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【プロンプト紹介】Zero-Shot Promptingとは?活用や設計方法について解説

生成AIにおけるプロンプト手法の中でも、特に定番であり、頻繁に使用されるのものとしてZero-Shot Promptingがあります。Zero-Shot Promptingは、特定の例を示さずに質問を行い、その回答を期待する手法です。

本記事では、Zero-Shot Promptingの概要や活用法、設計方法についてご紹介します。


Zero-Shot Promptingとは

大規模言語モデル(LLM)は、大量のデータで訓練され、指示に従うように最適化されています。そのため、例を提示しなくても、ゼロショットで一定のタスクや質問に対応することが可能です。これは、以前の記事で解説した「トランスフォーマーモデル」が、次に来る単語や文章を高確率で予測する仕組みを持っているためです。

Zero-Shot Promptingの活用法

ゼロショットプロンプティングをどのような場面で活用できるかを紹介します。

・タスクの自動化
ゼロショットプロンプティングを活用すれば、具体的な例を示さずに、さまざまなタスクを自動化できます。例えば、文章の分類や要約、質問への回答などが可能です。これにより、効率的にタスクを処理できます。

・問題への対応
モデルの学習データに含まれていない新しい問題やタスクにも、ゼロショットプロンプティングは効果的です。モデルは例を与えなくても適切に応答できるため、より柔軟に対応できます。ただし、ハルシネーションの可能性はあるため注意が必要です。

・クリエイティブなコンテンツ作成
モデルにスタイルや役割を指示することで、創造的なコンテンツを作成できます。例えば、詩的な文体や特定のキャラクターとして応答をさせることで、クリエイティブなコンテンツを生み出せます。

Zero-Shot Promptingの設計方法

ゼロショットプロンプティングでプロンプトを設計する際のポイントを紹介します。

  1. 明確なインストラクション
    ゼロショットプロンプティングでは、具体的な例を提供しないため、指示が明確であることが重要です。タスクの目的や期待される出力を詳細かつ正確に伝えることで、モデルが期待どおりの応答を生成しやすくなります。

  2. プロンプトの最適化
    プロンプトには、単なる短い質問をではなく、具体的な条件(役割やスタイルなど)を組み込むことで、出力の質を高めることができます。例えば、「歴史学者として」や「シェイクスピア風に」といった指示を加えることで、より効果的な応答が得られます。

  3. コンテキストの工夫
    モデルが適切な応答を生成できるよう、プロンプトに適切なコンテキストを組み込むことが重要です。これには、関連する背景情報を追加したり、複数の条件を組み合わせたりして、精度を高める方法もあります。

  4. フィードバックと反復改善
    最初にゼロショットで出力された内容を評価し、その都度プロンプトの改善していくことで、最終的なアウトプットの質を向上させることができます。

  5. エラーの処理と対応
    ゼロショットプロンプティングでは、期待外れの結果や誤った応答が生じることもあります。その場合、別のプロンプトを試すなど、アプローチを変更することが重要です。

Zero-Shot Promptingの種類

ゼロショットプロンプティングには、いくつか定義されたプロンプトがあるため紹介します。なお、メリーランド大学やOpenAI、スタンフォード大学、Microsoftなどの研究者が作成した論文「プロンプトレポート:プロンプト技術の体系的調査(The Prompt Report: A Systematic Survey of Prompting Techniques)」を参考にしています。

なお、下記では日本語訳した内容を紹介しています。

Role Prompting

ロールプロンプティングは、モデルに特定の役割を割り当てるプロンプトです。例えば、ユーザーは「歴史学者」や「作家」として説明するように指示できます。

質問:あなたは歴史学者として、この時代の経済の影響を説明してください。

回答:この時代における経済の影響は、農業生産性の向上と共に都市化が進行し、貿易が盛んになったことにあります。特に、絹の道を通じた東西交易が重要な役割を果たし、文化や技術の伝播にも寄与しました。

