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コンデンサが充電されないのはなぜ?

令和元年度 電験二種 一次試験 理論科目 問3 (4)⑸

電位差によって生じる電流という表現なのですが、SWが閉じて$${R}$$に流れる電流$${i_{\mathrm{R}}}$$を式で書くと$${i_{\mathrm{R}}=\dfrac{V-v_{\mathrm{C}}(t)}{R}}$$となるので分子から読み解いて電位差によって生じる電流という言葉の意味でしょうか?

「電位差によって流れる電流はそのまま抵抗$${R}$$のある枝路に流れるから」
ここがどうしても理解できないです、充電されたコンデンサには電流が流れないといった都合の良い間違った解釈をしていました。

電流=電源に負荷が繋がったら何か知らないけど流れる、のような理解しかしていなかったので電位差と電流の関係がどうなるのか教えてもらいたいです。

再度SWを開いた時には充電されるからコンデンサに電流が流れるという事は分かったのですが、SWを投入して放電されるときにコンデンサに電流が流れない理由について新たに疑問ができてしまいました。

ご質問

ということで、「コンデンサ電圧と放電」の回答記事の続きです。

まずは、オームの法則を再確認しましょう。
オームの法則とは、下図のように抵抗$${R}$$の両端の端子AーB間に電圧$${V}$$を印加して電流$${I}$$が流れるとき、これらの間には

$${V=RI}$$

という関係があります。

オームの法則

ここで、電圧とは「2点間の電位差」を指します。上図でいえば、端子A-B間の電圧が$${V[\mathrm{V}]}$$であるということは、「Bの電位よりAの電位が$${V[\mathrm{V}]}$$高い」ということを意味します。このように電位差があるとき、間にある抵抗には電流が流れます。その電流の大きさは、電位差に比例して大きくなる、というのがオームの法則です。

次に、コンデンサの充電について再確認しましょう。
コンデンサに電圧を印加すると、コンデンサに電荷が蓄えられます。コンデンサは蓄えられる電荷$${Q}$$とコンデンサ両端の電圧$${V}$$との関係は、静電容量$${C}$$を用いて、

$${Q=CV}$$

という関係があります。

コンデンサ

ここで、押さえておくべきことがあります。コンデンサ電圧は印加した電圧と等しくなりますが、印加した電圧と等しくなるまでの間に短いですが時間がかかるということです。例えば、コンデンサに印加する電圧が$${1\mathrm{V}}$$であったとすると、印加した瞬間にコンデンサ電圧も$${1\mathrm{V}}$$になるのではなく、$${0\mathrm{V}}$$からはじまって$${0.1\mathrm{V},0.2\mathrm{V},0.3\mathrm{V}…}$$と増えていって、最終的に$${1\mathrm{V}}$$になるのです。電源電圧と等しくなると、回路に電流は流れなくなります。充電完了です。

コンデンサの充電過程

ここで重要なのが「コンデンサ電圧よりコンデンサ両端に印加される電圧が大きいと、電位差によって電流が流れる」ということです。コンデンサは最初は電荷が蓄えられていなかったとすると、コンデンサ電圧は$${0\mathrm{V}}$$ですから、短絡と等しい状況であるといえます。したがって、下図のように見なすことができます。

接続最初の状況

この状況では、回路に大きな電流が流れます。この電流によりコンデンサに電荷が蓄えられ、コンデンサ電圧が$${0.5\mathrm{V}}$$となった時を考えてみましょう。

充電途中

上図のような充電途中では、電源とコンデンサの負極側の接続線の電位を基準($${0\mathrm{V}}$$)とすると、電源の正極の電位が$${1\mathrm{V}}$$であり、コンデンサの正極の電位が$${0.5\mathrm{V}}$$になります。このとき、正極間の電位差が$${0.5\mathrm{V}}$$となりますので、この電位差によって、抵抗に電流が流れます。この電流もやはりコンデンサを充電させます。
そして、コンデンサに電荷が貯まることでコンデンサ電圧が$${1\mathrm{V}}$$となるときの様子を見てみましょう。

