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バリ島ウブドを歩く㉘【ウブド王宮】

ウブド王宮はウブド地域の中心地にあり、私の滞在したゲストハウスからも近かったので何度も足を運んだ。歩いていて、日陰に座りたいとき、または通りがかりに寄ったりもした。

ここは朝市とアートマーケットが向かいにあるため、ウブドを観光する人は最初に訪れる場所である。いつでも観光客がにぎわっている。夜には、ケチャダンスをここで見ることができる。

このウブド王宮でっは、バリらしい彫刻や建物は見られるが、特にここでなければ見られないものはないと思う。

野外スケッチ


一度だけここでスケッチをした。
旅行中のスケッチは午後部屋に戻ってから描いていたが、この日だけ大きめのノートとクレヨンなどを持って出かけた。

一枚目は銀行の前で描いていたが、何人もの人に声をかけられた。いつもなら気にしないで対応するが、思ったように描けなくて少しイライラしていたので声をかけられるとしんどかった。

気を取り直して、このウブド王宮でまた描き始めた。影の方で見られないようにこっそり描いていた。たった一人だけ、私が描いている間ずっと見ている人がいた。褒めることも無く黙って見ている。私は、声をかけられなければ自分の世界にこもって描くことができる。

そこに立って見ていたのは年配のインド人だった。たぶん彼は、観光するには暑すぎるので、日陰で涼みながら暇つぶしに私が絵を描くのを見ていたのだろう。

描き終わった時に、”いいね” とだけ言ってくれたのが、とても嬉しかった。

ちょっとガチャガチャでとりとめのない絵になった。

このページにはあらかじめ切り絵のように色紙をちぎって貼っておいた。初めての試みだったので切り絵の部分をうまく生かすことができない。

よくよく見ると、曲げている腕が反対だったりしているが、これは二つあった像の一つを描いたので、写真は別の片方の彫刻だったのかもしれない。

このウブド王宮のように印象に残らない観光地であっても、そこでスケッチすると、あとでその絵を見返したときに、その場の空気をすぐに思い出すことができる。旅行の感触を生々しく自分に残しておきたいなら、スケッチはいい方法だ。

私は弘前の看護短大を卒業した春に一人で奈良を旅行した。そのとき持って行ったのは12色のぺんてるのクレヨンだったと思う。描いたのはたった一枚、山の辺の道の日本家屋だった。旅行の記録をするために小さなノートを持ち歩き、その見開きに描いた。単純な線だけだったけれども、そのスケッチを見ると、今でもその風景を思い出すことができる。

今回はほとんどの場合、写真をもとに部屋で描いてきたが、やはりその場でスケッチするのもいいのかもしれないと思いなおしたりする。小さな小さな、軽いスケッチブックと、鉛筆だけでも持って歩こうか。スタイルや出来ばえにこだわらず見たものそのまま描く。あわただしく過ぎていく時間を、その時だけ止めてみる。すると、いつもとは違う自分を見つけられるかもしれない。

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