見出し画像

日記 2024.5.30(木) 成長を確かめ合う、褒め合う旅。

今日はお父さんとお母さんとわたしの3人で日帰り旅行へ行く。楽しみで少し早めに起き上がったら出発前に眠たくなってしまったのだけれど、お父さんの淹れてくれるコーヒーのおかげでしゃきっとした。

近ごろお父さんの動きがすごくいい雰囲気。お昼ご飯を食べてみたかったところが今日は定休日だったので、それならばとタッパーにのり弁を作って持って行くことにしたのでお母さんとわたしそちらの準備をしていたら、その間にお父さんは畑をパトロールしておいてくれたり、クーラーボックスを出してきてくれたり、今日の目的地のルートもしっかりと調べておいてくれたりする。畑を見てくれてありがとう、コーヒーを淹れてくれてありがとう、ひとつずつ伝えていく。少々融通の効かないところがあったはずのお父さんがなんだかほぐれてきているのをはっきり感じる。きっとお母さんも感じていると思った。

お母さんも今朝はいつもよりも早めに準備を整えることができた。お弁当を詰めるわたしの隣でみんなのタンブラーにお茶を入れてくれたり、昨日の夕方もらったたけのこの下茹での準備も、ある程度までやったら出発時間が迫ってきたのでやめる判断ができた。今日は朝からチームプレーっぷりがすごい。なんだかすごい旅になる気がするぞ。

9時出発と思っていたお母さんとわたしは先に車を出して乗っておく。お父さんは9時半出発だと思っていたらしいのだけれど特に指摘したりせずに、そろそろ出かける?準備ができたから先に車に乗っておくねと言っておいた。いつもの難関、出発時の揉めごとも今回はなしだった。しっかりと計画していても認識のズレや急な予定変更などどうしても起こる、ということをわたしたちはしっかりひとりひとりが理解し始めたのかもしれない。
カバーし合っていこう。

実家から1時間くらいの島へ。久しぶりにフェリーに乗ってみる。片道3分程度、3人で270円。運転席に乗っていたお母さんは車が止まっているのに動いている感覚がしてこわいというのでフェリーの中でお父さんと運転を変わってもらったりしてかわいい。
島に到着してすぐに後ろを振り返る。いつも見ている景色のその反対側にいるのはなんだか不思議な気持ちになる。楽しみな旅のはじまり。

最初の目的地は海水浴場へ。小さな頃に連れてきたとお父さんが言うもののわたしは全く記憶がない。お母さんと二人で砂浜を少し散策してみる。お父さんは杖を忘れたので車の近くで待っているという。お父さんは景色とかそういうものよりもかわいいものとか美味しいものの方が好きなのだ。
向こうに見える島や船、波の音が気持ちがいい。小さなカニが忙しそうに動いている。砂浜にたくさんの穴があいている。久しぶりの海、すべてが新鮮だ。

お父さんの行ってみたかった場所は民家のあたりにあるハリボテ風の大きなオブジェのある場所だった。わたしはまったく興味を示さなかったけれど、お母さんは一緒に喜んでいる。二人で携帯を取り出し写真を撮る姿が面白かった。この二人、夫婦なのだなと久しぶりに感じた。

高台にあるチョコレート屋さんへ行く。道がすごく狭くてびっくりする。もしかしてうちの裏手の山へ行く道よりも狭いかもしれない。お父さんの判断でお母さんの軽乗用車で来て正解だったと思った。チョコレート屋さんでしっかり買い物をして外の景色を眺める。そろそろお昼だ。

海岸沿いはどこでご飯を食べてもいいような景色が続く。大橋の見える場所に車1台停められそうなところがありそちらでお昼を食べることにした。崖っぷちに向かって車のドアを開け放ってご飯を食べる。お母さんはおそろしいと嫌がった。確かに目の前が崖ってなかなかスリリングな場所。景色はいいとはいえ少しこわい。一家心中前のランチみたい、とみんなで笑った。
タッパーに入れて作ってきたのり弁ランチは大正解だった。観光スポットはあるものの小さな島、ご飯を食べられる場所はそんなに多くない。行ったり来たりするよりも、景色のいい場所を見つけてたちどまり、車内でお昼ご飯を食べる方が気持ちいいかもしれない。食後にわたしは崖の下の海へ降りてみる。お母さんが心配そうに上から見守る。石を削ってあって階段のようになっていたので楽々下に降りることができた。あとでもう一度この場所を通ったのだけれど、二人組の人が釣りをしていた。

次の目的地へと前に進みたいお父さんと、パンケーキのお店に行きたいお母さんとで意見が分かれた。さあどうするか。お母さんは弟夫婦が行ったと教えてくれた場所だしどうしても行きたいらしい。お父さんとわたしにお母さんの強い気持ちが伝わった。食後のデザートに食べに行ってみようということにした。素直な気持ちは、必ず人を動かす。