充電完了

この状況では、正極間の電位差が$${0\mathrm{V}}$$となります。電位差がなければ電流は流れません。したがって、これ以上電荷が蓄えられることがなくなるため、これで充電完了となります。
もうひとつ重要なポイントとして、コンデンサは放電と充電のどちらかの振る舞いしかしません。放電とはコンデンサから負荷に向かって電流が流れることであり、充電とはコンデンサに向かって電流が流れることです。その両方の状態が同時に起こるということはありません。したがって、放電しているときはコンデンサを充電する電流は流れていないとみなします

このように、電流とは電位差があることによって初めて流れます。
これらの基本を踏まえて、質問に立ち返りましょう。

電位差によって生じる電流という表現なのですが、SWが閉じて$${R}$$に流れる電流$${i_{\mathrm{R}}}$$を式で書くと$${i_{\mathrm{R}}=\dfrac{V-v_{\mathrm{C}}(t)}{R}}$$となるので分子から読み解いて電位差によって生じる電流という言葉の意味でしょうか?

まず、スイッチが閉じて抵抗$${R}$$に流れる電流$${i_{\mathrm{R}}}$$は、$${i_{\mathrm{R}}=\dfrac{V-v_{\mathrm{C}}(t)}{R}}$$ではありません。
下図をご覧下さい。

スイッチオン時の各点の電位と電位差

上図の緑のマーカーで示した線の電位を基準($${0\mathrm{V}}$$)とすると、赤いマーカーで示した線の電位は$${V[\mathrm{V}]}$$、オレンジのマーカーで示した線の電位は$${v_{\mathrm{C}}[\mathrm{V}]}$$となります。したがって、抵抗$${r}$$の両端の電位差、すなわち$${r}$$に加わる電圧は$${V-v_{\mathrm{C}}}$$となります。また、抵抗$${R}$$の両端の電位差、すなわち$${R}$$に加わる電圧は$${v_{\mathrm{C}}(t)}$$となります。したがって、それぞれに流れる電流を$${i_{\mathrm{r}}}$$、$${i_{\mathrm{R}}}$$とすると、

$${i_{\mathrm{r}} =\dfrac{V-v_{\mathrm{C}}(t)}{r}}$$

$${i_{\mathrm{R}} =\dfrac{v_{\mathrm{C}}(t)}{R}}$$

となります。これが、電位差(電圧)によって生じる電流です。繰り返しますが、電位差と電圧は同じ意味です。

このように、抵抗$${R}$$の両端に加わっている電圧は、$${V-v_{\mathrm{C}}(t)}$$ではなく$${v_{\mathrm{C}}(t)}$$です。したがって、抵抗$${R}$$に流れる電流$${i_{\mathrm{R}}}$$は、$${i_{\mathrm{R}}=\dfrac{v_{\mathrm{C}}(t)}{R}}$$となります。

「電位差によって流れる電流はそのまま抵抗$${R}$$のある枝路に流れるから」
ここがどうしても理解できないです、充電されたコンデンサには電流が流れないといった都合の良い間違った解釈をしていました。

この疑問を解決するには、数式から理解するのがよいかと思います。
コンデンサから流れる電流を上図の向きを正として$${i_{\mathrm{C}}}$$とすると、キルヒホッフの電流則から、

$${i_{\mathrm{C}}=i_{\mathrm{R}}-i_{\mathrm{r}}}$$

$${=\dfrac{v_{\mathrm{C}}(t)}{R}-\dfrac{V-v_{\mathrm{C}}(t)}{r}}$$

$${=\dfrac{rv_{\mathrm{C}}(t)}{Rr}-\dfrac{RV-Rv_{\mathrm{C}}(t)}{Rr}}$$

$${=\dfrac{(r+R)v_{\mathrm{C}}(t)-RV}{Rr}}$$

$${=\dfrac{\dfrac{r+R}{R}v_{\mathrm{C}}(t)-V}{r}}$$

$${∴i_{\mathrm{C}}=\dfrac{\dfrac{r+R}{R}\left(v_{\mathrm{C}}(t)-\dfrac{R}{r+R}V\right)}{r}}$$

