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尾瀬ヶ原を旅する

見晴キャンプ場に2泊して尾瀬ヶ原を歩いた。学生時代に鳩待峠からみんなでテントを持って歩いた思い出の尾瀬ヶ原。その時の仲間の多くは尾瀬の最高峰・燧ヶ岳(柴安嵓2356m)登山に挑戦したが、私は登らずに、徒歩で100分程度で行けるからと三条ノ滝を選んで笑いを取ったりした。

さあ、久しぶりの尾瀬ヶ原への旅だ。9月4日に沼山峠からスタート、尾瀬沼を見て白砂峠を越え、見晴にある燧小屋に着いてキャンプの申し込みをした。夜になって雨がテントを叩いた。
9月5日の早朝、尾瀬ヶ原は濃霧に包まれて至仏山は見えない。5時45分、太陽は燧ヶ岳山頂からかけ離れた位置から顔を出し、林の霧に光の矢を放つ。

見晴方面は霧で真っ白だ。光芒が霧に伸びる。 ©nishiki atsushi

至仏山方面を振り返ると、霧の白は空色に変わりはじめ、地表から白虹が立ち上がっている。尾瀬ヶ原の先は霧が残り、遠くの樹木や草原の色が抑えられて描き始めたキャンバスのようだ。

至仏山に向かう木道の先に白い虹がかかる。朝霧は薄らいでいくが、風がほとんどなく白虹は広い原にしばらく残っていた。 ©nishiki atsushi


尾瀬ヶ原の魅力は、長く続く木道と大小の池塘だ。歩きながら至仏山と燧ヶ岳を見渡せるのが楽しい。逆さ燧も見ることが出来た。
池塘にはアオイトトンボが飛んでいて、草の上にはハッチョウトンボがいて嬉しくなる。撮影していると「何かいるのですか?」と声をかけてくる人がいた。「小さなトンボがここに!」とトンボの近くで指さしたが、なかなか見つからずに「え?どこ?どこ?」と聞いてくる。それほど小さくてかわいい。日本一、世界一の小さなトンボだ。

ハッチョウトンボのオスはこんな赤いのかと思った。体長2cm程度のトンボで、遠くに逃げるよりも近くの草に止まるから、更にかわいい。 ©nishiki atsushi

一匹のアオイトトンボが面白い動きをした。飛んで来て池塘から伸びた草に止まり、腹部をしなやかに上下に動かしたのだ。細長い腹部はシッポではないが「イトトンボのシッポ振りふり」と名付けたいような動きを繰り返して、ふんわりと飛んで行った。

いつも翅は半開きで止まっている。 ©nishiki atsushi
閉じた翅の間を通すように、腹部をしならせて上下に動かす。©nishiki atsushi
数回、腹部を振り上げる。腹部に絡まったクモの糸などを閉じた翅で取り払う「クリーニング行動」と呼ばれる動きらしい。©nishiki atsushi

池塘にはヒツジグサ(未草)の切れ込みの入った浮水葉がたくさん浮いている。所々に白い蕾が顔を出していて、「小さくてかわいい」「あ!ここは咲いている」などと散策している人たちの楽しそうな声が聞こえて来る。
未の刻(午後2時、午後1〜3時)に咲くからヒツジグサだが、昼前には花が開き、純白の花びらと中に見える黄色が調和して美しい。

晴れた暑い日の午前10時、ヒツジグサが開き始めた。
©nishiki atsushi
同じ花が午前11時頃には随分咲いてきた。 ©nishiki atsushi
モネの油絵「睡蓮」は人気があり、白色や赤色系の睡蓮が描かれている。日本には園芸種は別として、自生しているのは白色のヒツジグサだけという。描かれた睡蓮は美しいし、自然の中のヒツジグサは魅力的だ。 ©nishiki atsushi
木道から間近にヒツジグサを愛でる。 ©nishiki atsushi
イモリもちょっと顔を見せた。©nishiki atsushi
今回の旅で驚いたのは、木道の陰にミツガシワが咲き残っていてくれたことだ。父が尾瀬ヶ原で見たかった花。 ©nishiki atsushi
尾瀬ヶ原の池塘の美しさに魅せられ、木道の先にそびえ立つ至仏山や燧ヶ岳への憧れが募る。 ©nishiki atsushi

ゆめのtan! へ これからの季節、ヒツジグサの美しい紅葉も楽しめるョ

©nishiki atsushi

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