お勉強186:JCOG0502論文化

https://www.gastrojournal.org/article/S0016-5085(21)03352-7/fulltext

JCOG 0502
cT1bN0M0の食道がん(ほとんどSq)に対して
CRTは手術に非劣勢か?という臨床試験

最初はランダム化比較試験を企画したらしいが
当然のごとく患者集積が悪く、非ランダム化試験となる。
やっぱりというかなんというか、CRTの方が
年齢が高いとか、病変長が長いとか
不利な条件があったので詳細は書かれていないが、
IPW法(逆確率重みづけ法)

https://www.jstage.jst.go.jp/article/tenrikiyo/19/2/19_19-008/_pdf

https://waidai-csc.jp/updata/2018/08/seminar-igaku-20170222.pdf

を参照のこと

で条件をそろえて、解析した。
HRの95%信頼区間が1.78を下回ればmet、という形。
ディスカッションにもあったが、
この値についてはかなり議論はあると思う。ただ、
患者数や食道温存のメリットから考えると妥当な値だと思う

手術は胸腔鏡とは限らないよう。
2or3領域郭清。

CRTの照射野は原発+上下2cmをCTVとする
本当に限られた照射野(予防照射は入れない)
不均質補正は行われず。IMRTはダメ。
(論文には3D-CRTダメ、と書いてあるが、
 これはさすがに違うと思う)
多門照射。QAは(Y.I.先生:伊藤 芳紀先生?)が頑張ったと記載あり
FPは700/70の4W回しという標準的なもの。

結果として手術209人、CRT159人の集積
11人ランダマイズにのってくれたが、今回は除外。

フォローアップ率は手術87.9% CRT 98.1%
手術群の治療完遂率は96.7%(うち不完全切除4例)
CRT群の治療完遂率は98.1%
CRT群のCR率(かなりCRの判定厳しい)は87.3%

OSについては 3年/5年生存率が 
手術で94.7%/86.5% CRTが93.1%/85.5%
ほぼ5年まではOSのK-Mカーブはぴったり重なっている。
OSはややそこからCRTが落ちてくるが、
食道がん死は5年以後ほぼ同じ。
(他疾患で死んでいる?ディスカッションには年齢の影響を
 指摘していたが、二次的な晩期有害事象についても考慮が必要)

IPW法で修正したHRは1.052、95%信頼区間は0.674-1.640
と非劣勢のマージンをクリア!

⇒positive trial!

というわけで、T1bN0M0食道がんに対するCRTについては
治療オプションとして提示すべきもの、という結果。
フォレストプロットではBMIが高い・女性はCRT有利より
あとは手術有利よりだが、明らかな因子は無し

PFSは当然ながら手術が良く
3年/5年PFSは 手術で84.1%/81.7%、CRTで76.1%/71.6%
優位差あり(HR 1.478 95%CI 1.01-2.162)

CRT群の再発は局所領域再発が多い。(従来報告通り)
24/57照射野内再発
いわゆる「サルベージ手術」になったのは
再発の10/57と、決して多くはない印象。
リンパ節郭清や内視鏡治療、放射線治療が合計で34/57と
フォローを密にすることでサルベージを低侵襲で
できている印象。

有害事象としては手術は肺炎・リークがやはり多い。
G3-4が7.7%/6.3% 手術関連死は2例(1%)
個人的には多いと思っていた狭窄は少なめ

以下、ディスカッションポイント
・limitationにもあるが、この結果は
 日本の優秀な内視鏡医の力が相当大きいので
 外的妥当性はどうなのか?という問題はある。

 しかし、日本の日常診療において
 食道がん早期の患者に
 「『やっぱり』手術がいいんですよ」
 というありがちなICはもう過去のもので、
 食道温存のメリット、デメリットをしっかりと
 説明し、SDMで治療法を決めていく時代になっていくだろう

・ディスカッションにもあるが、この手術群>CRT群の数の
 原因として「外科医が二つの治療法を説明している」
 バイアスはあるだろうとの事、上記のSDMをする際のことも
 考えると、手はかかるが、内科か放射線治療科が
 しっかりとCRTの説明、外科医が手術の説明
 という形をとるべきであると思う
 (なかなか人的資源が難しいところではあるが…)

・実際手術してみると27%にリンパ節転移があったとの事。
 の割には、CRTの9例しか領域再発をしていない
 というのは、結構謎な部分。
 微小な転移はFPだけで消えているのかもしれない。
 夢想者は、アブスコパル効果というかもしれない。

・当然領域再発を減らすために予防照射をする
 セッティングも考慮されるわけでJCOG1904が実施中
 この上下2㎝照射野、というのが案外絶妙だったのでは、
 というのが個人的な感覚ですが…

・この試験後、手術は胸腔鏡が当たり前、
 ロボット手術が導入され、さらに低侵襲・確実な手術に
 CRTのサルベージとしてPDTが入ったりしてきて
 両方とも成績は上がってきているだろう。 


JCOG0508に続き、JCOGの試験の中では
かなりIFの高い雑誌に載って、
JCOG食道グループ、快進撃です。
0909論文化にも期待したいところ。
日本全体としては1109の方が
インパクトは大きいのでしょうけれど。

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