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日本語配列 左右分離型自作キーボード JISplit89を使ってみた

久々のnoteです。

先日このようなツイートをしたところ、ブログ 自作キーボード温泉街の歩き方 を運営している自キ温泉ガイドのサリチル酸さん(@Salicylic_acid3)が見てくださったらしく、そのご縁でなんとサリチル酸さん設計の自作キーボード『JISplit89』と『ErgoArrows』を貸与していただきました。

なんですかそれめちゃめちゃ嬉しいんですけど!

自作キーボードというのは実機にさわれる機会が非常に少なく、ましてやこんなふうにがっつり試用できるのはものすごく貴重な体験です。なのでこの喜びを少しでも皆様と分かち合うべく、使用感などを主に作家目線でレポートしてみたいと思います。ひとまずJISplit89(ジスプリット89)から!

日本語配列の分離型キーボードという救い

『JISplit89』は、89キー、日本語配列の分割型キーボードです。

左右分離型のキーボードは肩こりや猫背の予防に効果的といわれてて、特にプログラマーや作家のような毎日長時間タイプする人間ほどその恩恵は大きくなります。私もキーボードを変えたことで肩こりから解放されていろいろあって人生が変わりました。

またプログラマーと比較して作家の場合は、かな漢字変換の使用頻度が高いです。かなキー・英数キー(変換・無変換キー)やカーソルキーなどUS配列では省かれがちなキーを使ったショートカットを多用するため、日本語配列のキーボードでないと作業効率が大幅に低下してしまいます。
これを慣れでカバーするのはちょっと厳しい。戦いは(物理的なキーの)数だよ、兄貴!

ところが日本語配列の左右分離型というのは非常に希少です。
私が知る限り市販されていたのは台湾MiSTEL社のBAROCCO MD600だけ。この機種はすでに生産終了になっているため、日本語配列の左右分離型キーボードを入手するには自作するのがほぼ唯一の選択肢となります。
しかし頼みの自作キーボード界隈ですら、US配列のキットが(あとは見慣れない変な配列のやつが)圧倒的にメジャーで、日本語配列のものは数えるほどしかありません。

そんな中でJISplit89は日本語配列(JIS配列)を前提に設計された、極めて貴重なキーボードなのです。これを大手のメーカーではなく個人で販売されているというのがすごい。しかも完成度が高い。ありがたい。神。

圧倒的な実用性という唯一無二の個性

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JISplit89の見た目 です。左右分離型であること以外は、ごく標準的な日本語配列。テンキーレスのキーボードをコンパクトにした感じの75%配列のキーボードです。特にノートPCのキーボードに慣れている人は、違和感なく乗り換えられるかと。
完成したその瞬間から学習コストゼロで違和感なく使えるというのは、仕事の道具としてはとても重要で、この特徴はもっと評価されるべき。

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左右をくっつければ一体型のキーボードとしても使えるため、分離型に慣れてない普通人にも優しい作りです。職場などで他人に貸しても迷惑な顔をされずに済みます

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うちに転がってた某テンキーレスキーボードとの比較。キー数はほぼ同じで設置面積をだいぶ小さくできます。

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私が普段愛用している60%キーボード sphh.jp(上)との比較。
実はこの二機種は設計思想が近くて親子のようによく似ています。
最大の違いはキーの数。JISplit89にのみファンクションキー(F1〜F12キー)が用意されています。

日本語入力の際に文字種(ひらがな・カタカナ・全角・半角)を切り替える際、人類はCtrlキー+U・I・O・Pを使う派とF6〜F9キーを使う派に別れますが、後者に慣れている方にとってはJISplit89が最適となります。

逆に sphh.jp の有利な点はコンパクトさで、特に日本語配列のHHKBから乗り換えた方はキー配列も含めてまったく違和感がありません。多少の慣れは必要ですが、こちらもとても良いキーボードです。

自作キーボードの醍醐味

極めてオーソドックスなキー配列のため一見すると地味に思えるJISplit89ですが、キースイッチやキーキャップの選択の自由、キーマップの書き換え、LEDによる発光、Bluetoothによるワイヤレス対応など、自作キーボードならではの楽しみが網羅されており、細かく自分好みに仕上げることができます。めっちゃ光るよ。

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また物理的なキー数が充分多いにもかかわらず、小型キーボードと同じようにレイヤー機能でひとつのキーに複数の機能を持たせることができます。ゲーミングキーボードと同じようなマクロ機能にも対応しているので、使いこめば際限なく生産性が上がるはず。

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さらにスイッチソケット対応なので、組み立て後にキースイッチを交換することも可能。環境や嗜好の変化に合わせて打鍵感を調整することができます。私は軽めのタクタイル系キースイッチが好きということをお伝えして、C³ Dragon Fruitを取りつけてもらいました。打鍵音が柔らかく気持ちよく打てる楽しいスイッチです。あとなんか見た目が可愛い。美味そう。

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細部のこだわり

オーソドックスなデザインのJISplitの中で異彩を放っているのが、親指で操作する四つのキーが逆向きに取りつけられている点。これは一部に人気のあるスタイルで、HHKBなどの市販キーボードでもスペースキーを上下逆に付けている人を見かけます。親指の可動範囲が広くなり、特にAltキーあたりが打ちやすくなるという噂。

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実際に使ってみた感じ、ホームポジションに手を置いたときに、親指の位置が下がるぶん掌が丸くなるので、人間工学的に優れている=おそらく長時間使った際に疲労が少なくなるのではないかという印象。

また手前側のキーに傾斜をつけた結果として、リストレストなしでも打鍵がしやすいと感じました。個人的にいろいろ試した結果、kalibri のようなロープロファイル用のリストレストと組み合わせると更にいい感じ。逆にあまり背の高いリストレストだと、前述の親指の位置が下がるという利点が感じられなくて勿体ないかもです。

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自作キーボードの入門機として

私が組み立てたわけではないので、こういうことを言っていいのかわかりませんが、JISplit89はPCBA(工場組み立て)により8割以上はんだ付け済みの状態で販売されています。そのためキー数が多いわりに、はんだ付けしなければならない部品の数が少なく、そのぶん製作の難易度が低くなっています。頑張れば初心者(=私)でも作れそう!

しかも上述のとおりオーソドックスで実用性の高いキー配列のため、将来的にも飽きが来ない=物置で腐る可能性が低いのではないかと思います。

また設計者であるサリチル酸さんは、初心者にもわかりやすい自作キーボード関連のブログを運営されていて、JISplit89のビルドガイドもとても細やかで丁寧です(しかも日本語で書かれている)。さらにはDiscordで質問にも対応してくださるとのこと。

というわけで自作キーボードの入門機として最適ではないかと考えています。自作キーボードに興味がある方、この記事を読んでJISplit89が気になった方は、ぜひ検討してみてください。

まとめ

JISplit89は良いぞ。
あと日本語配列の自作キーボード、もっと増えてー。


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