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信用計測の先にあるもの

「信用」。ビジネスはもちろん家族、親しい人など人間関係に、この言葉は欠かせません。信用を失えば人は逃げていくでしょう。特に金融の世界では、信用なくして資金調達はできません。私は大学時代に企業の信用リスクを計測する数式モデルを研究したことがあります。当時は企業データを集めて、最も簡単な線型モデルに無理やり当てはめて信用リスクを計測した記憶があります。ただ、今は技術進歩でAIとデータを使い、複雑なアルゴリズムで信用リスクを計測する動きが広がっているようです。今回紹介する「デジタル金融の激震」はデータが育む新潮流です。

「あらゆるデータの入手が可能になって信用はデータそのものになった」。カンボジアやインドでは、データを使った信用創造によって、中小企業に国境を越えてマネーが流れる新ビジネスが生まれています。データ経済がもたらすビジネスの革新です。ここまではビジネスの範疇ですが、この記事は、さらにその先にある国家と信用の関係にまで踏み込むところに、普通の記事を超えた面白さがあります。

信用取引の基盤である国家の代わりになり得る新しい技術を構築する動きが始まっています。登場するアルゼンチンの起業家は「国境を越える経済活動が増えた現在、国家やその統治・司法制度は契約履行の基盤として十分信頼できなくなった」と指摘します。記事では、こうした動きが国を治める政治のディスラプション(創造的破壊)に道を開くかもしれないと締めくくっています。新しい信用基盤が人々に受け入れられ、政治のディスラプションが起きたとき、何が起きるのでしょうか。国家という概念が溶け始め、経験したことのない光景が広がるのかもしれません。

(デジタル編成ユニット 島田貴司)

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