コント番組


こんにちは。仁木恭平です。



18歳で北海道から上京してお笑い芸人を始めたけど、2年くらいは特に具体的な理想像とかビジョンも決めないで、「無心で」というより、本当に何も考えないで、これがどうにかなるなんて思わずにエントリー料のかかるお笑いライブに出てた。


それからコンビを組んでライター業をやらせてもらったり、ガクヅケというコンビとのツーマンライブの幕間映像で「整備不良で真っ赤な火に包まれる扇風機の映像」を流したり、本当に色々なことをした。

それから組んでいるコンビも変わって今はひみつスナイパー健というコンビでサンミュージックという芸能事務所にいる。


今のコンビを組んですぐに、「新しい波24」のオーディションがまわってきた。

新しい波というのは、「めちゃイケ」とか「はねトび」といった、フジテレビが8年周期で作るコント番組の基となる番組で、このオーディションを進んでいけば新しいコント番組に出られるということになる。

「コント番組に出る」というのをいくつかある芸人の夢、目標のひとつにしている人は多いと思う。

俺は子供の頃から「ごっつええ感じ」というコント番組が大好きで、その中のコントで、「マンションの一室で学生が受験勉強をしていると、上の階の部屋から何かを叩きつける音が響いてくるので苦情を入れようとその部屋に行くと、デカすぎる握りこぶしがついた装置と、それを操作している科学者のような格好の2人が、その握りこぶしの装置のデータを調べていた」というものがある。

なぜそのコントが好きなのかと言うと、「技術とお金をかけた大規模なお笑いをやりたい」とずっと思っていて、それが一番わかりやすく出ていたコントだった。

そんなことができるのが俺の中のスタジオコントのイメージ。

一次オーディションとはいえ、そのチャンスが自分にまわってきた。




かなりすぐ落ちた。

オーディション部屋の前には、次のコンビをドアの前で待機させるようにADさんが立っているのだが、俺たちが部屋に入ってから「コンセントに挿しっぱなしにしていた忘れ物の充電器を取りにきただけの奴」みたいな速さで部屋から出てきたので、ADさんが少し呆気にとられた表情をしてるように見えた。

本当にかなりすぐ落ちた。オーディションしてくれたスタッフさんも「……今、落ちた?」となるくらい、かなり、すぐ、落ちた。


上に書いたように、この「新しい波」シリーズは8年周期でしか無いので、次のチャンスは8年後。俺は34歳になっている。

オーディションがまわってくる訳がない。

34歳の男に「新しい波」のオーディションが。

「あんたみたいなおっさんに、新しい波のオーディションなんて似合わないわよ!オーッホッホッホッ!!」とお姉様たちからなじられるのが浮かぶ。お笑いシンデレラ。

とにもかくにも、いくつかある中のひとつである「コント番組のレギュラーになる」という夢はこの時点で潰えた。

同じ事務所にオーディションを最終まで残っている先輩がいて、事務所ライブにフジテレビのカメラがよく入っていた。俺は少しだけ映ることを考えて、壁に向かって俯き気味にネタを考えているような表情をしてしまった。それをしてしまったら負けだ。明確にモブキャラになった瞬間。


それから1年後くらいに「ウケメン」という番組のオーディションがマネージャーから回ってきた。

またしてもフジテレビの番組。俺の感覚としては部屋に忘れた充電器を取りに戻って以来だ。次はどんなスピードなのか。おつりの小銭を探すのに苦戦する出前くらいの時間は持ちこたえたい。

めちゃめちゃ消極的になっていたが、一次、二次とどんどん受かっていき、レギュラーメンバーに選んでいただいた。充電器の回収を免れた。


11月頃から不定期放送でネタと企画をやらせてもらう番組だったのだが、8月よりフジテレビのコント番組として月1のレギュラー放送も決まった。


本当に思ってもない角度から夢が叶っている。

充電器は挿さったまんまだ。


最近、少しずつスタジオコントにも参加させてもらっているけど、2〜3分程度の一本のコントに大勢の技術ある大人が関わっていて、自分がその労力を使わせるほどの働きをしているのか不安になることもあるが、人のためにというより自分のためにできることを見せていきたい。


レギュラー放送の初回は8月2日の深夜25:45からです。ゲストにクリープハイプの尾崎世界観さんが来ていただいてトークやコントをしています。お時間ありましたら是非。



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