SPLLへの批判について思うこと

2021年10月11日、㈱アークライツをはじめとするTRPG関連会社6社が「TRPGライツ事務局」を設立し「TRPG二次創作活動ガイドライン」を発表しました。

二次創作活動のガイドラインについては、界隈からの反応も、まぁ上々といった印象。気になったのは「SPLL(スモール・パブリッシャー・リミテッド・ライセンス)」に対しての反応です。全ての人がそうでないにしろ、少し批判的な意見が多いかなと思う現状です。

「SPLL(スモール・パブリッシャー・リミテッド・ライセンス)」とは、一定の条件に二次創作物について、ライセンス申請を行い、ライセンス料を払うというものです。(二次創作物が何か、についてはガイドラインをご確認ください)

一定の条件は以下の通りです。

▼ 紙媒体・グッズ類
 「製造数 × 頒布価格」が20万円以上70万円以下である。

▼ サブスクリプションサービス
 1年間の購読料の合計が20万円以上70万円以下である。

ライセンス料は 16,500円で、70万円を超えた場合は、別途契約が必要。電子出版については、調整中のようですね。

この制度、第一に注目されていたのは「製造数」です。「頒布数」ではなく「製造数」。この部分を誤読してか「20万円以上の売上がある場合は申請が必要」と仰っている方もいらっしゃいます。

実際は「全て売れれば20万円以上になるものを製造した(することを予定している)場合は申請が必要」となります。もちろん、私自身が誤読している可能性もあるのですが…

まぁ、そこはさておいてです。

目に入って気になった意見は、別にあります。

「なんでライセンス料を払わなきゃいけないの?」

こちらです。このように仰る方が一定数、いらっしゃいます。そしてそういう方の多くは、以下のように考えていらっしゃるようです。

「二次創作のガイドラインで二次創作物に定義されているものであり、原著者の利益も侵害しておらず、自分はルールブックを購入しいるし、ライセンスがあってもなくても、頒布における有利不利はない」

言わんとすることは、わかります。ただ、賛同はできませんでした。上記の意見への違和感は、TRPGを漫画やゲーム、ルールブックを単行本やソフトに置き換えてみると分かりやすく浮かび上がると思います。

例えば、ある漫画の二次創作漫画を有料で頒布している方がいるとします。その方が「私はその漫画が連載されている週刊誌を毎週欠かさず購読していて、単行本を全て持っているのだから、二次創作漫画で収入を得ることになんの問題もない」と言ったとして、頷けるでしょうか?

漫画の単行本、ゲームソフト、小説の文庫本、TRPGのルールブック、それらはどれも「嗜好品」として作られ、「嗜好品」として価格が設定されて、販売されています。売る側は、購入者が商品を元に何かを想像し、それを誰かに売り、収入を得ることを想定していません。

いわゆる同人活動が黙認されていたのは、得た収入に対して経費がかかっており、最終的にプラスにはならないからです。

黙認することと、許可することは違います。催促の域を出ませんが、今回のガイドラインが作られた理由の一つは「黙認」を理解していない、またはそれでは納得がいかない一部の同人活動者は、同人活動をよく思わない誰かが、公式に「許可」や「否認」を求めたことがあると思っています。

許可には、出す側の責任が伴います。その一つが、原著者の利益の保証です。保証を行うのは、明確な規制が必要になります。その結果が、このライセンスだと、私は思っています。

「黙認」をしてもらっていた頃にはなかった不自由が、制度への批判の一因になったのだと思います。確かに、もともと利益を乗せずに真っ当な同人活動をしていた人たちには、小さくない負担なのかもしれません。それでもやはり、ひどく横暴な負担と思えません。制度自体も、時代や、TRPGの普及を支えた真っ当な同人活動者に寄り添った、比較的良心的なものだと思います。

公式が、共存のために示してくれたものが、非難されるのは、やはり少し悲しいなと思うここ数日です。

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