説明:モデルは「歴史学者」として振る舞い、専門的な視点からの回答を提供します。

Style Prompting

スタイルプロンプティングは、プロンプトに望ましいスタイルやトーン、またはジャンルを指定してモデルの出力を形成します。なお、ロールプロンプティングを使用して同様の効果を得ることも可能です。

質問:この物語をシェイクスピア風に書いてください。

回答:かつて、ある王国に、貴き王とその無二の友がいた。だが、妬みと野心が王の宮廷を蝕み、友の忠誠は試されることとなる。

説明:モデルは「シェイクスピア風」というスタイルで物語を再構成し、古典的な言い回しや詩的な調子を用いています。

Emotion Prompting

エモーションプロンプティングは、プロンプトに心理的に重要なフレーズを組み込むことでモデルのパフォーマンスを向上させます。

質問:これは私のキャリアにとって重要です。このプロジェクトの成功についての感想を教えてください。

回答:このプロジェクトは私にとって、単なる業務以上の意味を持っています。キャリアの転機とも言えるこの挑戦を成功させることで、私の専門知識とリーダーシップが真に評価されると信じています。プレッシャーは大きいですが、それだけにやりがいを感じています。

説明:質問に「これは私のキャリアにとって重要です」というフレーズが含まれることで、モデルはその感情を考慮した応答を生成しています。

System 2 Attention(S2A)

S2Aは、最初にモデルにプロンプトを再構成して質問に関連しない情報を削除させ、次にこの新しいプロンプトをモデルに渡して最終応答を得る方法です。

質問:GenerativeAIの誤りに対する人々の反応がどのように異なるのか、特に初心者と経験者の間での違いについて教えてください。

プロンプトの再構成:この質問の焦点は「GenerativeAIの誤りに対する人々の反応」と「初心者と経験者の反応の違い」です。余分な情報を削除してプロンプトを再構成します。

再構成されたプロンプト:GenerativeAIの誤りに対する初心者と経験者の反応の違いについて説明してください。

回答:GenerativeAIの誤りに対する人々の反応は、そのAI技術に対する理解度や経験に応じて異なります。初心者は、AIが誤りを犯すと、技術自体に対する信頼が揺らぎ、AIが本当に信頼できるのか疑問を持つことが多いです。これは、彼らがAIの限界や可能性について十分に理解していないためです。一方、経験者はAIの限界を理解しており、誤りが発生してもそれをAIの一部として受け入れ、誤りが発生する原因やそれを修正する方法に焦点を当てます。彼らは、AIの出力を批判的に評価し、誤りを適切に修正することができるため、誤りに対する反応は冷静であることが多いです。
このように、GenerativeAIに対する誤りへの反応は、技術に対する理解の深さに大きく依存しています。

SimToM

SimToMは、複数の人や物が関与する複雑な質問に対処します。質問に基づいて、ある人物が知っている事実のセットを確立し、その事実のみに基づいて質問に答えるという二段階プロセスです。これにより、プロンプト内の無関係な情報の影響を排除できます。

質問:ウクライナ紛争におけるロシア、中国、アメリカの関与とそれぞれの影響について、どのように評価すべきか説明してください。

SimToMプロセス:

事実のセットを確立する
・ロシア:ロシアはウクライナ戦争に直接関与し、軍事行動を行っている。クリミアの併合やドンバス地域の支援などを通じて、ウクライナの領土に対する影響力を強化しようとしている。
・中国:中国はロシアと友好的な関係を維持しつつも、戦争に直接介入せず、主に経済的・外交的な影響を行使している。中国は自身を潜在的な仲介者として位置づけることもある。
・アメリカ:アメリカはウクライナに対して軍事的・経済的支援を行い、NATOと連携してロシアに対する圧力を強めている。アメリカはロシアの行動を批判し、国際的な制裁を主導している。

