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オトシブミの「落とし文」「付け文」

木の葉の小さな巻物「落とし文」が置いてある。当日は緑色、その後は徐々に枯葉色に変わり、置かれた日を知らせてくれる。
掌に乗せると巻物は重さを感じないほど軽くて転がる。探しても結ぶ紐は無いから広げ方が少し難しい。

巻物には、1mmほどの卵が1個、葉先に真珠のように輝いて付いている。巻文は無い。未知の極小の世界を想定しながら、心の中で繙くことになる。

巻物という食べ物が付いた〝揺りかご〟の中で、卵は孵化して幼虫になり、巻物の中で葉を食べて蛹になり、秋口には羽化してオトシブミが登場する。

オトシブミ科のルイスアシナガオトシブミが、7月の奥日光で「落とし文」〝揺籃(ようらん)〟を作っていた。

ルイスアシナガオトシブミの「落とし文」作りはメスが行う。葉の基部をかじって葉を垂らし、主脈に噛み傷を入れていく。葉は半分に折れて巻きやすい形になる。
噛み傷を入れながら葉先から巻き始め、卵を1個産んで包み込む。オスは周りで動きながら見守ることがある。
体長1cmに満たない体で確実に巻き進める。静かな手品を見ているようだ。
最後に片方の端の葉を折り曲げて整えると、きれいな巻物になった。(その後、整えた葉が元に戻ってしまった)
「落とし文」が完成し、葉の基部を噛み始める。そして、約2分間が経過して──
落ちた!
この日の「落とし文」作りは、葉を巻き始めてから落下させるまで約50分を要した。
枝に付いたままの「落とし文」は、葉柄に噛み傷があるので枯れる。
ズミの木にも小さな葉の中に「落とし文」があり、このときは「付け文」に見えた。
ナミテントウ(19星)もルイスアシナガオトシブミも、体長は1cmに満たない。

空nyan! 飛び立つときのオトシブミの翅を見てほしい。折りたたんでいた翅が長くなっているょ。
今度会えたら、折り紙を使って、翅の折りたたみ方を一緒に考えてみよう。

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