お勉強148:「難しい」SBRT ②

https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S1556086421021122

超中枢性腫瘍に対するSBRT治療 について

<症例提示> 78歳男性
CT画像で新たに右下葉に結節を認めた。
PET/CTでは,右下葉のの食道側奇静脈部に
FDGで顕著に検出される2.9cmの結節が,
右主気管支に接して認められたが,結節や転移は認められなかった。
EBUSガイド下の生検により,NSCLCが確認された。

<臨床的ポイント>
1. 超中枢性腫瘍の治療にSBRTを使用するのはいつですか?
2. 超中枢部腫瘍のSBRT治療に関連する主要な毒性は何か、
 またそれらをどのように予測できるか?
3. 超中枢部腫瘍の治療において安全かつ有効と考えられるSBRTの線量は?
4. 超中枢部腫瘍のSBRT治療に関して残された重要な問題は何か?

<考察>

腫瘍の位置は毒性の主要な決定因子であり、
腫瘍はしばしば周辺部(pripheral)、中心部(central)、
超中枢部(ultracentaral)に分類される。
中心部の腫瘍は気管および近位気管支から2cm以内に位置し、
末梢部の腫瘍に比べて高い毒性と関連している。

超中枢部の腫瘍は気菅に直接接しているか、
放射線計画の標的体積が中枢気道に重なっている。
超中枢性腫瘍は最も高い毒性リスクを伴うが、
早期-NSCLCに対する治癒の可能性のある治療の利点が、
潜在的な毒性のリスクを上回るため、頻繁に治療される。

超中枢部的な腫瘍を有する患者に対しては、
最初に外科的切除を検討すべきである。
しかし、手術が行われないことも多い。
肺動脈切除および再建を伴う、または伴わない
スリーブ肺葉切除術は、超中枢部の腫瘍を切除するために
しばしば使用され、一方、気管スリーブ肺葉切除術または
気管切除術は、遠方の気管または気管を含む腫瘍を切除するために
使用される。一般的に、手術はベースラインの心肺機能が良好で、
外科的完全切除(R0)の可能性が高く合併症の発生率が許容範囲内で低く、
気管支血管切除および再建の専門知識を有する外科医がいる場合にのみ
検討すべきである。
(日本の呼吸器外科の先生はこの辺りかなり優秀である)

根治的SBRTは、
医学的に手術不可能な中心部または超中枢部の腫瘍を有する患者に
とって、可能な治療代替法である。

歴史的に見て、肺SBRTの初期の研究では、
60~66Gyを3回に分けて治療した中心部に位置する腫瘍患者の約50%に
グレード3以上の毒性が報告されている

重要な正中構造(気管支、心臓、食道など)を
高線量の放射線から守るために、
気管と近位気管支を中心とした2cmのマージンを持つ腫瘍は
初期のSBRTプロトコルから除外されていた。

技術の進歩、臨床経験、線量の最適化により、
中心部および超中枢部の腫瘍に対する最新の肺SBRT研究では、
グレード3以上の毒性が限定され、高い局所制御率が報告されている
中心部または超中枢部の腫瘍を治療する放射線腫瘍医は、
リスクのある隣接臓器への線量を制限すると同時に、
根治線量を達成するという難しい問題に取り組まねばならない

先行研究によると、許容可能な局所制御を達成するためには
BED10>100Gyが必要である。

超中枢部の腫瘍をSBRTで治療する際の主な懸念事項は、
中心気道壊死、気管食道瘻、気管支肺出血などが
稀ではあるが致命的な副作用である。

瘻孔または致命的な出血のリスクは、
腫瘍が直接浸潤するほど高くなることから、
CTまたはMR血管造影、気管支鏡検査、
および内視鏡検査を組み合わせて、
必要に応じて隣接する血管、気管支、または食道への腫瘍浸潤を
評価すべきである。

RTOG 0813で5分割SBRTを用いて治療した
中心部に位置する腫瘍の最近の解析では、
最大許容線量は1日あたり12Gyであり、
これはグレード3以上の毒性リスク7.2%と相関していた。

その結果、現在ではほとんどの放射線腫瘍医が
中心部の肺腫瘍の線量を
1フラクションあたり10Gy以下に抑えている。
しかし、RTOG 0813 プロトコールで治療された腫瘍のうち、
超中枢部の腫瘍はほとんどなく、
リスクのある隣接臓器の保護をさらに強化するために
SBRTの線量をさらに減弱させて治療されることが多い。

超中枢性腫瘍の治療に60Gyを8分割で使用した
2つのレトロスペクティブな研究では、
グレード3の毒性は0~6%で、グレード4~5の毒性は報告されていない

しかし、最適な線量レジメンは不明であるが、現在進行中の
超中枢部腫瘍に対するSBRTの線量漸増試験
(SUNSET試験;NCT03306680)では、この問題に重要な
結果が出ることが期待されている。

中心部および超中枢部の腫瘍を対象としたSBRT研究の大半は、
グレード3以上の毒性の割合が低い(10%以下)ことを報告しているが、
少数の研究ではグレード3以上の晩期毒性の割合が高い
超中枢部の腫瘍を対象としたSBRTで報告されている
毒性の結果が不均一であることは、
線量分割法とは別に、いくつかの付加的な因子が
治療関連の毒性に影響を及ぼす可能性があるということを示唆している

気管支の線量ホットスポットを120%に制限することも、
毒性のリスクを低減する可能性がある。
先行研究では、気管支の最大BED3≧180Gy
(5分割で45Gy、8分割で55Gyに相当)は
死亡率が高くなることが示されている。

また、肺動脈に隣接する腫瘍の治療に関連して死亡率が高くなるが、
肺動脈に隣接する超中心部の腫瘍の治療を避けたいくつかの研究では、
毒性の割合が低くなっている。
これらの結果を踏まえて、
進行中のSUNSET試験(NCT03306680)では、
気管支内浸潤を伴う超中枢部腫瘍の患者を除外し、
線量ホットスポットを120%に制限している
4-7本のコプラナービームを用いた強度変調放射線治療(IMRT)の研究では
致命的な肺出血を起こしたすべての患者に
BED3≧225Gyのホットスポットがあったため、
高い毒性が報告されている

<実際の治療>
この患者は診断用の気管支鏡検査を受けたが、
気管支への直接浸潤が認められ、集学的検討の結果、
手術は不適と判断された。
60Gy/12Frの低分割放射線治療が行われた。
これまでの研究では、60Gy×8分割での安全性が報告されているが
一方で60Gy×12分割という控えめな治療法でも
かなりの毒性が報告されているので毒性のリスクを
最小限に抑えるために、分割を増やして対処した
治療中、彼はグレード1の疲労感を訴えたが、その他の毒性はなかった。
治療から3か月後、胸痛、呼吸困難、咳、喀血、嚥下痛、嚥下困難はなく、
CTでは,照射された奇形食道陥凹部の腫瘤が縮小していた

<私的雑感>
中心部に対するSBRTはチャレンジング。
OARにマージンをつけて、
PRVとしてその部分には低線量、PTV-PRVは高線量、
というのがVMAT時代可能になっているのでそういう作戦をとっている。

日本だと、JROSGの60Gy/8Frや駒込の75Gy/25Frとかが
一つの指標なのだろうか。

以前勉強に出した

https://note.com/nijuoti/n/n898e443f6b74

のような、週1-2分割、っていうのは結構いいのではと思っている。
大線量における通常組織の回復と腫瘍組織の回復の差というのは
あんまり研究されていないけれど、実は大きいのかもしれないと
最近文献を読んで思っている。

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