年頭にあたって

#正義の人びと
#カミュ
#中村まり子訳
カミュの戯曲を初めて読んだ
1905年2月にモスクワで起きたセルゲイ大公襲撃をもとに書かれたものだ 数人の若者が、圧政に苦しむ民衆のために自己を犠牲にして世の中を変えようと計画する
計画の一回目は大公の馬車に子どもが2人乗っていたことから実行されなかった そのことで同志たちの間にある革命への思いの乖離があぶり出される
正義とは何か 殺人は悪か それで民衆は救われるのか
二度目は計画通り実行されたが、実行者は自己の正義を守るために恩赦の申し出を断り絞首台へと登る
残された同志たちは彼をたたえ、次回の実行者になることを切望する

たった100ページ余の戯曲だが無駄がなく、まるで舞台の最前列で芝居を見ているような気持ちになった
これは、役者であり訳者である中村まり子さんが声に出しながら訳を進めたためらしい
『ルクレツィアの肖像』で小竹由美子さんの日本語の美しさに出会い、訳の大切さに目覚めたのだが、今回も別の意味で素晴らしい訳だと思った
また解説で岩切正一郎さんは、
《今、日本で我々が『正義の人びと』を読み舞台で観る意義は、この戯曲が(カミュの言った)【奴隷の沈黙】へ陥らないよう我々の意識を目覚めさせるところにある》と言う

2024年1冊目の読了本となった


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