事実のみに基づいて質問に答える
・ロシア:ロシアの関与は直接的かつ軍事的であり、ウクライナの主権を脅かす行動を取っている。ロシアの目的は、自国の安全保障を強化し、ウクライナを含む旧ソ連圏への影響力を回復することにある。
・中国:中国はロシアを支持しつつも、戦争への直接介入を避け、経済的な利益を守るために慎重な立場を取っている。中国の影響力は、国際社会での立ち位置と経済的な利益に焦点を当てている。
・アメリカ:アメリカの関与は、ウクライナの主権を支持し、ロシアに対する国際的な圧力を強化することである。アメリカは、自由主義的な国際秩序を守るために、軍事的および経済的な手段を通じてロシアに対抗している。

回答:ウクライナ戦争におけるロシア、中国、アメリカの関与と影響を評価すると、次のようになります。
ロシアは直接的な軍事行動を通じて、ウクライナに対する圧力を強化しており、ウクライナの主権と領土保全を脅かしています。ロシアの目的は、自国の安全保障を強化し、旧ソ連圏への影響力を取り戻すことです。
中国は、ロシアを支持しつつも戦争への直接介入を避け、経済的な利益を守るために慎重な立場を取っています。中国の影響は主に経済的および外交的な面にあり、自身を潜在的な仲介者として位置づけることもあります。
アメリカは、ウクライナの主権を支持し、ロシアに対する国際的な圧力を強化する役割を果たしています。アメリカの関与は、自由主義的な国際秩序を守るために、軍事的および経済的な手段を通じてロシアに対抗しています。
このように、各国の関与はそれぞれの立場と目的に基づいており、戦争に対する影響の仕方も異なっています。

Rephrase and Respond(RaR)

RaRは、モデルに質問を再構成し、拡張するよう指示してから最終回答を生成させます。例えば、質問に「質問を再構成して拡張し、応答してください」と追加することがあります。これを一度に行うことも、新しく質問することもできます。

質問:GenerativeAIの誤りに対する初心者と経験者の反応の違いについて教えてください。

Rephrase and Respond (RaR) プロセス:

・質問を再構成し、拡張:Generative AIの誤りに対する反応は、初心者と経験者の間でどのように異なるのか?具体的には、それぞれのグループが誤りをどのように理解し、処理し、対処するかについて説明してください。
・最終回答を生成:

回答:GenerativeAIの誤りに対する反応は、初心者と経験者で大きく異なります。
・初心者:GenerativeAIに不慣れな初心者は、AIの誤りに直面すると、それを技術全体の信頼性に対する重大な欠陥と見なすことが多いです。彼らは誤りをAIの能力不足と感じ、場合によってはAIに対する不信感を抱くことがあります。誤りが出た場合、彼らはそれをどのように解釈すべきか、また次にどのように対処すべきか迷うことが多いです。
・経験者:一方、GenerativeAIに精通した経験者は、AIの限界と誤りが避けられないものであることを理解しています。彼らはAIの誤りを冷静に分析し、その誤りがどのように発生したのかを理解しようとします。また、経験者はAIの出力を批判的に評価し、誤りを修正するための具体的な手段を持っていることが多いです。彼らは誤りをAIの一部として受け入れ、適切な対策を講じることができるため、全体的な信頼感を失うことはありません。
このように、GenerativeAIの誤りに対する反応の違いは、AIに対する理解度と経験の差によるものです。初心者はAIの誤りに対して懐疑的になりがちですが、経験者はそれを適切に処理し、対策を講じることができます。

Re-reading(RE2)

RE2は、プロンプトに「質問をもう一度読んでください」と追加し、質問を繰り返す方法です。このシンプルな方法にもかかわらず、特に複雑な質問に対しての改善が示されています。

質問:生成AIの発展が今後の人類社会にどのような影響を与えるか、具体的な例を挙げて説明してください。

Re-reading(RE2)プロセス:

・プロンプトに「質問をもう一度読んでください」を追加:質問をもう一度読んでください。生成AIの発展が今後の人類社会にどのような影響を与えるか、具体的な例を挙げて説明してください。
・最終回答を生成:

