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ささやかな日々。9日目

父方のおばあちゃん家に行ったとき
兄はカンカン(ええとこのお菓子の缶)の中に入ってる小銭をよく数えていた。
大人たちは「計算できて賢いねー」と言っていた。
わたしは見向きもしなかった。

なぜならわたしは母方のおばあちゃん家で
500円玉をジャラジャラ言わせるほうが好きだったからだ。

500円玉のザ・コインって感じの重量感。
計算のわかりやすさ。
すべてが完璧、最高だった。

500円玉がどこにあるのかは知っていた。
勝手に取り出して
「数えていい?」
からのさりげない
「もらっていい?」

その物の価値などわかっておらず、
ただ沢山の500円玉をジャラジャラいわせたいだけだった。

ビニール袋にありったけの500円玉を詰め込む。
「これで家に帰ってもジャラジャラできる!」
胸が高鳴った。

帰宅してカバンを覗くと、
確かに入れたはずの500円玉たちが消えていた。
夢でもみていたのだろうか。

いや、おかあさんがもとの場所に戻したのだ。
楽しみにしていた分、とても悲しかったことを今でも覚えている。

それから数年後、
ハズレた宝くじを貰って
ひとりで『お札をバラ撒くセレブごっこ』をして遊ぶのであった。


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