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ギガロポリス・ウィズ・ミミック

「で、その動く樹の捜索に付き合ってくれってことかい」

話を引継ぐヤガを横目に私は頬に生えた触角の一つを千切って口に放り込む。

古都カングルワングルは内海に匹敵するほどの直径と山脈に影を落す程の高さを誇るが、そんな巨大階層都市でも魔術に汚染された風を完全に遮断することはできず、おかげで私のようなミミックの肌は手入れを怠れば吹き込みに当てられて酷い変身(ミミクリー)を起こしてしまう。

変異部位は生え次第刈り取ることにしているのだが、

「また勝手に結界切りやがったなババア」

「煩いね、毎晩飽きもせず別の種族を連れ込みやがって。たまに換気でもしとかないとお前と相手が飛び散らかすあれやこれやでここはとっくに獣小屋だよ」

といつものやりとりを皮切りに怒鳴りあっていたら客が来てしまった。

「あとやんなら寝床でやれ」

直前のヤガの捨て台詞だが、思うにこの口の聞き方はここの本当の家主である魔女の分霊体(コピー)とは思えない。デスクの上では昨晩の相手であるリカントが寝息を立てている。

「私も同行いたします。維持機構は管轄域以外は不案内ですので、ぜひジャースルさん、あなたのような方の協力が必要なのです」

リーアイと名乗ったこのゴーレムが所属しているのは建設種族不明のこの巨都の設備を修繕することを目的に結成された自治組織だ。

なんでも経年劣化の進む建材の代替品として採用予定だった魔樹が市内ダンジョンに逃げ込んでしまったらしい。

「最近は出不精でね」

私の応答にモノアイが若干曇るが、

「これは内密にしていただきたいのですが」

と操作腕で印を結ぶと、呪文を聞き入れた手前の空間に画面が浮かび上る。

途端、私とヤガは身を乗り出す。

「事件から半刻前のものです」

画像は粗いが立っている人物は間違いない。

ドロス・ヴァーウェイン。

都市史上最大の大魔術師であり……殺したはずの元恋人だった。


【続く】


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