見出し画像

僕がはじめた「smallkitchens」の軌跡③ 〜行商スタイル編〜

第3弾となるsmallkitchensの創業期ストーリー。今回はカーゴバイクを手に入れたことでオペレーションが安定したことによって、やっと向き合うことができるようになったサービスの本質『お客様に対して自分たちが提供している価値はなんなのか』。これがメインテーマとなっています。

(↓前回の第2弾はこちら)

(↓第1弾はこちら 「自己紹介」「このnoteを書くに当たって」が書いてあります)

そんなに甘くない

画像1

(↑初期の頃売れなすぎて、色々施策を試していた頃)

8月上旬から意気揚々と始めたカーゴバイクでの移動販売ですが、始めてすぐにまた壁にぶち当たりました。

「まったく売れない、、、」

初回の販売は30個作って3個。
2回目は2個。
3回目は0個…。

これまで立っていた売上がほぼ0になり、急に先が真っ暗になったような思いでした。

それでも、買っていただいたお客様の1人が、新宿西口のランチ事情やこうした方がいいよという長いDMを送ってくださったことが、落ちていく気持ちを踏みとどまらせる小さな救いでした。

画像2

(↑カーゴバイク初期の頃、instagramで初めていただいたメッセージ)

4月、6〜7月とそれまで販売していた御成門では、事前に販売場所を貸してくださっていた方が看板にチラシを貼るなどしていて集客してくれていました。もっと声かけするようにとアドバイスをいただいたりもしました。

カーゴバイクを手に入れ行商スタイルになったことで、販売場所の地代がなくなりコストを大きくカットでき、販売までのオペレーションも安定してきましたが、その一方で、それまでの販売場所でたくさんの支援を受けていたことに気づきました。本当の意味で、一人で0からスタート、一人で踏ん張らなければという思いを新たにし、試行錯誤する日々が始まりました。

試行錯誤の日々

画像3

(↑お弁当の価値が伝わるようにつけ始めた、作り手からの一言メモ)

まずは「販売場所」
どこがいいのだろうと模索していたところ、キッチンからほど近い新宿御苑前駅周辺エリアにも、ランチ帯には多くの働く方が外に出ていることが分かり、意外といけるのではと、新たな販売場所にすることにしました。キッチンで作ったものを販売場所に運ぶアクセスも格段によくなりました。
他には以下のことをやってきました。

【新規顧客を増やす】
・販売していることが遠くからでも認知されるように、赤いエプロンをつけ、麦わら帽子をかぶり目立つ
・朝の通勤時間帯や販売時間帯にチラシを配る
【お弁当の価値をあげる】
・それまで、本体と蓋が一体型で中身が見えないお弁当箱でしたが、中身がパッと見でもわかるように、蓋が透明のお弁当箱に変更
・量がしっかり入っていることが伝わるように、平たいお弁当箱に変更
・お弁当に何が入っているのか伝わるように、献立メモをつける
・作り手が、どういう想いでお弁当を作っているの伝わるように、作り手からの一言メモをつける
【リピート率を上げる】
・いつどこで販売しているのかを周知してもらえるように、SNSを利用し伝える
・small kitchensのコンセプト《おなかもこころも満たせたら》を理解してもらえるよう、販売場所あるいはSNSで伝える
・さまざまな作り手が想いのこもったお弁当を作り、毎回飽きないよう日替わりのお弁当であることを伝える

画像4

(↑寒くなっても赤エプロンに麦わら帽子でやっていました)

軌道に乗り始めた新宿御苑前駅付近での販売

画像5

(↑キッチンから見える朝日。朝4:00からのお弁当作成が報われる瞬間トップ3に入ります)

新宿御苑駅前付近に販売場所を移したのが、9月下旬。そこからは、毎週火曜と金曜にしっかり販売できる体制づくりに注力しました。継続することによって、お客様にも認知されるんだなという気づきも得ました。

改善が功を奏したのか、10個、15個、20個と売上が伸びていき、嬉しいことに30〜40個ほどは毎回完売するようになっていきました。結果的には売上の9割強がリピーターという状態になり、少しずつ安定して行きました。

smallkitchensが提供していたお弁当の特徴はざっくり以下の点です。

・ヘルシーで量がある
・手作り感を感じられてあったかい
・日替わりで1日1種類
・お弁当の内容的には相場と比較して低め(800円)

健康意識が高めのOLや独身男性の方が購入してくださることが多く、お弁当の質も作り手一人一人がしっかりとメニューを考えて作っていただけることもあり、安定していました。

心が折れそうになることは何度もありましたし、キャッシュフローが回らなくなるギリギリになることも何度もありました。そうした中でもなんとか続けてこれたのは、事業をサポートしていただいている方はもちろんですが、やはりサービスを使ってくださる作り手とお客様がいたからです。

実際にお弁当を食べて「前回のお弁当も美味しかった!」と伝えてくれたり、何でもない一言二言の会話、こうしたらいいよとアドバイスしてくださったり(中には紙いっぱいに書いてきてくださった方も、、感謝しかありません、、)、顔なじみのお客様が増えていく喜びなど、これらが最高のモチベーション維持につながっていました。

画像6

(↑販売している時、前に購入していただいたお客様が書いてくれたアドバイスをまとめてくれた紙。ひとえに作り手が頑張ってくれたからではありますが嬉しすぎた、、涙 一生の宝物です。)

何が価値なのか

売上も安定して、もう少し拡大していきたいと考え始めた11月頃、何度もこのサービスを利用してくれているお客様が多くなってきました。それに伴い、回数を重ねたからこそ分かる「食べる人」目線のこのサービスの価値が明確になりつつありました。

「このお弁当屋さんは私にとってオアシスです」
何人かのリピーターの方が言ってくれたこの言葉。この言葉が、なんだかスッと腑に落ち、もしかしたらこれがお客様にとっての価値なのかもしれないと思い始めました。

次第に話す機会が増えていったお客さんたちの多くは、聞けば1週間のうち平日3日をコンビニなど安いところでランチを済ませ、他の2日間をsmallkitchensでお弁当を購入してくれているとのこと。smallkitchensはまさにオアシスなのだと。

「作り手からの一言」メモを添えて手渡す「作り手が想いを込めて作ったお弁当」。お腹を満たすだけでなくこころも満たせるお弁当。そんなお弁当販売屋は、忙しい日々を過ごす方にとって、ホッと一息をつけるオアシスになり得るのだと知りました。

画像7

(↑お弁当と作り手からのひとこと)

作り手に重きを置いて始めたこのサービスで、作り手にとっていい環境を作ろうとひたすらやっていたら、自然と食べる人にも価値を感じてもらえるものをお届けできていることがわかり、すごく嬉しかったです。

いろんな形でできる

画像8

(↑「smallkitchens sweets」第1弾の手作りグルテンフリーマフィン)

お弁当販売を日々やっている中で、事業の将来の形も考え始めていました。作り手からは、「お弁当以外のものも作りたい」という声もあり、サービスの使いやすさなども含めて、どういう形がいいのだろうかと、あれこれ考えました。

その中で出て来た一つが「smallkitchens sweets」。お弁当同様、得意であれば誰でも「お菓子を作って、お弁当の販売場所で一緒に売ることができる」もの。

そしてもう一つが「smallkitchens shokudo」。いつもお世話になっている方からのご紹介により渋谷の神泉にて、日替わりの定食のみを提供する食堂を実験的に4ヶ月間やらせていただけることになりました。

それが10月下旬のことでした。

僕がはじめた「smallkitchens」の軌跡④ 〜食堂編〜に続く


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?