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夜の闇

最近、寝る前には必ずヴィルヘルム・ケンプの演奏するシューベルトのピアノ・ソナタを聴いている。ここ15年に渡り、私にとってのシューベルトのピアノ・ソナタといえば、旧東ドイツ出身のピアニストであるディーター・ツェヒリンがベルリン・クラシックスに残した録音がレファレンスになっていた。そして、20、30代の頃は、ケンプなど過去の遺物に過ぎないと思っていた。今では、よく分からなくない。色々なことが夜の闇のように分からないのだ。そして人々は闇の中へ消えていき、誰かに期待することはやめた。それがしっくり来るようになると、何故だかケンプの演奏に惹かれるようになった。このような感情は名前もつけず宙に放り出した。そして、回る光の渦とともに消えていった。


音楽と音楽の記憶とそのメモ。