレイだったらなお好きです。こっそりドキドキすらします。

で、その美文字選手権のコーナーを見てて、ふと、私はとんでもねぇ習字教室に通っていたという事を思い出したのです。

小学2年生ぐらいから5年生まで、弟と一緒に通っていた習字教室。
昭和あたまに建てられたっぽい平屋で、事もあろうに半壊してました。まず、ここが普通と違うよね!
地元の数ある習字教室の中で、なぜ母はここを選んだのでしょうか。近いから? 半壊の建物確認したよね?

私たちが習字を書くメインの部屋の隣は、侍とか忍者が戦った後みたいに畳がぐっちゃぐちゃに剥がれており、頼りの灯りは裸電球ただ一つ。電球が爆発するから墨は絶対に塗らない事! と言われていたのにも関わらず、どこかのバカが墨で×マークを付けたため、部屋は常に薄暗く、しかも日が当たらないため、じめっとしていたのを覚えています。ここを通らないとトイレに行けないので慣れましたが。

ちなみにトイレはお約束のボットン便所。なぜか回収できないところに、ずーーーっとウ●コがありました。なんか、深い溝ってゆうか桶の中間地点にでっぱりがあって、そこに風化することなくずーーっと乗っかってた。習字教室辞める日まであった。残念な事に用を足すたびに見る羽目になるんです。最低でしょ! あのう●こは先生の仕業だって専らのウワサでした。言い出しっぺの子のだったりしてね!

メインの部屋だってそりゃもう酷いもんでしたよ。汚い、木材がなんか腐ってるのは朝飯前。ある日のこと、高学年の女の子が正座して習字書いてたら、いきなり『イタッ!』と大声をだすものですから、みんなの視線は一斉に彼女に向けられました。

『ハ、ハチだ!!』

そう、足を思いっきり刺されてたのです。女の子の足はみるみるパンパンに腫れ上がり、大事をとって早退! 部屋の中にいて普通刺されますか? まさにサバイバル習字!


習字を書き終え、筆を洗いに行くのも一苦労でした。平屋の玄関奥にある洗い場の後ろは、廃材やいらない家具、その他沢山の粗大ゴミがバリケードのように山積みになっており、野良猫の住処となっていました。
夏はまだしも冬なんて寒い、暗い、冷たい、怖いの四点盛りでした。後ろを振り返らず、人差し指と親指の第一関節でササッと洗うのがコツ。

とまぁ、半壊の部屋をグチャッと紹介した訳ですが…おかしいのは部屋だけじゃないんですよ。肝心なのは先生です。

まず、くっそ怖い。頭のテッペンがつんつるてんで、サイドはぎっしりとソバージュヘアーが生い茂っており、なかなかの巨漢。超がつく程の中国フリーク。

いつも10分ぐらい遅刻してやってくるのですが、来たら一切話せません。話したらすんげぇ大きな声で怒られます。
半壊の平屋は車で通れない位細い路地を歩いてこなければならないので、チラチラ外を見ながら、先生が歩いてこないのを確認し、ほんのひと時馬鹿騒ぎしてたのですが、一度だけ先生の気配に気付かなかった事があり、玄関で仁王立ちしている先生を見て一同顔面蒼白! 1番はしゃいでた双子の弟だけが、正座してる足を蹴られ、体罰の生贄となったのを目の当たりにしました。

与えられた課題を終えると帰る事ができます。

生徒「先生ありがとうございました!さようなら」
先生「はい、さようなら」

これ普通だよね? 普通はこういう挨拶だよね?

私の教室は違いました。違ってないけど、違いました。

生徒「ぐっぱいしゅーあげいん」
先生「はい、さいちぇん」

生徒は英語の挨拶、先生は中国語の挨拶、というのがなぜか決まってたのです。これは入って早々に教え込まれます。何語かも分かってませんでした。『ぐっぱいしゅーあげいん』も中国語だと思ってました。少し成長して、

『Good-by see you again』
『再現(ツァイツェン』


である事を知りました。

とにかく厳格で中国好きの先生だったわけですが、ペンと習字で良い作品と認められると、先生から“さくら賞”たるハンコを押して貰い、それを五枚集めると、先生がアメリカかどっかで調達したグッズの中から一つもらう事が出来るなんてゆう、子どもの闘争心を剥き出しにするようなご褒美を用意してくれてました。

私が狙ってたやつはこれ ↑

あの握るとコポコポ色水が上にあがってく置物ほっしぃ!! めっちゃくちゃほっしぃ!!

今思えばこんなものなんで欲しかったのだろうと悲しくなったりもしますが、とにかく欲しくて必死だったんですよ…あそこまでの物欲って大人になると不思議に感じるもんですね。これ、ラブメーターって言うらしいよ。そんな名前だとも知らずに…。

しかしさくら賞を五枚、先にゲットしたのは弟でした。私の欲しい置物を頼んだけど早速却下され、ビニールのしょうもないフリスビーを迷わずゲット!! 調子に乗って外で飛ばしたら、半壊の教室の屋根に引っかかって取れなくなりました。所持時間およそ15分。あまりに呆気ない最期。

そうこうしてるうちに私も五枚溜まってね。いただきましたよラブメーター!えぇ。そりゃもう数日で飽きましたよ。(なんとなく捨てられずにまだ実家にあるけど)

そして夏休みは市内のコンクール。
バカでっかい半紙にバカでっかい筆で、自分が選んだ四文字を書き殴ると言うのが恒例。私が選んだ文字は『青山白雲』、“せいざんはくうん”って言うんかな? 過去の生徒の作品からパクりました。
家で何十枚も書いて、一週間に数回、先生の自宅へ持って合格ラインのものを選んでもらい、ボツは持ち帰るというシステムなんですが、これがなかなか一苦労。

初めて先生に作品を見せて、早々に言った言葉。
「『青山白雲』か…中国語では、『チーシャンパーウン』だな!」

私が初めて習った中国語、そして、日常ではまず使わないであろう中国語でありました。

しかし、馬鹿でかい文字を毎日何十枚も書くのも一苦労でしたから、最後の提出日に、がんばって書いたやつと、家にたまっていたボツのチーシャンパーウンを試しに沢山持って行ったら、ボツのチーシャンパーウンが最終候補に選ばれてしまい、出したほとんどの人が賞をもらえるコンクールで、なんちゃらかんちゃら賞を受賞しました。本来ボツになった作品で得たよく分からん賞。特に嬉しくありませんでした。

コンクールの芸術部門(崩した漢字。象形文字っぽいやつ)に至っては、なかなかうまく書けない私を不憫に思ったのか、母が私の手を握ったまま一緒に筆を走らせ、そのまま先生に持って行ったら大絶賛で、金賞をもらいました。ほぼ母が取った金賞でした。

私って自分一人じゃ大した事ないんだなって悟った小学校4年生の夏……。

まぁ悟った話は置いといて、自分にもし子どもが出来たりしたら、こんな破壊力のあるところで習い事をさせてあげたいなと思います。身に付かなくてもいい。怖い先生、汚い教室、謎のコンクール、よく分からない中国語の強要。今思えば大した褒美でもないさくら賞……バカみたいな思い出を増やしてあげたい!

どうかなくならないで!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?