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ニセコ派遣乗務員さんの仕事を徹底解剖!

ご乗車ありがとうございます。
日本交通(株)新卒採用担当です。

日本交通は昨冬、オーバーツーリズムの課題解決のためのニセコモデルに新卒乗務員さんを派遣しました。今回は北海道・ニセコで仕事をした2名の乗務員さんとの座談会を実施。

極寒の観光地で働いてみた感想をお伺いしました。

【ニセコモデル詳細】
ニセコエリアの冬季観光シーズンのオーバーツーリズム問題を解消するため、北海道ハイヤー協会と地元自治体、GO株式会社が立ち上げた、タクシー車両と乗務員を派遣し稼働を行う実証運行のこと。
・日本交通からはアルファード2台、新卒乗務員5名を派遣
・ニセコ派遣期間:2023年12月11日~2024年3月19日
(乗務員は12月1日より現地入りし、10日間運転練習などを行った)

座談会参加社員

ニセコ派遣が決まった経緯

高木 昨年10月頃に社内で実施されたアンケート(※)の項目に雪道運転の経験の有無を問う設問がありました。私は学生時代からスキーによく行っていたので、雪道の運転経験は何回かあります。そう回答したら、後日HRM(ヒューマンリソースマネジメント)プロジェクトからニセコ派遣の話が。それならぜひ行ってみたいと言いました。

花島 オーバーツーリズム対策でニセコ派遣を行う話については、社内でも上司から聞いていました。率直に行きたいなと思っていたときに高木さんの言うアンケートがあり、これだ!と。学生時代、スノボが趣味でワンシーズン10~15回は車で行っており、これはいけると思って回答しました。

(※)日本交通では、新卒社員を対象に半年に1回アンケートを行っています。HRM(ヒューマンリソースマネジメント)プロジェクトが実施するもので、回答結果は新卒社員のキャリア形成の一助としています。

左:高木さん/右:花島さん

――なぜニセコ派遣を希望したんですか?

花島 率直に楽しそうと思ったのと、社会人になってから新しいことをやりたい気持ちがずっとあったんです。これが初めての経験だったので行きたいなと思いましたね。

高木 日本交通は面白い会社で、新しいことをどんどん取り入れる精神があります。この会社でいろんな仕事をやってきましたが、ニセコの話は楽しそうだなと思って。

そもそもタクシーは営業区域が法律で定められていて、従来であれば東京のタクシーが別の地方で仕事することはできないんです。でも今回は特例措置ということで、誰もが経験したことのないタクシー乗務員の“出張”となります。ぜひやってみて会社や業界の抱えている問題をクリアする担い手になりたいなと思いました。

ニセコに降り立った際の第一印象

高木 12月から雪が積もっているのは聞いていましたが、いざ行ってみると日本じゃないみたいでしたね。当日は大雪で、すごく積もってて。軽々しくやりますって言ったのを後悔するんじゃないかと思ったくらい、極寒の厳しい環境でした。でも、逆にそれが最後までやり遂げてみせるっていう原動力になったかなと思います。

ニセコに降り立ったときの高木さん

花島 結構やばいところに来ちゃったんじゃないかなっていうのが第一印象ですね(笑)。バスを降りたらスーツケースもうまく転がらない雪だったので。ここでやっていけるかなってのは最初思いました。普段は関東のスキー場しか行ってなくて、正直北海道は行ったことがなかったんですが、ニセコはレベルが違うなと。

スーツケースもうまく転がらない雪

出発式の模様

花島 『ニセコHANAZONOリゾート』というスキー場の一角を借りて出発式をやりました。車両が2台、日本交通のアルファードと札幌から来たプリウスαが連続して出発する流れでした。来ていたのは川鍋会長、GO(株)の中島社長、倶知安町の町長、北海道ハイヤー協会の会長など。町を挙げての大事業だというのを実感しました。

取材陣も何人いたかわからないけど、50人くらいはいたんじゃないかな。メディアからの反響も大きかったですね。緊張しました(笑)。

出発式の模様

高木 いつもタクシー関連ニュースを見ているんですが、その日だけ『ニセコモデル始動!』っていう記事ばかりで、テレビにもたくさん出ていて、すごいことをしてることが、ようやくそこで実感がわいた気がしましたね。

業務内容

花島 アプリ予約専用車での仕事でした。『GO』アプリを使った行先指定のあるもので、ニセコのエリア内限定の仕事です。新千歳空港や札幌まで行くことはありません。たとえば電車で来たお客様を駅からホテルに送るとか、ホテルから飲食店に送るとかですね。

高木 東京との違いとしては、東京は平日にビジネスのお客様、土日にお買い物でお乗せする方が多い印象。ニセコだと観光地なので、スキーをするために来日された海外のお客様がホテルからスキー場、スキー場から繁華街の飲食店まで行くことが多いです。夜は飲食店からホテルに戻る方の送迎を担っていましたね。

