私たちの毎日は、どれほどの口コミやレビューに溺れているのだろうか


私たちの毎日は、どれほどの口コミやレビューに溺れているのだろう

気になるあの人とご飯に行く時
自分に合った化粧水を買いたい時
懐に合った額で最適なカットをしてもらいたい時
適した診察を受けたい時

私たちの毎日は、どれほどの口コミやレビューに溺れているのだろうか

最近の私は
コストとリスクを下げたくて
口コミやレビューの最低評価ばかりを見る

高評価のものは見ずに
最低評価を信じてる

高評価の言葉には何か裏があるんじゃないかと
薄汚れた思考によって
低評価を見ることでそのものの価値を見ている

しかし、低評価の言葉を鵜呑みにすること自体
私そのものが薄汚れてきたなと思う


小学生のとき
私の最大の趣味は本を読むことだった

近所の本屋に1人で行ってはたくさんの物語に触れていた
休み時間には学校の図書館に入り浸り、さらざまな物語に触れては、たくさんの妄想を繰り広げていた

そんな私を、両親は最大限に認めてくれて、欲しい本があれば惜しみなく買ってくれた

あの時のことを思い出す

本屋さんや図書館には膨大な本がある

まずは題名を見る
題名に惹かれた本の表紙を見る
表紙が魅力的だった時その本を開き
最初の数行を読む
これ以上先が気になった本は
そこで読む手を止める
そして、私はその本を購入する

それは
ポップで無駄に売り文句が書かれたものではなく
何かの賞を受賞したものでもなく
有名な著者の本でもない
そもそもそれが誰の書いた本なんてどうでも良かった

題名と表紙が魅力的で最初の数行が面白い本は、必ずしもこの作家の本、だなんて私は言えなかった

幼い頃からたくさんの本に触れていたのに好きな作家をパッと言えないのはそういった経験があるからだと思う

ただ、心の向くままに純粋に
その時の私が面白いと思った本を買っていた

読み進めると
夜ご飯も忘れてしまうほど面白くて仕方がない本もあれば
数ページで魅力が薄れ読む手を止める本もあった

それでも、私が私の意思で購入した本はすべて
愛おしくてたまらなかった
本棚に陳列された本の背表紙をなぞっては
己の愛の整列場所のように感じて、大切に大切にそばにあった

数ページで読む手をとめた本を、時空を超えて読んで面白くてたまらなかった時
やはり自分の選んだものは、自分のそのものなのだと感じた
その時わからなかった魅力が、時間と過ごす環境を経て分かることが何度もあった
ものの魅力は本来そうして成熟し自らに浸透するのだと思う

あの時の私は、
誰かの言葉はどうでもよくて
ただ自分の心の向くままに自分の選択を信じていた

今の私は、誰が書いたかわからないものを過信している
バカみたいだなと思う
それでもそこばかりを気にしている自分は、
時間や環境に追われているのだろうか
効率を目指しているのだろうか

きっと違う
単純に自分がつまらない人間になってしまったんだなと思う

ものが成熟する旨みを見出せなくなり
失敗したくない、無駄なことはしたくない
そんな思考が存在する

そんな自分はとてつとなくつまらないなと思う

あの時の気ままに自由で素朴な私は
もういないのかなと悲しくなる


私の毎日は、どれほどの口コミやレビューに溺れているのだろうか

新たなものに出会う時、
誰かの言葉と共にあるのは
なんて悲しいことだろう

先日、そんな自分がひどく嫌になり
過去の行動を思い起こし
あの時の行動のままに一冊の本を買った
その本は、十数ページで先が気にならず読む手をとめてしまった
そして、そんな買い方をした自分がなんだか非常に嫌になって、部屋の奥底にしまってしまった

この本を再び読むことがあるのだろうか

今の私は色々なことに忙殺されて
掘り起こすことはないのかもしれない

でも、もし
何かとても小さなきっかけでその本を手に取り読み進めて
その時の私に浸透したのなら
私はまた、純粋にものをみれるのかもしれない

私は
生まれ変わるなら何になりたいとか
戻れるならいくつになりたいとか
そういう話題は好きではない

いつでも今を最大限に生きてるし、今より過去の自分が楽しそうな面をして生きるのが許せない

でも、あのときの感覚を失った私は
確実に劣ってしまったと思う

私は、あの時の、柔らかい判断を持つことはできるだろうか

人の意見に左右されることなく
自分自身の判断で
自分に最適なものを見つけるということは
本来とても難しいことだ

それを、幼い頃に体験できていたこと自体、
とてもデカいことなのだと思う

あの時の自分を抱きしめてあげたい

そして、またきっとそこに気づけた時
私はその自分を丁寧に抱きしめたい

今の私にはやはりそれを全うすることはできそうにない
抱える全てのことに、愛を向けたいと思うと
犠牲になるものも出てしまう

それでも今は、そんな自分を否定せずに
その行動も決して間違っていないと
抱きしめてあげたい

私も、あなたも、今を最大限に生きるために
己が選択している行動は
何も悪くない

でも、その行動を過信することで狭めてしまうこともあるから
私は過去の私も大事にしながら
今の私も大切にしたい
そう思います

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