回答:質問をもう一度読んだ結果、生成AIの発展が今後の人類社会に与える影響を次のように説明します。
・労働市場の変化:生成AIの進化により、クリエイティブな分野やルーチン作業の自動化が進むと考えられます。例えば、デザインやライティング、音楽の生成など、従来は人間が担っていた仕事がAIによって効率的に行われるようになります。これにより、一部の職種はAIに置き換えられる可能性がありますが、同時に新しい職業やビジネスモデルが生まれるでしょう。
・教育と学習の個別化: 生成AIを活用することで、学習者一人ひとりに合わせた教育コンテンツを生成し、より効果的な学習が可能になります。AIは学習者の進捗をリアルタイムで分析し、適切な教材や問題を提供することができるため、個別化された教育の実現が期待されています。
・文化と創造性の再定義: 生成AIがアートや文学の分野で広く利用されるようになると、創造性の概念が変わる可能性があります。AIが生成した作品が人間の創造物と区別がつかないほどの質を持つ場合、アーティストやクリエイターの役割が再定義されるかもしれません。これは、新しい形のコラボレーションや創作手法を生む可能性もあります。
・倫理的・社会的課題: 生成AIの発展は、偽情報やディープフェイクの拡散といった倫理的な問題も引き起こします。これに対処するために、社会全体でAI技術の利用に関するルールやガイドラインを確立する必要があります。また、AIが生成するコンテンツに対する著作権の扱いや責任の所在といった法的課題も今後の重要な議題となるでしょう。
これらの具体例を通じて、生成AIの発展が今後の人類社会に広範な影響を及ぼすことが予想されます。

Self-Ask

Self-Askは、モデルに対して、与えられたプロンプトに対してフォローアップの質問が必要かどうかを最初に判断させます。必要ならば、モデルがこれらの質問を生成し、それに回答してから元の質問に回答します。

質問:生成AIがビジネスの世界にどのような変革をもたらすか、具体例を挙げて説明してください。

Self-Askプロセス:

・フォローアップの質問が必要かどうかを判断:この質問は広範なテーマをカバーしており、具体的なビジネス領域や状況に応じてフォローアップの質問が必要です。
・フォローアップ質問の生成:
「どのビジネス分野での変革について知りたいですか?(例: マーケティング、製造、カスタマーサポート)」
「この変革が短期的か長期的か、どちらの影響に関心がありますか?」
「中小企業と大企業のどちらに焦点を当てていますか?」
・フォローアップ質問に回答:例として「マーケティング」と「短期的な影響」「大企業」を選んだ場合
マーケティング分野における生成AIの短期的な影響として、大企業が顧客データを活用して個別化されたマーケティングキャンペーンを自動生成する能力が挙げられます。AIは顧客の購買履歴や行動データを分析し、最適な広告コンテンツやオファーをリアルタイムで作成することができます。これにより、マーケティングの効率が飛躍的に向上し、ターゲット精度が増します。
元の質問に回答:

回答:
生成AIがビジネスの世界にもたらす変革には、さまざまな具体例があります。例えば、マーケティング分野では、生成AIが顧客データを活用し、個別化されたマーケティングキャンペーンを自動で生成できるようになりつつあります。特に大企業は、この技術を使って、顧客の購買履歴や行動データをリアルタイムで分析し、最適な広告コンテンツを提供することで、ターゲット精度を大幅に向上させることができます。

短期的には、このようなAIの活用によってマーケティング活動の効率が向上し、費用対効果が劇的に改善されると予想されます。生成AIは、広告のパーソナライズを進めるだけでなく、顧客のニーズに即したクリエイティブなコンテンツの生成も可能にし、企業が競争優位を保つ手助けをします。

最後に

Zero-Shot Promptingは、特定の例を示さずにモデルに指示を出す手法です。この記事では、この手法の基本概念、活用法、設計方法、そして種類について解説しました。Zero-Shot Promptingを活用すれば、生成AIから有用な応答を引き出すことが可能です。プロンプトの設計と調整を工夫することで、より効果的な応答を得ることができるため、紹介した手法を試してみてください。

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