となります。ここで、$${v_{\mathrm{C}}(t)}$$はスイッチを投入した瞬間では電源電圧と等しく$${V}$$であり、定常状態では、$${\dfrac{R}{r+R}V}$$となります。まず、投入した瞬間の$${i_{\mathrm{C}}}$$は、

$${i_{\mathrm{C}}=\dfrac{\dfrac{r+R}{R}\left(V-\dfrac{R}{r+R}V\right)}{r}}$$

$${=\dfrac{V}{R}}$$

となります。この式から、$${i_{\mathrm{C}}>0}$$ということがわかりますね。値がプラスなので、電流はコンデンサから負荷に向かって流れており、コンデンサは放電しているということになります。ここから徐々に$${v_{\mathrm{C}}}$$は小さくなっていき、最終的に定常状態で$${\dfrac{R}{r+R}V}$$となると、$${i_{\mathrm{C}}}$$は

$${i_{\mathrm{C}}=\dfrac{\dfrac{r+R}{R}\left(\dfrac{R}{r+R}V-\dfrac{R}{r+R}V\right)}{r}=0}$$

となり、コンデンサから電流は流れなくなります。コンデンサ電圧が$${V}$$から$${\dfrac{R}{r+R}V}$$となるまでの間は、$${v_{\mathrm{C}}(t)>\dfrac{R}{r+R}V}$$ですから、$${v_{\mathrm{C}}(t)-\dfrac{R}{r+R}V>0}$$なので、

$${i_{\mathrm{C}}=\dfrac{\dfrac{r+R}{R}\left(v_{\mathrm{C}}(t)-\dfrac{R}{r+R}V\right)}{r}>0}$$

となります。つまり、スイッチを投入してから定常状態になるまでの間は、$${i_{\mathrm{C}}}$$は常にプラスの値、すなわち放電をするということになるわけです。定常状態になるまでの間は放電をし続けるのですから、抵抗$${r}$$に流れる電流はコンデンサには流れず、そのまま抵抗$${R}$$に流れるということになります。

充電されたからコンデンサに電流が流れなくなる、というのは表現として少し不足しています。スイッチを閉じたあとのコンデンサ電圧が定常状態のコンデンサ電圧より大きいので、定常状態に向かって放電をしているために、コンデンサに電流は流れないのです。

回答としては、電源から流れる電流がコンデンサを充電する電流とならないのは、今回の過渡的な状況下では$${i_{\mathrm{C}}>0}$$であるから、ということになります。数式が根拠になるわけです。

因みにですが、コンデンサ電圧が$${v_{\mathrm{C}}(t)=0}$$であるときに流れる$${i_{\mathrm{C}}}$$はというと、

$${i_{\mathrm{C}}=\dfrac{\dfrac{r+R}{R}\left(0-\dfrac{R}{r+R}V\right)}{r}=-\dfrac{V}{r}}$$

となります。負の値を取っているため、この電流はコンデンサを充電させる電流です。また、$${i_{\mathrm{R}}=\dfrac{v_{\mathrm{C}}(t)}{R}=0}$$であるため、抵抗$${R}$$には電流は流れず、この瞬間の電源から流れる電流は全てコンデンサに向かって流れているという状態です。

このように数式をしっかりと立てれば、コンデンサ電圧によってコンデンサに充電する電流が流れるか、コンデンサから放電する電流が流れるかということが分かります。
ぜひ、ご自身でも立式してみてください。

回答は以上となります。
ありがとうございました。

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