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【絵本レビュー】大きな卵を見つけたら何を作ろう『ぐりとぐら』

森で見つけた大きな卵。料理好きの2人なら、わくわくが止まらないはず。さぁ、いったい何を作ろうか。

目玉焼きVS卵焼き の構図も面白いし、なんなら目玉焼きにしぼって、しょう油で食べるかソースで食べるか論争でも面白い。シンプルにゆで卵にして、2人で真っ二つにして食べる絵も見ごたえあります。

しかし、2人が選んだのは「カステラ」。読者の誰も予想していない斜め上の選択。言われてみれば、これ以上ない選択。これからカステラ作るなんて楽しくてしょうがない。

このカステラという選択が、僕が思う『ぐりとぐら』のお話の最大の魅力です。カステラのにおいに誘われて、たくさんの動物達もやってきます。その動物達に分け合って食べることも、カステラでないとできません。
集まってきた動物たちもいろんな種類がいます。よれよれなライオンやオオカミ、カエルやヘビもいます。卵焼きや目玉焼きだと、きっと食べているイメージがわきません。カステラならどの動物でも食べることができるのではないでしょうか。作者の中川さんは宮崎駿さんとの対談のなかで、カステラを上等なお菓子、贅沢なものとして登場させたと語っています。

声に出して読むと、心地よさに気づきます。子どもたちは読み聞かせをしてもらうことから、そのリズムにひたることができますが、字が読めるようになってからも、自分で読むことの楽しさを感じることができます。二人の歌っもそうですが、一つ一つの会話にリズムがあり、それは漫才の掛け合いになっているようです。このリズムのある言葉選びは、トトロの「さんぽ」の作詞にも通ずるとこありますね。そして、不思議に思ったのは、この掛け合いは自然と、ぐりとぐらがどっちが言っているのかわかること。「ぐりが言いました」「ぐらが言いました」と書かれていないところも、ぐりとぐらの行動や性格から想像できます。絵本という短い文章量のなかで、ここまで印象づけられるのもぐりとぐらのキャラクターの魅力を証明しています。

このあとのシリーズでも言えますが、二人の具体的な行動過程を示して書かれており、読者はぐりとぐらと一緒に料理をしているかのように楽しむことができます。なんだか自分もカステラを作れるようになったのでは、思えるほどに。

何度も何度も読むことになるであろうぐりとぐら。早めに友達になっているといいかもしれません。

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