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母のこと「ハレの日ごはん」

いつものメンバーでのごはん会で、友人が先月亡くなった母の好物の稲荷寿司を作ってくれた。


事前に作る料理やお酒の打ち合わせをするグループチャットに友人が

「母ちゃんの好きだったもの教えて。お経読む代わりに、作りたい。そしてみんなで食べよう」

とメッセージくれた。
涙が溢れた。

そして、母ちゃんの好きだったもので真っ先に思いついたのは稲荷寿司だった。


私と同じように、ナマモノがあまり好きじゃなくて、肉の脂身や辛いものが苦手で、豚骨ラーメンのスープですらお腹を壊してしまっていた母ちゃんは、甘塩っぱい米が好きだった。


鰻丼とか牛丼の上の部分は要らない人だった。私も一緒だ。下の汁だくごはんが最高だよねと、ネタみたいに言っていた。


稲荷寿司はそういう甘塩っぱいごはん好きにはたまらないごはんだ。鎌倉に行くとはんなり稲荷をおみやげに買って帰っていたのだが、食の細かった母ちゃんも、こればかりはよく食べた。


だから友人には稲荷寿司をリクエストした。
涙であんまりよく見えなかったスマホ画面に、震える指で慎重に文字を打ち込んだ。


そうしたらなんと、友人は稲荷寿司が食べられるようになったのは最近で、作ったことがないとのこと。料理上手な彼女にしては珍しい。

それでも初挑戦してくれると言う。
油揚げを煮るところからやってくれると言う。

油揚げからやるの、すんごく面倒なのを知ってるから、申し訳なく思いつつも、なんだか嬉しくてまた涙が溢れてしまった。

そして、ごはん会当日。
稲荷寿司を作る友人の姿を見て、どうにも涙が止まらなかった。

母ちゃんにごはんを作ってくれるのが嬉しかった。

最後の1ヶ月間、嚥下する力が無くなってしまったので、栄養剤と点滴と時々輸血で生きていた母ちゃん。

母ちゃんの最後のごはんは何だったっけ?

何にも食べさせてあげられなくてごめん。
ひとりぼっちで逝かせてごめん。
病院じゃなくて、がんばって家で看取ればよかったかなあ。

いろんな思いがいっぱいいっぱい溢れた。

友人たちといつものようにワイワイごはんを作りながら、感情がたくさん溢れては消えてった。

友人が作ってくれた、初挑戦とは思えない稲荷寿司を見て欲しい。





まさにハレの日のごはんだった。
みんなで献杯して食べた。
問答無用に美味しかった。


この日は稲荷寿司の他に、花椒の効いた麻婆豆腐と餃子とエビ餃子と締めに流し(回し?)素麺だった。

苦手な食材が多い私が、毎回美味しかった!!!と言える場は、なかなかない。

料理上手な友人と、場のエネルギーをリーディングしてくれる友人がいるから成り立つ場だ。
いつもありがとう。


そして母ちゃんにお供えしてね!とおみやげももらった。




母ちゃんにお供えしてから、父ちゃんがペロリと平らげた。食欲ないって言ってたのにね(笑)


友人が作るごはんには、美味しい以外にも、食べた人を元気にする何かが詰まってるんだろうな。


今回は、父母共々ごちそうさまでした。
美味しかったよ。
長生きして、私の今際の際にチャーハン作ってね。

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