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デッド・ウーマン・ウォーキング

(※多少、性的に強い言葉を使用しております。ご注意ください。)

『幽☆遊☆白書』(というか冨樫義博作品)はそのジェンダー観がアタマ一個抜けているみたいなことをよく言われている気がするんだけどどうかしら。例えば主人公の浦飯幽助の師匠、玄海が女性(老婆だが霊力を高めると気力体力が最高潮だったとき、若い女性の姿になる。その際に所謂ルッキズム的な、“婆さんも美人だったんだな”みたいなギャグは無いよね。死々若丸がちょっと近いことを言うけど、あれは負け捨て台詞みたいなものなのでギリギリノーカンとします。あくまで個人の感覚ですが。彼はちょっとナルシストな女形キャラだし・・・あまいかな?!)だったり、『HUNTER×HUNTER』も、初期の話になっちゃうけどゴンとキルアを鍛えるのはビスケ(筋肉隆々の57歳で男性への欲望も隠していない、ただし本人はその筋肉姿を気に入っていないようですが、それもビスケの美意識なんだからさ、ノーカンです、個人の感想)これまた女性ですよね。多分冨樫本人が“強い女性”が元々好きなんじゃないかってだけな気もするんだけど、雪村蛍子を気に入っていない、主人公に充てがう目的のヒロインを作れと編集に言われて仕方なく描いていたという話も幽白ファンの中では割と常識だよね。ぼたんじゃ駄目だったのかよ。(ぼたんって、最初は浦飯より立場って上だし、喋り方もばばくさいんだよね。蛍子と玄海を一緒にしたようなキャラクターな気がしますね、そういえば。)そんでも彼女もギリギリか弱いヒロインに留まらずに喧嘩強かったり後半で浦飯を突き放したりするので、私は誠意を感じるんだけどもね。

そんな中でも私は軀ってキャラクターがめっちゃ好きっていうか、好きっていうかなんかもっとこう…みたいな気持ちがあって、ねえちょっと語っていいかしら…。

軀について

もっと描きたかった、と冨樫サン言ってたけどわたぢももう1エピソードくらい読みたかった。なんで、ちょっと二次創作とか読んでみるんだけど、所謂サバサバしたおねえさんキャラでほのぼのとか読むとなんかちょっと解釈違いだなって思ったりしてめんどくさい軀ファンを自覚、そっ閉じしてしまう。あと飛影とデキてます、も解釈違いですね。一応“飛影が付き合うとしたら“みたいな発想から生まれた、みたいな逸話もあるみたいだけどソースはどこですか、知ってたら教えて…。
知ってる方には不要な説明だけど一応ね。軀の身体的な特徴としてはショートカットで美形(多分)そして右半身が焼け爛れており目玉も剥き出し。手や脚の一部は欠損していて、なんなら義眼かもしれないですね。そんでもって、本人は“俺の誇り“なんだそうで、治すつもりはない。このルックになったのは、見た目が美しかったため…なのか?よく分かりませんが、生まれてから“すぐ“腹を改造されたと言ってます、つまり性奴隷とするために内臓と性器を改造されたってことですね、ってなんか妖怪って身体の構造及び生殖活動ってどうなってんでしょうね。黄泉の息子、修羅は本人のコピーっぽいし、雷禅は人間の女の交配した&飛影の母親の氷女も男性体と交配したため呪われた双子の子供を産んだんであって、基本母体のコピーって言われてますもんね。まあ漫画だしあんま細かく考えるのも野暮ってもんですけど、こういう緩い設定であればあるほど二次創作も滾るってもんよ。…長くなっちゃった。まあとにかく軀は“女性“の妖怪で、奴隷商人(もしかして妖怪ではない可能性があったりすんのかしら?!仙水の件もあるしありうるよな?!でも何千年も生きてるんだっけ??じゃ違うかな)の痴皇(すごいネーミング)に弄ばれる日常から逃れるために、自ら酸を被って見た目を醜くして自分を捨てさせた、つまり逃げた。という過去があります。自分で自分を産み直したその証、勲章として、彼女は右半身を治さないって言ってるんですね。まあ飛影もビビってたもんね、顔見て。私が彼女と出会ったのは小学生でリアルタイムで連載を読んでいて、初めその“腹を改造“の意味がしっかりは分かってなかった気がするんだけど、当時その全貌つか全裸を見た小学生たちも混乱して、あれは“女だ“って意味のババーン!!!なのか、半分灼けた人体だぞババーン!!!なのか意見が分かれてました。なんでって、軀の一人称が“俺“だったからってのが大きかったんじゃないのかな。胸もそんな、わかりやすく例えば大きく?描かれてないしね。私は“女の妖怪だ“って理解していました。次に出てくる時は結構女っぽく描いてありましたし。しかしまず痺れたのはですね、スカウトして魔界に呼び寄せたあの!飛影を試す真似をした上に、てめえ何者なんだって凄む彼に対して「お前の親父だなんていうオチはねえ」という台詞ですね。ここで読者も飛影も突き放されちゃうの。かっこいい!!!その上、直属の軍を77人率いていて、「数に深い意味はない。その数字が好きなんだ。」…このテキトーな感じが更に余裕を伺わせます。かっこいい〜〜〜!!!

