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「訪日観光客のレンタカー事故多発」報道は本当か③

訪日観光客がレンタカーを利用することは旅行業界にとって望ましいのでしょうか。コロナ禍後に旅行客の急回復により加速した宿泊業などの人手不足について、レンタカー利用がひっ迫若しくは、緩和のどちらに寄与しているかを分析します。

まず、訪日観光客のレンタカー利用は極僅かです。コロナ禍前の2019年において全体の3.7%しかレンタカーを利用していません。

出所:国土交通省「FF-Data(訪日外国人流動データ) の概要と利用例」

また、訪日観光客のレンタカー利用割合が高くなるほど、日本の滞在日数が短くなる(相関係数はマイナス0.53)傾向であることが分かります。滞在日数が短くなるということは毎日宿泊施設を移動するような慌ただしい旅行が多くなり、1ヶ所の宿泊施設に連泊する可能性が低くなると推定されます。

出所:観光庁「訪日外国人消費動向調査2019年年間値(確報)」

一方、レンタカーと逆に、鉄道の利用割合が高くなると滞在日数が長くなる傾向が顕著(相関係数は0.85)です。このように、レンタカーと鉄道の利用動向で滞在日数が左右されるのはコスト面から説明可能です。レンタカー料金は日割り計算がほとんどです。従って、移動せずに同じ宿泊施設に長期間滞在し、車を運転しなくてもコストはかかります。一方、鉄道の場合は移動しなければコストはかかりません。こうしたことから、訪日観光客のレンタカー利用割合が高まると滞在期間は短くなり、鉄道の利用割合が高まると滞在期間は長くなる傾向となります。

出所:観光庁「訪日外国人消費動向調査2019年年間値(確報)」

滞在期間の傾向から、連泊の可能性を高めるのは鉄道旅行、連泊の可能性を低くするのはレンタカー旅行であることが分かります。連泊が増えるとチェックイン・アウトなどフロント業務の軽減や清掃作業の軽減など相対的に人手不足緩和に繋がります。このため、多くの宿泊施設にとって連泊する旅行者を優遇する宿泊プランを提供することもあります。

結論として、レンタカー利用者の事故の危険性と宿泊業の人手不足問題の双方に対処するため、観光政策として鉄道旅行へのシフトが求められます。

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