「見送る扉」第ニ場

■ 第二場
その日の深夜、帰宅したエリ。自宅は古いアパート。部屋の整理をしているところに、LINEの着信音。エリは、着信相手を確認して微笑む。そして電話をとる。
聡 「エリ、お疲れ様。‥こないだ言った話、考えてくれたかな?」
   聡はすがるような表情。エリはわざと聡を突き放す表情に。
エリ 「‥2年前だっけ、‥ちょうど今くらいの寒い日、わたしは二時間立ちんぼで待ってて風邪ひきかけてたときに、あんたは別の女の子とホテルにいたんだっけ?。」
聡 「そう、だ。‥あの頃の俺は大バカだった。そんな風に女性をないがしろにすることが、男の強さだって信じてたんだよな。」
エリ 「人って、簡単に変われるものなの?。」
聡 「‥正直言うと、まだ自信はないよ。でも、エリがもう一度、俺の傍にいてくれることで、俺は本当に変わることができる、そう思うんだよ。」
エリ 「は?、何それ?。」
聡 「それは、‥エリが俺にとっての、‥初めての彼女だったから。」
エリ 「それは初めて聞いた‥。」
聡 「本当の自分隠して、見た目だけ強さを見せて、自分の彼女にマウントを取る。‥そんな安い奴だったんだよ。でも、今は本当のことが言える。出会ったころも今も、ずっと好きなんだよ。」
エリ 「‥信じていいの?。あ、違う。信じるか信じないかは、わたしが決めることだね‥。」
聡 「‥俺はメロスで、エリはセリヌンティウスだよ。必ず刑場に戻ってくるから、信じて待っていて。」
エリ「え?、なんで知ってるの?。‥でもちょっと残念、わたしのやる役はメロスの方なんだよね。‥‥ご飯でも、食べにいきますか!。前に行った恵比寿のあの店、なんだっけ?」
聡 「クロージェ?。」
エリ 「そう、そこ。」
   エリは満面の笑み。聡も安どの笑み。


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