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尾瀬のとんぼ、キイトトンボ、オオルリボシヤンマ

8月21日、沼山峠から歩き出し、尾瀬沼(標高1665m)の周囲6〜8kmを散策した。奥日光で言えば湯ノ湖一周の2倍の距離になる。朝から霧雨が続くので心配したが、次第に晴れ間も見せてくれた。
大江湿原の木道の近くにはミヤマアキノキリンソウが咲き始め、イワショウブの白い花が赤い実に変わろうとしていた。
オクトリカブトの独特な形状に膨らむ紫色の花には、柔らかそうな毛を纏ったマルハナバチが来ていた。蜜を求めて花に潜り込んだり懸命に動きまわる様子を見ていると、蜜や花粉にトリカブトの猛毒が入っていないのか心配になってしまう。

イワショウブ(岩菖蒲)は白から赤へ色変わりする。 ©nishiki atsushi
オクトリカブト(奥鳥兜)の花にトラマルハナバチが飛んで来た。一つ一つの花に潜り込では出て来る。 ©nishiki atsushi
トラマルハナバチは花蜜が奥にある花を訪れるために、この写真のように、口吻が長く出ている。 ©nishiki atsushi
湿原からウメバチソウ(梅鉢草)が遠慮がちに顔を出し始めた。 ©nishiki atsushi

尾瀬沼の岸辺には、フトイ(太藺、カヤツリグサ科)が群生している。水面に連なる波紋と緑色の細い縦線が美しい。
岸の近くでは今年生まれの成長したマガモが集まり、傍らには母マガモがいる。岸に上がって一休みする頃合いのようだ。子ガモたちはいつも母ガモについて回る。孵化して初めて見た動くものを親とみなす習性(刷り込み)と母ガモの子育ての役割がうまく組み合っている。

マガモは尾瀬沼で繁殖していると思われる。 ©nishiki atsushi

ところで、マガモのオスはというと、群れから遠く離れた対岸を泳いでいる。

マガモのオスは繁殖期を過ぎると換羽(エクリプス)により、メスのような褐色系の地味な姿になる。この時期のマガモはオスとメスが似ているが、嘴が黄色ならオスだと判る。 ©nishiki atsushi


尾瀬には尾瀬沼や尾瀬ヶ原の湿原、川や点在する池塘など、トンボの生息しやすい自然がある。尾瀬の名の付くオゼイトトンボ、体長2cmほどのハッチョウトンボ、顔の白いカオジロトンボなど、見たいと思うトンボが多い。
今回の散策では、数がやや少ないとされるキイトトンボ(黄糸蜻蛉)と静かな時間を過ごすことができた。キイトトンボは緩やかに草から離れ、また近くに止まり、周りにとけ込んで動かない。

キイトトンボは同じような色のトンボがいないから判別は容易だ。オスの黄色い腹部の先には黒条があり、体長3cm程度。胸部の色に合わせて複眼も黄緑色でかわいい。©nishiki atsushi

周りを見ると、金属光沢が美しいアオイトトンボ(青糸蜻蛉)も飛んでいた。
アオイトトンボは翅をハの字に開いて草などに止まるのだが、力を抜いて休むためなのか、綺麗な腹部を見せるためなのか、色々と考えてしまう。見ていると、翅を緩ませて静かに止まっている姿に心惹かれる。

アオイトトンボのオスの成熟個体は複眼が青くなり、体に青白い粉が吹いてくる。翅をやや広げて止まる習性が不思議だ。©nishiki atsushi


沢水が溜まった水域では、オオルリボシヤンマ(大瑠璃星蜻蜒)が尾の先を水中に沈めて、植物の茎などに産卵していた。

オヒルムシロの葉に止まり、産卵するオオルリボシヤンマ。NHK朝ドラ『らんまん』で万太郎が「ヒルムシロ」という名前を教えてもらうシーンがあった。 nishiki atsushi

夏から秋までオオルリボシヤンマが飛んでは水辺で産卵する様子をよく見かける。日光白根山の弥陀ヶ池(標高2200m)などでも見ることがある。

日光白根山の弥陀ヶ池のオオルリボシヤンマは水没した木に産卵することが多い。 ©nishiki atsushi

日本の山地性の大型ヤンマには、オオルリボシヤンマとルリボシヤンマがいて、胸部や腹部の斑紋に違いがあるとされている。尾瀬には広々とした環境を好むオオルリボシヤンマが多いようだ。

奥日光では縄張り飛翔でホバリングをするルリボシヤンマを見かける。 ©nishiki atsushi
飛行中の写真を撮ってみると、脚はしっかり畳んでいる、4枚の翅をバラバラに動かしている、翅はしなりながら空気を捉えている。 ©nishiki atsushi


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