飛影について

飛影の過去がこの軀の登場によってベロベロベロ〜と明かされるところがまた見事だなと思うのですが。飛影には雪菜という双子の妹がいて、飛影は彼女を探して人間界にやって来ていたんだけど、それは所謂妹想いで…的な動機ではなく、彼は忌子(女系で保っている氷河の国では男児が生まれると国に災いをもたらす、という伝承があって間引きされてしまう決まりがあるんですね、)で、氷女という種族は他種属と交配すると必ず男児、産むと死んでしまうらしく、飛影の母親、氷菜はよっぽどその男性体の妖怪が好きだったのか、氷河の国が嫌だったのかわかりませんが、パンチの効いた母ですね。さすが飛影と雪菜の母、といったところでそのパンチの効いた母と懇意だったという氷女、泪の手によって飛影は氷河の国からポーイされてしまいます。パンチの効いた母のダチも同じようにパンチが効いており、「生きて帰ってきて、その際には私を最初に殺せ」と飛影に囁きます。“生まれてからすぐ目も耳も聞こえて“おり“ババアどもを焼き殺す力くらいはあった“ほど妖力が高かった飛影は無事に盗賊に拾われて生き延びます。そんで、邪眼という所謂千里眼能力を装備するために過酷な手術に耐えて(後付けなので引き換えに妖力をめっちゃ落としてしまうんだな)氷河の国を見つけ出す。しかしながら氷河の国はなんだか陰気なショボい国で、「生まれてからすぐ生きる目的が出来たことが嬉しかった。氷河の女を皆殺しにしてやる。」と気合い一発で生きてきたっつーのになんだか故郷を滅ぼすっつのもムキになってるみたいでダセエな、ということで、雪菜探し、あとついでに母親の形見で大事にしていた特別な氷泪石、これは自分に隙があって失くしてしまったものだから座りが悪いので見つけたかったんでしょう、これを“生きる目的“としてすげ替えて今日まで生きてきましたよ、ということだったんですね。
このように出生がふわふわしていて(だからこそ?)生真面目な飛影は、“生きる目的“がないと“生きる“ことが出来無い。それが無いなら(手に入れてしまったら)もう潔く死んでしまいたい。という気持ちをずっと抱えている、なんともブルースな妖怪だったということが分かるのです。無理!!!好きになっちゃうそんな人!!!(妖怪)…と、1億2000万人の飛影ファンはクラクラしたはずだと思うのですが、例に漏れず私もクラクラしちゃって、今でも飛影は私のジャンプ男子のファースト・インパクトとして強く記憶に刻まれているのでした。


軀と飛影

さてそんな気合い一発、生真面目で神経質な飛影を軀は気に入って、「生きろ、飛影。お前はまだ死に方を求めるほど強く無い」という、喧嘩の強さにちゃんとこだわりを持っている飛影をくすぐるような台詞も吐けちゃうンだなあこれ、カッコいい〜〜〜〜!!!!(3回目)てんで、意気揚々と飛影を家臣にしてしまいます。その際に、彼女は自分の過去、つまりその、性奴隷だった記憶を飛影に見せます(なんという清々しいお方でしょう…)。飛影がそれをどう思ったかってのはそれこそ想像の翼をぶんぶんに羽ばたかせ甲斐があるってなもんですが、消し難い傷を負っているのは自分と一緒だなあ、くらいには同調したんじゃないかしらと思いますね。それに、兎に角、軀ってクソ強いんですよね。(三竦み、呼ばれているのですが、有象無象の魔界の均衡は、黄泉、雷禅、そして軀というクソ強なカリスマ妖怪三匹で保たれているので。)そこも大いなるポイントで、“女“という意味で自分との区別を、飛影は恐らくつけていません。軀は年に一度ひどく落ち込む時があって(生理みたいなイメージもあるのかもしれない)その時はものすごく凶暴になってしまうので、誰も近づけないのだと同僚に言われた時も、なんやおもろそうやな、マックス強い軀と喧嘩してみてえな、という気持ちと、過去を知っているので何かピンくるものがあったのかもしれないですが、で、彼女をわざと刺激するようなことを言います。「お前が強くなったのは呪いのせいじゃない。迷いのせいだ。」と、その過去の記憶の中で痴皇と素朴な親子のように優しい時間があった(これもかなり危うい表現だと思うんですけど、本当に娘だったのかもしれないんだよね。“さすが、俺の娘だ“って言われたってシーンもあるくらいだからさ)こと、正当に憎んでいいはずの相手を憎めない、それを振り切るために強くなっただけだ、って指摘するんですな。それで「あわれなヤローだ。」って表現するんです。ここで「あわれな女だ。」って言わないところがね!飛影!!!かっこいい!!!そしてちゃんと逆鱗に触れてあげて吹っ飛ばされて、その上、「これだけの力を発揮できれば魔界統一トーナメントなんて楽に優勝できただろうに」とまで評価するんですよ。すごくない?!好きになちゃうよ〜〜〜!!!(1億2000万人の飛影ファン)…で、痴皇を訪ねた飛影は「とびきりの女を紹介してやるぜ。」って、アンタちゃんと痴皇にまで合わせんの?!好きになっちゃうよ〜〜〜!!!(3回目)で、マジモノのサンドバックを軀にプレゼントしてあげるんだね。好きなだけボコボコにして、気が済んだら殺したらいい、お誕生日おめでとう、これが本当のお誕生日だよって、生まれたことを純粋に祝福するんです。彼女は自分で酸を被る、つまり自分を貶めることで“肥溜の中で産声を上げた“と言ってるので、呪いから生まれたってことも、ここでサラッと回収されてるんだな。見事でございます。その時の晴れやかな軀 の表情は、天晴、飛影!ようやった!という感じが、私には致しますね。だから、あんまり恋愛感情を交換してるって感じがしないんですけど。どうですかね。(まあ恋愛関係て豊かなもんだと思えば含まれてもいいけどさ??)


