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認知症の最新治療

2025年には高齢者の5人に1人が認知症になるとの推計が厚労省より発表された。
認知症には大きく3つに分類されます。アルツハイマー病、レビー小体型認知症、脳血管性認知症です。発症の割合は、アルツハイマー病が50%、レビー小体型認知症が20%、脳血管性認知症が15%、その他の原因が15%程度と言われています。
それぞれの認知症は、発症のメカニズム・原因が異なり、脳の損傷される部位が異なる為、認知症の症状も異なります(同じような症状が見られる事もあるみたいです。)
一般的に認知症と言われると、記憶障害を想像するかもしれませんが、記憶障害の症状が特徴的なアルツハイマー病以外のレビー小体型認知症や脳血管性認知症では記憶障害の症状が生じない事もあります
さて、認知症は進行性の不可逆性の病気で根本的に治療をする事が出来ないと言われていました。しかし現在、医療の進歩により、アルツハイマー病を根本的に治療できる可能性がある「アデュカヌマブ」という薬が開発されました。
今回はその「アデュカヌマブ」という薬について投稿したいと思います。

アルツハイマー病とは

認知症の原因として1番多いのはアルツハイマー病です(約50%)。認知症と言えばアルツハイマー病といわれるほど現在では一般的に知られている病気です。
アルツハイマー病における脳には特徴的な病理所見が2つあります。1つはアミロイドタンパクというものが脳の神経細胞の外側に蓄積して生じる老人斑。もう一つは神経細胞の骨格の役割を果たすタウタンパクがリン酸化という過程を経て神経細胞の機能が障害されてしまう神経原繊維変化です。
1つめの老人斑は認知症症状を発症する20年ぐらい前から徐々に蓄積していることが分かっています。そして老人斑の蓄積からかなり遅れて神経原繊維変化が起こり、最終的にアルツハイマー病を発症すると考えられています。
アルツハイマー病で特に障害を受ける脳の部位は、海馬です。海馬は記憶に関して最も重要な働きをする部位なので、アルツハイマー病になると記憶障害が特徴的な症状として表れ、さっきまでしていたこと事を忘れたり、聞いた話を忘れてしまい、何度も聞き直したりするような事が生じます。

アミロイドタンパクの生成

アミロイドタンパクは正常な脳内でも産生されていることが分かっています。しかし、人間の脳内でどのような働きをしているかは分かっていません。しかし、その生成過程は詳しく解明されています。
少し難しくなりますが、アミロイドタンパクは、神経細胞の細胞膜にあるアミロイド前駆体タンパク、(APPと呼ばれています)から産生されます。このAPPは3種類の切断酵素(αセクレターゼ、βセクレターゼ、γセクレターゼ)の働きによって分解され、それぞれ異なったタンパクが産生されますが、その過程でアミロイドタンパクが生成されるのです。APPにαセクレターゼが働くとその後γセクレターゼの作用を受けて最終的にはP3というタンパクが産生されます。このP3はアルツハイマー病の発症には関係がありません。
一方、APPにβセクレターゼとγセクレターゼが働くと、アミノ酸が40個のアミロイドベータ40タンパク(Aβ―40)と42個のアミロイドベータ42タンパク(Aβ―42)という2種類のアミロイドタンパクが産生されます。この2つは大きな性質の違いがあります。Aβ―40は水溶性であり水に溶けやすい性質がありますが、Aβ―42は不溶性で、しかも脳内で凝集しやすい性質を持っています。
正常な脳内では、Aβ―40が約90%と多く産生されますが、アルツハイマー病の場合は水に溶けにくいAβ―42が正常な場合と比べてより多く産生されることが分かっています。

アデュカヌマブ

上記のように、アルツハイマー病の原因として、①アミロイドベータタンパクが脳内の神経細胞外に蓄積し老人斑を形成、その後に②リン酸化されたタウタンパクが神経細胞内に蓄積する(神経原繊維変化)ことによって発症するという事が考えられるならば、始めに蓄積するアミロイドタンパクを脳内から除去してしまえば、発症予防にも、根本的な治療にも効果的だと考えられます。
ここで登場したのが「アデュカヌマブ」という薬なのです。
もともとアルツハイマー病になりにくい高齢者には、老人斑に対する抗体が体内に自然に備わっていることが最近発見されました。
アデュカヌマブはアルツハイマー病になりにくい高齢者のアミロイドタンパクに対する抗体をもとにつくられました。
このアデュカヌマブのアメリカでの治験では、アルツハイマー病の方の認知症状が改善されたと報告され、アメリカのFDA(食品医薬品局)に条件ながら承認されました。
これまで根本的な治療法がなかったアルツハイマー病を治してしまう可能性のある、初めての治療薬が登場したのです。
日本でも、厚生労働省で承認審査中です。
このように、医療の進歩により認知症の根本的な治療が一般的に行えるようになる日が来るかもしれません(アデュカヌマブの治療は高額でアメリカでは年間に約600万円かかるという課題もあります)。

長々と読んで頂きありがとうございました。

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