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『オン・ザ・ロード』を読み切れなかった話

ジャック・ケルアック『オン・ザ・ロード』という小説を知人が激推ししてしていたので購入してみた。


あらすじは以下の通り。

若い作家サルとその親友ディーンは、自由を求めて広大なアメリカ大陸を疾駆する。順応の50年代から叛逆の60年代へ、カウンターカルチャー花開く時代の幕開けを告げ、後のあらゆる文化に決定的な影響を与えた伝説の書。バロウズやギンズバーグ等実在モデルでも話題を呼び、ボブ・ディランに「ぼくの人生を変えた本」と言わしめた青春のバイブル『路上』が半世紀ぶりの新訳で甦る。

文庫版で500ページ近くもある。なかなかのボリューム。購入したのは随分前だけれど、読み始めたのは1ヶ月ほど前だ。1ヶ月間ちびちび読んでいたわけだが、どうにも進まない。

文章(訳文)は非常に読みやすく、するする読める。でもどうしても熱中して読めないので、とうとう投げ出すことに決めた。200ページ読んでも無理なら仕方がない。で、なにが合わなかったんだろうと考えてみた。

①あまりにも土地勘がない

はっきり言って、僕のアメリカについての知識は相当貧しい。というかほぼない。だから主人公があっちに行ったりこっちに行ったりしていてもまったくピンとこなかった。それが大旅行なのか小旅行なのかもわからない。

②狂人が多すぎた

出てくる登場人物がほとんど頭がおかしいとしか思えない振る舞いをしている。たとえば

・・・と思ったのだが、終始狂っていてどこを抜き出せばよいのかわからない。なのに文章だけはするする入ってくるのだから、すごい。

③主人公に感情移入できない

②と似ているが、少し違う。そしてこれが一番の理由だと思う。この小説は主人公(サル)の一人称視点の小説だ。サルは狂人に囲まれながら、なんというか普通の人間のように振る舞う。振る舞うというか、まあ、普通の人の感性に近い気がする。ただしサルは異常に刹那主義なのだ。

一週間先、自分がどこにいるのか、お金はあるのか、宿はどうするのか。それらすべて一切合財を考えないで、行動する。そのときその場が楽しければそれで良い、といったふうに行動する。行く宛はないけれどここにはいたくないと、旅立ってしまうようなやつなのだ。それは勇気があるとか思い切りが良いとかではなくて、どちらかといえばブレーキがぶっ壊れているようにしか僕には思えなかった。

と、ここまで考えて「あ!」と思ったことがある。そういえば知人の勧める本で読みきれなかったのが他にもあるな、と。

チャールズ・ブコウスキー『死をポケットに入れて』、マイケル・フィンケル『ある世捨て人の物語』(こちらは読み切ったがなかなか骨が折れた)。そして『オン・ザ・ロード』。共通点は主人公たちがみな一様に刹那主義な点だ。

「こいつ純粋にそういうのが好きなんやな……」と気づいてしまったので、これからはきちんと吟味してから手に取ろうと決めた。いや、彼はまったく悪くないんだ。好みの問題であって。そして彼自身にもそういうところあるかもなあと考えた。



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