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バリ島ウブドを歩く⑰ 【バリ人の流儀】

有名な観光地で買い物をすると、ぼったくられるというのが通説だ。今回のバリ旅行で私も一度だけ、それに近い経験をした。しかし、私は納得の上でお金を払ったのだから憤慨するのは見当違いなのかもしれない。

お店の現金払いのやり取りを、ここででいくつか紹介しよう。

1、値段交渉を理解した出来事。

私はモンキーフォレストへ向かって歩いていた。途中の小さな雑貨屋さんの店頭にトラベルアダプターがワゴンの中にあるの見つけた。私が使っているアダプターはまだ使えるけれどもなんとなく接続が悪かったので 買った方がいいかもしれないと思っていた。

“これいくら”とお店の高齢の女性にきいた。80000ルピア(800円)だと言う。ウブドのスーパーでは3000ルピア(300円)で以下で買えることを知っていたので、じゃ、いらないです。と言って、通り過ぎようとした。立ち去ろうとする私に対して、ちょっとまった60000ルピアにするよ。と言う。私は交渉も面倒だし、買う気も失せていたので首を振ってまた立ち去ろうとした。50000、50000ルピアでどうだ、と彼女は言う。私は、もう全く買う気がなくて再度首を振ると、じゃあしょうがない3000ルピアだ。私は 黙って何も言わずにいると、25000だ、と。
わたしは交渉したつもりはなく、ただいらないと言い、立ち去ろうとし、首を振ったり黙ったりしているうちに、値段はかってに80000ルピアから通常価格の25000ルピアになっていた。

もちろん私は買わなかったが、お店の言い値というものはこんな風に下がっていくものだと知った。私にとってはとてもいい経験になった。彼女にとっては時間を無駄にしただけかもしれないが。

ウブドのお店

2、心地よいやり取り

私が泊まっているゲストハウスは大通りから入った道にある。その道に私の好きな店がある。お面やら木造りの仏像が狭いお店にぎっしり詰まっている。それらはテカテカしたお土産品のようなものではなく、古い価値あるものを収集した博物館のようだった。

博物館のようなお店

わたしはお土産を買うつもりはないし、バリ旅行の記念に何か買う予定は全くなかったが、これらの物を是非写真に撮っておきたいと思った。

いつも店の前の階段に退屈そうに座って店番をしている80歳くらいの女性に、品物の写真を撮ってもいいかと尋ね、いくらかのお金を渡そうとした。しかし、彼女は受け取らなかった。
私は彼女の承諾を受け写真を撮らせてもらった。そして、写真を撮らせてもらったお礼に、何か小さな物でも買おうと決めた。荷物にもならず、その後の処理にも困らないようにカード一枚でも、と。しかし、いざ買うとなると、真剣に見てしまう。買いたいと思うカードは見つからなかった。ふと、大きめのスカーフが目に止まった。これならバリ滞在中に部屋で腰巻きとして使える。涼しげでいい。

さあ、またここで値段交渉が始まる。もともと写真を撮らせてもらったお礼に買おうと思ったのだから、少々値が張っても買えばいいものを。しかし、ついつい私はそのスカーフの正当な値段に向けて交渉を始めた。80000ルピア(800円)だよ、と彼女は言う。この段階では、私はじゃあいらないと言わなければならない。値段は50000ルピアに下がった。ん〜、と首をひねると40000(400円)ルピアになった。交渉成立である。

わたしは、この手のスカーフがバリでどのくらいで売られているのかは知らない。でも、40000ルピアで買えるのなら嬉しいと思った。それに、写真を撮らせてもらったお礼にもなるだろう。私は、売ってくれてありがとうという気持ちでそのスカーフを受け取った。

その大きなスカーフはバリ滞在中、ずいぶん重宝した。部屋にいる時はもちろんすぐそばの店に買い物に行く時にも、それを腰に巻きすそをピンで止めて出かけた。


3、冷静さを失った時の買い物

ウブド滞在の後半では、私の興味は観光地ではなく、 “人” になっていた。市井の人々を描きたいと思った。だから、街に出て写真を撮った。人を間近で撮るのは失礼なので、遠くから目をそらすようにカメラの端っこで撮ったりした。
そうして歩いていると、お土産屋の前で竹ひごでかごを作っている中年の女性が目にとまった。

写真を撮らせて欲しいと幾らかのお金を渡そうとしたが、いらないと言う。絵を描くの?と、察したように私にきく。はい、と。

そこで、また私は何か買い物をしなくてはと思った。この時は、カードにしようと思い、バリのお面や踊りのポーズなどがプリントされている手のひらサイズのカードの束を見せてもらった。本音を言えば買いたいものはなかった。

それでも、無理やり一枚を選んで値段を聞いた。この時は絵に描けそうな写真が撮れたことで興奮していたのかもしれない。値段の交渉などしようとは思わなかった。それに、こんなちっぽけなカード一枚、高い値段のはずがないと思っていた。言われた値段がピンとこなかった。

バリのお金は日本のお金に0を二つ足せばいい。と、わかっていたはず。私は紙切れのような、このカードに75000(750円)を払った。いつもの私なら、それはありえない値段だとすぐに気づいたことだろう。この法外な値段に気がついたは、部屋にもどって財布の中身を確認した時だった。

写真を撮らせてもらったお礼なのだから750円ならいいではないか思える値段である。多分、相手もそのつもりの値段を言ってきたのだと思う。

しかし物を買うとなると、つい私の頭の中は価格と物の価値と割り切って考える癖がついている。それはそれ、これはこれでしょうが。というような感覚になってしまう。これは、私が “せこい” せいなんだろうか。

バリで値段交渉をしたのはこの3回だけ。食堂やコンビニ、入場料などは初めから値段が提示されているので支払いに気を使う必要がない。路上で果物を買う時も量り売りである。観光客相手に多少の上乗せはしているのかもしれないが、それは許容範囲だろう。

路上のお店

4、バリ人は不当だと思うお金は受け取らないのか?

私が2と3の例で驚いたのは、二人とも私が写真を撮らせて欲しいとお金を渡そうとしても受け取らなかったこと。もらえるお金ならいくらでも、という姿勢ではないのだ。

彼女たちは彼女たちなりの商売をして生計を立てている。そういう自負があるんだろうか。そして観光客に対しては、その都度値段を変えることは、彼女たちにとっては正当なビジネスということなんだろうか。

ウブド メインストリート

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