対等の関係とは何か

“対等の関係“って、口にするのは簡単ですけど、とても難しいと思うんですね。他人と常に対等でいることって、ほとんど不可能なんじゃないかな、と思います。けれど、コミュニケーションをとっていく中で、その“対等“であろうと弛まぬ努力すること、その中で一瞬訪れる対等な瞬間を、なるべく長い時間持たせるようにすることを、双方というか、全員が双方という関係になるときに、しなければいけないので、超意識していかないといけないんじゃないか?!…って考えると、途方もないよね。疲れるね。でも、軀と飛影みたいな関係って、やっぱなんかいいじゃないですか。私は憧れますよ。だから、軀や飛影みたいに強くなりたいな〜、ちょっとでもいいから、って思います。そういう人を見つけたいし、見つかりたいし。彼女も彼も妖怪で(本末転倒ぽい)、喧嘩が強いっていう設定にはなってますけど、別に普通の人間の、何かの力に置き換えたっていいじゃないですか?皿洗いちゃんとする、とか、遅刻しない、とかでもいいしさ(?)ほんとか?ワカル??また飛躍したこと言ってるかな…すいません…。

もう一度、軀のこと

私は個人的には、やっぱり男性のキャラクターが好きだし、こんな風になりたいな、って服装とか髪型を真似したりするのってほっとんど男性の表装してる。音楽の人もミシェル・ンデゲオチェロやP.Jハーヴェイ、エイミー・マン(三竦み)のことをすこぶる尊敬しているけど、やっぱりデヴィッド・ボウイやボビー・ギレスビー、カート・コバーンとかにセルフイメージを寄せてしまってるところが、たまにものすごく悲しくなったり、自信が持てなくなったりしてしまって、まあでもそれは一瞬ね!そのくらいにはなれたかなって思ってるんですけど(何言ってんだろね)。『幽☆遊☆白書』という作品は、ハートの真ん中にずっぱまってて深い影響を受けてる人って沢山いるよね。私もその中の一人だけど、そんな作品の中で、1番好きなキャラクターは誰ですか、って聞かれたら、女性のキャラクターである軀が1番好きって言えることがとても嬉しい。しかも、どうやら作品中で1番喧嘩強いのも、こっそりとだけど軀だよね。作品の時間軸で最新なのが最初の魔界統一トーナメントで、そこで「ラクに優勝できた」って強さに超敏感な飛影が言うんだから、1番強いんじゃん。軀。ワッハッハ。あ、もし、性奴隷だったって忌々しい過去がなかったら、1番強い妖怪ではなかったかもしれない、みたいな話じゃないですよ。スティグマ礼讃みたいな、そういう発想はクソだからね。そこは声を大にして言いたい。軀の素敵なところは、自力を信じてるところ。そして、孤独を開示して、他と分かち合える、他人の尊厳を引っ張り上げるっつーか、引き出したところ。超超かっこいいよね。やっぱ大好きだな〜、軀。

追伸:俺、っていう一人称なのも、男っぽいっていうよりも、Theyの使用に近いんじゃないか、っていうご意見を賜って、うわあほんとだそれ、そうかもしんねえ!と思って、ますます彼女のことを好きになっちゃった!すぽんじーのさん、ありがとうございました!!!

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