海岸沿いにあるハワイの雰囲気ただようパンケーキ屋さん。お昼ご飯のあとなのでそんなに食べられないというお父さんとわたし。わたしが出すからと飲み物も選んでもらう。パンケーキはひとつをシェアかなと思ったら、お母さんが3種類食べたいとものすごいキラキラした目で訴える。見かねてお父さんがお支払いをするから好きなように頼んでいいということになった。ケチだと思っていたお父さんの太っ腹にびっくりしてしまった。お母さんの願い通り、3種類のパンケーキを頼む。ひとつはテイクアウトにしていただいて2種類のパンケーキを3人で分けっこしながら食べることにした。大きな木の下の木陰のテーブルに座る。雰囲気が良くてハワイの音楽も流れてなんだか本当にハワイにいるような気持ちになってきた。実家から1時間のハワイなんてありがたい。お父さんとお母さんはレモネード、わたしはアイスコーヒーを片手にふわふわパンケーキを分け合う。パンケーキはそんなにたくさんいらないと言っていたお父さんもわたしもちゃっかりしっかり食べた。パンケーキはおいしくってペロリだった。
お父さんとわたしは最小限の旅にしようとするけれど、お母さんはせっかく来たのだからと存分にお金を使って楽しみたいと思うタイプ。色々と考えすぎるわたしたちと違ってお母さんはいつも、素直に旅を楽しむだけなのだ。旅行先ではお母さんの決断と硬い意思が功を奏することがよくある。今回の旅もまたそうだった。やっぱり素直が一番なのだ。少女のように庭の植物を見たり終始可愛くはしゃぐ母を見ながら思った。

お父さんが小さな頃に連れてきてもらっていたという海水浴場へも立ち寄ってみる。もうここに来ることはないと思っていたと言う。写真を撮ってあげればよかったねと言ったら、目に焼きつけたと言っていた。途中、途中でわたしと弟が小さい頃に連れてきてもらったという海水浴場をいくつも通った。お父さんは思い出の場所を通りながらどんな日々を思い出していたのだろう。

一度行ってみたかった量り売りの店へ。急な螺旋階段だったしお父さんは食材店は興味がないと車で待つことになった。お母さんとわたし、空の瓶が入った紙袋を持っておそるおそる階段を登っていく。民家の中にあるゲストハウスに隣接したお店。小さな店内の壁にはびっしりと食材やスパイスが並ぶ。隅から隅まで全部見て、お母さんはお醤油を買いたいと言う。わたしも自分の家の醤油が切れそうだったのでちょっと多めに買って分けてもらうことにした。あとで分かったのだけれど、わたしが選んだ醤油は小豆島のヤマロク醤油さんの『鶴醤』(つるびしお)というお醤油で、木桶で4年も熟成させたものらしい。舐めてみるとまったくカドもなく、まろやかで出汁醤油のような深いコクが感じられた。お母さんは初めての量り売り体験が楽しかった様子で満足そう。お店の方もとってもやさしかった。

さあ、そろそろ帰ろう。今日はおだやかなまま旅を終えられそうだ。お互いを気遣いながら旅することができたのではないかな。ひねくれたりしないで素直に楽しもうとできた。近場の日帰り旅行でも、やっぱり旅は楽しい。

まだ時間が早かったので最後に一件もうひとつ量り売りのお店に行ってみることになった。量り売りのシステムが気になっていた新しいもの好きのお父さんにもやっぱり体験してほしいと思ったのだった。今度は道路沿いにあるお店なのでお父さんも行ける。家に帰ってお父さんに聞いたら、今回の旅でこのお店が一番印象に残ったと言っていた。

駅の北側の古い建物にその店はある。YouTubeか何かで見たのかな。メモ帳に殴り書きのように計算されたお買い物メモが印象に残っていた。最初にわたしだけお店に行ってみる。薄暗い店内を入りこんにちは、と声をかけても誰もいない。ひと通り商品をみて勇気がなくて車に戻ってきてしまった。すかさずお母さんがわたしに声をかける。よし、わたしが一緒に行ってあげる。だんだん小さくなってきたはずのお母さんが急にどっしりと構えて頼もしく見えてきた。お母さんの勢いにお父さんも乗っかる。よし、3人で力を合わせて言ってみよう。
もう一度店内へ。みんなで検証した結果、ここは無人のお店だと言うことが分かった。YouTubeでみた時には男性の方がいらっしゃったのだけれど、いまは無人のよう。そういえばわたしたちが来る前に女性が買い物をして出て行かれるのをみたのだ。
欲しかったトマトにしょうが、キャベツもある。計りにのせて壊れかけの電卓片手に計算しながら商品を買っていく。お母さんは動じないで欲しいものを選んでいって、お父さんが計算、わたしは電卓で足していった。いろいろとみて、計りのそばにあった茶筒の中にお金を入れて店を出る。お店の方は最後まで帰って来られなかったので、本当にこれでいいのか最後まで分からないままだったけれどなんとか買い物を終えた。衝撃的な買い物体験。店内びっしりある商品を自分で計り買っていく買い物の仕方は、なんだか自分が試されているような気がして新しかった。

旅の日の夕飯は静かにシンプルに。お味噌汁と玄米ご飯が安心する。テイクアウトしたスパムパンケーキも分けっこする。お母さんがどうしても買いたいと言ったこのパンケーキが一番美味しかった。旅行でのお母さんはやっぱりすごい頼もしいねとお父さんとわたしでたたえる。お母さんは嬉しそうにしながら連れていってもらってありがとうと素直な言葉がでてくる。お父さんも寄ってみたいところぜんぶ連れていってくれてありがとう。このメンバーで行ったからこんなに楽しい旅になったのだ。褒め合う旅の余韻はいつまでも続いていく。

この記事が参加している募集

#今月の振り返り

13,305件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?