印象に残ったこと

花島 僕は大学時代にオーストラリアへ短期留学に行っていたんですけど、その時に滞在していたホームステイ先の近くに住んでいた方がお客様で乗って来たことがありました。その時、拙い英語ながら会話して盛り上がったのは印象に残りましたね。

高木 私も同じです。もともと英語はそこまでできる方ではなかったんですが、8~9割は海外のお客様ですので、英語で対応する必要があったんですね。

毎日毎日リスニングを練習することで、世間でいうところのニセコ留学じゃないですけど、運転しながらリスニング力を養ってお客様とコミュニケーションできたのが印象に残っています。休憩中や仕事後に「あれは何て言ったらよかったんだろう」というのをGoogleで調べて、英語の言い回し・単語を日々勉強していました。

大変だったこと

高木 環境が違ったので、雪や氷との闘いが一番大変でしたね。東京だと雪はほとんど降りませんが、ニセコは1か月のうち20日~25日くらいは雪が降っている状態なんです。道路はアスファルトが見えないくらい積もります。

逆に晴れが続くとタイヤで磨かれてアイスバーンになってしまっている。今回東京から持っていったタクシーはスタッドレスタイヤっていう雪道用のタイヤを履いているんですが、それでも歯が立ちませんでした。

――ヒヤッとしたことも……?

高木 ニセコって急な坂道も多い場所なんですね。お客様をお迎えに行く最中に、急坂のアイスバーンでタクシーが上らなくなってしまったことがあって。タイヤが空回りして上らない、下がろうとしてもタイヤがまっすぐ下がらない。どうしようもない状態でした。

会社から支給されていたタイヤチェーンを車に搭載していたので、それを付けて坂道を下って安全に戻ろうと思って、シフトレバーをP(パーキング)に入れて車の外に出たら……なんと、車が動いているんですよ!

――ウワ――ッ!(悲鳴)

高木 車輪は停まっていてブレーキもかけているのに、タイヤがひとりでに滑って変な方向に行っている。その時は人生で一番焦った瞬間でしたね。

結局氷じゃない雪が積もっている部分にうまくコントロールしてなんとか停めることができました。ちなみにその後に外へ降りたんですけども、今度は自分が滑っちゃって。ハイハイで車まで戻ってチェーンを巻きました(笑)。時間がかかってしまったのでご予約はキャンセル扱いにはなりましたが、事故なく無事に帰れました。

――聞いてるだけでヒヤヒヤしますね……。

花島 やっぱり運転ですね、僕が怖かったのは。対向車線のバスがブレーキを踏んだあと、こちらの車線の方に滑ってきたことがあって。挙動がおかしいと思ったので1回停まりましたが、こちらが停まってもまだ滑って来るのでヤバいと思ってバックしました。なんとか接触はしませんでしたが、雪道だと自分が気を付けていても向こうが滑ってくることも多々あるので、気を付けてても危ないと思いました。

あとはホワイトアウトですね。暴風雪の時に5メートル先の視界も見えない状態。急に車のライトが見えて「あ、車いたんだ」ってことも。僕と高木さんは運行管理者と乗務員を兼ねての派遣で、当日の気候や路面状況によって運行判断するのも仕事だったので、特に気候は注意して見ていました。

――どれくらいの気候だと運行中止になる?

高木 路面状況だけでは運行中止にしないんですよ。滑らないように走るという考えではなく(それは無理なので)、滑りなどの挙動をコントロールしながら運転するイメージですね。

花島 ただ視界は風速10mだとほとんど見えないです。数メートル先の対向車すら見えない。

高木 アイスバーンだと時速40キロで停止距離が大体7~80m(晴れた路面での倍以上)に伸びてしまいます。仮に時速3~40キロで走ったとしても、車間距離が7~80mないとホワイトアウトの中で車が見えたときに急に停まれない。だから視界が100mを下回るときは、運行を中止していましたね。

――この写真を見て思ったんですが、雪かきしないと出庫できないのでは……?

雪に埋もれるタクシー車両の皆さん

高木 そうですね。乗務前に出庫前点検を必ず行いますが、まずその車にたどりつくまでに雪が腰まで積もっているので、点検できないんです。まずは周りの雪かきから。長いと1時間くらいかかります。

ようやく車に乗って、エンジンをかけて暖機運転している間に、車の上に積もっている雪を下す。それからやっとボンネットが開けられるので、日常点検を行うって流れでしたね。毎日雪との闘いでした。

楽しかったこと・やりがい

花島 スノーボードですね、やっぱり。楽しかった! 明けの休みでも公休でも行ってました。時間券を買って1日1~2時間だけでも滑っていました。贅沢にスキー場に行けていましたね。

スキー場から眺める雄大な景色

高木 やりがいの部分でお話すると、お乗せするのが外国人の方ばかりなので、自分も1~2か月でいい感じに英語でコミュニケーションを取れるようになってきて。お乗せすると「来てくれてありがとう。車の中は暖かくて最高だよ」とおっしゃっていただけて、ニセコに来てよかったなぁと感じることができましたね。

ニセコって今までは地元のタクシー会社のみの運行で、街に12~3台しかなかったそうなんです。それが観光シーズンは1か月~1週間前までの予約で埋め尽くされて、呼びたいときに呼べなかった状態で。それが私たちがニセコで仕事をしたことによって、いつでも気軽に呼ぶことができるようになりました。環境を変えることに貢献できたのがやりがいに感じましたね。

勤務形態

高木 早番の隔日勤務で、朝6時から深夜0時までの18時間勤務でした。勤務時間自体は東京と変わりないですね。

花島 早番に慣れていなかったので早起きは大変でしたが、その分0時に仕事が終わるので、明けでいったん寝てスノボに行けちゃうので早番でよかったなと思いましたね。

――ホームシックはありました?

