お勉強331:食道がんCRTの線量増加はいみがあるか、標準線量は50.4Gy?60Gy?

食道がん、線量増加はどうか問題。
たびたび蒸し返される話題だが…

https://www.redjournal.org/article/S0360-3016(22)03520-9/fulltext

食道がんのSCCに限ってIMRTで線量増加試験。from中国
ケモがカルパク、っていうのがいまいちだが、
海外ではCDDP+5-FUとおんなじぐらいやられている印象

片群70人程度の小規模studyだが、
一応他施設ランダム化は
されて、ITT解析されているよう
median 3年のフォローで MST差が無し。
ただ、G3以上の有害事象は差が無い
(でも5%ぐらい治療関連死が… 両群同じぐらいで
 食道穿孔と、肺臓炎のよう。致し方ないか。)

以下詳細

対象としては気管支浸潤、瘻孔がない
食道がんで、鎖骨上、腹腔内のLNは
許容のよう。GEJ tumorとは区別つけるため、
GEJより2cm以上離れていることが条件
結果的にはほとんどStageII-III

線量は59.4Gy/33fvs. 50.4Gy/28 frとを比較
場所に合わせて予防照射はしている
RTのコンプライアンスはほぼ一緒。
ケモはほぼ完遂気味だがやや50.4Gy/28Frの方が入っている。

結果としては、MST,
PFSの中央値
(こちらは中間解析では1年の時点では差があったよう)
局所・局所領域再発は優位差なし
(一応高線量群が上には来ているが、ほとんど差が無い)

再発は局所と遠隔が半々ぐらい
遠隔転移は肺・骨・肝臓・遠隔リンパ節が多い
有害事象は食道炎も含めほぼ差なし

RTOG 94-05よりOSが良かったということで
筆者らはIMRTで臓器をまもったし、
栄養サポートしたからと述べているが、
個人的には単純に2nd以降の治療の発達な気がする

他にも最近の試験で線量増加がコケていることは
言及アリ。

ENIについても考察あり、
基本的に術前照射の感覚をもとに
41.4Gyの予防照射をしているが、
手術できない群では線量増加目的に
IFRTをするのもいいのでは、と考察あり
IFRTの方が、治療関連毒性が低いという報告は
多々あるよう

JCOG0303でも予防照射無しで、
ありの成績とそれなりに変わらなかった覚えがある。

いわゆるRT後の地固めのケモについても考察あり
結構慣例的に行われているが、
ランダム化でしっかりと示されたものではないと。

以下論文に示されたlimitationも含め、
個人的考察
・人数が少なくてパワー不足だった可能性はある
 局所制御に関しては線量増加の意味はあるかもしれない
・しかし、OSまでは響いてこない印象。
・IMRTでRT有害事象は減るのだろうが、晩期有害事象が
 効いてくるのはJCOG1109 とかを見ても5年後以降の印象なので
 この試験はどちらともIMRTだが、長期に見れば
 高精度の放射線治療の優位性が(レトロでだが)示せる
 可能性はある
・PET-CTが13.9%しか撮られていないのは気になる点ではある
・食道がんの線量増加を小線源なども使って
 頑張っても全然だめだったのに、ケモですごく
 成績が上がったのは放射線治療医として
 忸怩たる思いがある、と偉い先生が言っていたが
 確かにRTOGの試験ではRT単独で3生ゼロだったので
 増感効果に期待する方が今後の道なのかもしれない
 今後はICIに期待

といった結果も受けて。


端的に言うと、もう食道がん根治のstandardは50-50.4ですよ
それ以上増やしても毒性や副作用死が減るだけですよ、
というメタアナリシス


こちらの連続ツイートも
今までのエビデンスがスッキリまとまっている。

日本の60Gyはガラパゴス治療?
局所再発が多いのはPDTやESDのサルベージを
しっかりすることと、
そもそも進行期で局所制御
難しいそうな場合はNACRTとしての
RTを考慮すること、(JCOG0909のように温存は視野に入れますが)
というのが現状の正しいエビデンスのような
気がします。(世界的には)

JCOGでやっている試験のように局所進行でも
RTや強力なケモでコンバージョン手術、
というのが線量増加よりはよっぽどめがありそうです

放射線治療に関しては
IFRTにするか、ENIにするか個人的にはそちらに
興味が移りつつあります。
(こちらもJCOGで試験やってますが)

JCOG0502はやはり照射野が狭かったのが
勝因と個人的には思っています。

皆様、どうですか?


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