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「地域で安心して暮らせる精神保健医療福祉体制の実現に向けた検討会」とやたら長い名称の報告書ついて

★1966年に出版された「アルコール中毒」の副題は「社会的人間としての病気」となっている。因みに著者は精神科医、作家のなだいなだ。
そして56年の時を経て2022年6月9日、精神保健福祉に係る25団体の有識者の方々によって取りまとめられた「地域で安心して暮らせる精神保健医療福祉体制の実現に向けた検討会」報告書が厚生労働省より発表された。
冒頭に「新型コロナ感染症の影響により~不安を感じており、メンタルヘルスの不調や精神疾患は、誰もが経験しうる身近な疾患・・・」とある。そしてその対象を「精神障害を有する方」と「精神保健(メンタルへルス)上の課題を抱えた方」(以下、「・・・抱えた方」)に区分している。ただこの報告書「・・・抱えた方」について、ほぼふれてはいない。
だが、冒頭の「新型コロナ感染症の影響により~不安~、メンタルヘルスの不調~」の対象は概ね「・・・抱えた方」のはずなのだが・・・? 
そして「・・・抱えた方」とは、半世紀以上前に一精神科医が提唱していた「社会的人間としての病気」と同じではと、いった気が私はする。

★長い検討会の名称が気になって仕方がない。とくに、「安心」と「体制」との組み合わせだ。私はこれまで「体制」については、「安全管理体制」、「安全保障体制」などと、「体制」の頭には「安心」より「安全」が付くものだと理解してきた。とくにこの報告書の冒頭には新型コロナ感染症の影響をあげている。日本はゼロコロナ管理体制ではない。今後はウイズコロナだとして、今、権利と義務らしきことのはざまで揺れているのが日本の現状だ。マスクも本来、感染状況をみて個人の判断で着用の有無を判断していいはずだが・・・。今、政府はマスク着用緩和のルール作りを検討しているみたいだ。何か全てが変な圧力体制に組み込まれそうで、不安で不気味な世相だと私は勝手に思う今日この頃。しかし、そんなルールがあるのが安心だとする方もおられるだろう。そう、「安心」とは個々個人によって温度差があるものだ。ワクチン接種についても然り、とくに子供の接種に関しては幼い子供を抱える親にとっては悩ましい限りだろう(2022年10月7日現在)。ただ、それは全て任意である。この報告書、百歩譲って「精神障害(統合失調症)を有する方」を意識した報告書であるなら可としよう。だが、新型コロナ感染症の影響を受けているなどと、様々な社会的ストレスを・・・すなわち「・・・抱えた方」も含まれている。よって、私はこの報告書を不可とする。

★1987年成立の精神保健法(現:精神保健福祉法)をさらに浸透させるつもりなら、その法が定義する精神障害の筆頭疾患である統合失調症のみを対象として「地域で統合失調症の方が安心して暮らせる精神保健医療福祉体制の実現に向けた検討会」とすると、報告書の各論も含めて何故かすんなりと受け入れられる。だが、報告書には「・・・抱えた方」が明記されている。私はすでに、この法の三本柱である「任意入院、精神保健指定医、精神医療審査会」は形骸化している、といった立場を取ってきた。そんな立場からの意見だが、この際、今後抜本的な制度改革を行うことを見据え、取り敢えずは努力目標として「地域で安全に暮らせる精神保健医療福祉体制の実現に向けた検討会」でよかったのでは、と・・・。次回続く・・・。

【余談:不安で不気味な世相について、「第89回NHK全国学校音楽コンクール小学校の部」が2022年10月9日開催、NHK‐Eテレで生放映していた。合唱の子供たちは全員マスク着用。歌いづらそうなのは観ていてわかる。健気だ! この子らの誰かが人生の何処かで深刻な「・・・抱えた方」になるのではと、つい気になってしまった。】

*参)精神保健福祉法第五条:定義 精神障害者
「統合失調症、精神物質による急性中毒又はその依存症、知的障害、精神病質その他の精神疾患を有する者をいう。」

【関連先リンク】
「地域で安心して暮らせる精神保健医療福祉体制の実現に向けた検討会」

厚生労働省 (https://www.mhlw.go.jp)


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