花島 残り1か月くらいのときからすごく帰りたくなりましたね。その時期は暖冬でニセコですら雪がなくなっちゃって。3月頭はほとんどスノボに行けてないです。部屋で過ごすことも結構多くて、それで帰りたくなっちゃった。そういうときは、他の派遣メンバーと札幌、小樽、函館などに小旅行に行ったり……

高木 あとは、部屋で桃鉄やってたよね。桃鉄って行先がランダムで決まるんですけど、それがたまたまニセコ駅だったときはちょっと感動したよね?

花島 僕は逆ですよ(笑)。桃鉄で「北へ!カード」あるじゃないですか。それでニセコにピンポイントで行ったことがあって、それで「二度と帰れないのかな……」って(爆笑)。

高木 派遣メンバーは福利厚生で期間中に東京へ帰省できるんですが、私は1月中頃に帰省しました。その時思ったのは、ニセコっていわゆる田舎町なんです。近くの倶知安町は栄えていますが、それでも飲食店は深夜までやっていないような町で。ニセコと東京を行き来する中で、今までの東京での暮らしがいかに贅沢だったかと気付き、自分ってすっごく欲張りな人間なんだなって思いましたね。

乗務と明けの日、それぞれの一日の流れ

左:花島さん/右:高木さん

高木・花島 同じこと書いてる……!(笑)

――ピザ屋さんがかぶってますね……。

花島 おいしいピザ屋さんが近くにあったんです。

高木 深夜の0時に仕事が終わって、風呂に入って夜食を食べたりして、寝るのが1時半~2時ごろ。朝9時くらいに起きて、スキーへ。その日は明け番で仕事がまったくないのでスキー三昧、温泉三昧、おいしいごはん三昧って感じでしたね♪

ニセコの星空。オリオン座がくっきり

後輩へのアドバイスや心構え

高木 何でもやってみようと思う精神が大事だと思いますね。自分が想像していなかった場所での仕事であっても意外とやっていけるものですし、その変化の先頭に立つことができるんですね。知識やスキルを得るためには自分が変化の先頭に立たないとわからないことってたくさんあると思うんです。

今回のニセコも、行く前はどんな仕事になるか想像できなかったですけど、現地で学び、自由自在に自分の形を変えてその場所に合わせていく。とりあえずどんどんやってみる。

たとえば、今後同じようにニセコ派遣があるときには「こういうことを準備したほうがいいよ」とか「雪道や観光地でタクシーをするためにはこういうことが必要だ」と提言ができるようになると思っていますね。

花島 今後他のエリアで、もしくはもう1回ニセコで派遣があるという時には、まず興味を持って手を挙げてみたらいいんじゃないかと思います。ここ数年でタクシー業界は変化しているので、新しいことをやっていってほしいです。

――英語力などの技術は必要?

高木 今回、実はタクシー内にAI付きの翻訳機(ポケトーク)を搭載していまして、英語が分からなかったときにはそれを活用していました。英語は苦手でもポケトークがあって何とかなったという方もいましたね。なので、語学力は問われません。スキルや知識は後からついてくるものなので、とりあえずやってみるのが大切かなと思います。

今後のキャリアの展望や目標

花島 4月から運行管理者としてリボン交通で働きます。前は乗務員でしたが、管理者に変わります。乗務員さんが気持ちよく働けるように、まずは経験を積みたいです。

運行管理者の声がかかったのは、派遣期間の終盤に東京へ帰省して営業所に用事で寄ったときです。所長から「4月からよろしく」と。入社した時から運行管理者はやってみたかったので、迷いなく「はい」と返事しました

高木 この業界を先へ先へと進めていくのが日本交通という会社だと思っています。今後自分が想像しえないことが降りかかってくると思うし、やってみろと言われることもたくさん出てくると思いますが、自分はとりあえず受け入れてやってみて、知らないことは先輩や業界の人に聞いたり自分で調べたりして、この業界を自分の足で切り開いていきたいなって思います。

座右の銘

高木さんの座右の銘
花島さんの座右の銘

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

なお、ニセコモデルを社内から調整していた「タクシー営業企画部」の社員の座談会記事も公開されております。ぜひ併せてご覧ください。

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インタビュー実施:2024年4月19日
協力:高木さん(新木場営業所)・花島さん(リボン交通)
Text、Interview:飛田、Photo:堀江


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