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奥日光の毒キノコ①〜⑥

 ①🍄絵本やアニメなどに登場し、人気ナンバーワンのキノコはベニテングタケになる。赤味のある橙色の傘に白い飾りのような破片(イボ)があり、白い柄の下が膨らむなど、メルヘンチックで見飽きない。紅天狗茸という名前も印象的で、複数で発生すると更に絵になる毒キノコだ。
 このベニテングタケを小型化したキノコがある。ヒメベニテングタケ(姫紅天狗茸)と名がついている。
 ヒメベニテングタケは、奥日光ではブナとミズナラの混合林などに、落ち葉に隠れて生えてくる。森のなかで小さな赤いキノコを見つけると、幸せな気持ちになる。

 ヒメベニテングタケの幼菌が、丸く小さくまとまって顔を出していた。西洋では、キノコが円を描くように生えている様子を、妖精が輪になって踊った跡のキノコという意味で、fairy circleやfairy ring(妖精の輪)と表現することがある。妖精の輪に関するケルト伝説もあるとのことだ。 ©nishiki atsushi
 雨上がりの林内で、ヒメベニテングタケが傘を開き始めていた。橙色の小さな傘に白い色の破片が見えて美しい。根元付近の橙色も、ヒメベニテングタケの特徴になっている。©nishiki atsushi

 ②タマゴタケ(卵茸)は、幼菌の姿が可愛らしいキノコで、傘がツルリとしている。毒キノコのような印象だが、幼菌の時は可食らしいし名前も美味しそう。とは言っても本当に食べられるのか心配になる。

 タマゴタケの幼菌が顔を出した。純白のツボを割って朱色の傘が出てくる様子を見ると、「卵茸」としたのも理解できる。©nishiki atsushi
 タマゴタケが傘を開き始めた。特徴は、柄に橙色の濃淡があり、傘周縁には条線が現れる。©nishiki atsushi

 ③毒キノコのバライロウラベニイロガワリ(薔薇色裏紅色変)を見た。紅天狗茸と同様に、名前に惹かれてしまう。傘から柄まで全身が赤みを帯びた鮮やかな紅色(薔薇色)で、薄暗い森で異彩を放っていた。
 亜高山帯に生える猛毒キノコで、傷をつけると、すぐさま赤紅から藍に変色するという特徴をもつ。その変化の速さと藍色の深みには、怖ささえ覚えるほどだ。
 奥日光では切込刈込湖周辺の針葉樹林下で稀に見られ、強烈な印象を受けるのは必至だ。

 奥日光の亜高山帯針葉樹林下で見たバライロウラベニイロガワリ。鮮やかな赤紅色に強烈な印象を受ける。©nishiki atsushi
 傘の端を指先で摘んでみると、すぐさま光沢のある濃い藍色に変化した。その変化の速さと独特の藍色には驚いてしまう。似ているキノコには、広葉樹林内のアメリカウラベニイロガワリがある。©nishiki atsushi

 ④奥日光のやや薄暗い林内に、明るい緋色のキノコが緑に映えていた。透明感のある緋色に驚いた。アカヌマベニタケ(赤沼紅茸)またはベニヤマタケ(紅山茸)のように思える。典型的な毒キノコに見えるが、よく分からない。

 このように鮮やかなベニヤマタケを喜んで食べる地域があるらしい。©nishiki atsushi

 ⑤ドクツルタケ(毒鶴茸)は大型の白いキノコで、大きなツバや柄のササクレなども独特だ。死に至らしめるほどの強烈な毒を秘めた雰囲気を醸し出していて、触れることも躊躇してしまう。
 英名「Destroying Angel」や日本名「毒鶴茸」は、猛毒を秘めた純白の立ち姿を、天使や鶴に見立てて表現している。

 白一色で大型のドクツルタケは、緑の少ない森のなかで特に目立つ。似ているキノコでは、ミヤマタマゴタケには毒があり、シロフクロタケには毒がない、とされている。©nishiki atsushi

 ⑥誤食例の多い毒キノコは、ツキヨタケやクサウラベニタケなどが知られている。
 ツキヨタケ(月夜茸)はブナの衰弱木や倒木に重なり合うように発生する。柄を縦に裂いて、付け根や傘の近くに黒いシミがあればツキヨタケ、と一般的に言われているが、そうでもないこともあるらしく、誤食されるのかもしれない。発生時期は多少違うが、可食のムキタケによく似ている。

 ツキヨタケのヒダには発光成分があり、夜はほのかに光っているとのことだ。一度は見たい神秘的な風景だが、夜の森は少し怖い。
この他にも光る植物や生物が知られていて、謎に満ちた世界がある。©nishiki atsushi

 
 空nyan! 毒キノコは多種多様で、知られていない魅力があるように思う。

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