お勉強141:肺がん心臓ネタ①

(Openです)

近年肺がんRTにおいて心有害事象が注目されていますが、
そのレビューです。

肺がんRTで心臓有害事象は注目されていますが
その一方でしっかりとした線量指標は決まっていない。
そして、肺がん患者は心血管リスクが高く、
すでに心血管疾患を持っている場合も多い
(そもそも死因として両方ともかなり頻度が高い)

そもそも肺がん患者は肺がんで死ぬ可能性が高いので
晩期合併症に対してはあまり意識されてこなかったが、
RTOG0617で高線量が予後が悪く特に心線量が多変量解析で
予後不良因子としてわかってから注目度が上がってきた。

乳房やリンパ腫(Hodgkinリンパ腫)では
すでに放射線誘因性の心有害事象(RIHD)はよく知られていた。。
近年の報告では約31%の肺がん患者が「根治目的に」RTを受けている
ことを考えると、肺がんRTに他する心臓のことをよく知る必要がある。

このレビューでは様々な観点から
放射線治療の心臓への影響、管理、予防などをレビューしています。

<RIHDの病理>
この40年で理解は進んできたが非常にRIHDの成因は複雑である。
RIHDの中心としての病理学的変化は
線維化や石灰化にともなう三尖弁や大動脈弁の
狭窄、冠動脈の狭窄、心筋萎縮、心膜の癒着・肥厚などである。

RIHDは放射線に伴う急性炎症の結果引き起こされる
慢性の結果と思われる。様々な経路での
結果として線維化が起こり
収縮期および拡張期の機能障害を引き起こし
心臓の伝導系にも影響がでる。


<心有害事象のプレクリニカルモデル>
心毒性の前臨床モデルとして
最近まで、げっ歯類で使用されていた
放射線照射の研究は
主に高線量の単回照射であり、
数週間で照射される臨床的なレジメンを反映していなかった。

小動物用の画像誘導放射線治療が導入されたことで、
マウス、ラット、ウサギなどに対し
臨床に適した研究がができるようになった。
ゼブラフィッシュは、心臓血管やRIHDの研究で使用されるように
なって動物モデルです。
これらの前臨床モデルにより、急性、亜急性、および遅発性RIHD
の病態生理を完全に把握することができ、
細胞および分子レベルでの治療標的の特定につながりました。

<複雑な肺がん患者への放射線治療>
動物モデルは、RTの心臓への影響に関する治験を
ある一定程度得られるが、実際の肺癌患者に
影響を与える併存疾患を適切にモデル化はできないため、
その使用には限界がある。

最も一般的な心合併症は、
虚血性心疾患(IHD)と不整脈である。
心合併症の既往は、CRT後の患者における
心イベントの発生率や死亡率の増加と関連している

放射線治療を受けた局所進行NSCLC患者748人を対象とした
レトロスペクティブ研究では、心血管疾患(CVD)の
基礎疾患を有する患者の主要有害心疾患(MACE)の
2年間の累積発生率推定値は11.7%であった。
CVDの既往がある患者では、平均心臓線量(MHD)は
MACE発生率に影響を与えなかったが、
CVDの既往がない患者では、MHDが10Gy以上になると
MACE発生率が大幅に上昇した
(2年間の累積発生率推定値3.5%対1.1%)
放射線は時間に依存して悪影響を及ぼすので、
CVDのない若い患者は心臓線量がより重要になるかもしれない。

肺癌治療を受ける患者の少なくとも4分の1はCVDを有している。
その他の患者でも高脂血症、高血圧、糖尿病などの
CVDの既知の危険因子を持つ患者は多い
CVDのリスクスコアと線量パラメータを組み合わせた研究で
多変量解析を行った結果、CVDリスクスコアが高く、
MHDが高い患者は、肺がんのRT後の心臓イベントの発生率が高い。

心臓画像、特に心臓CTとMRIは、
一般患者と腫瘍患者の心血管障害を識別するために、
それぞれ感度と特異性が高い。
MRIは、心臓の解剖学的構造、機能、灌流を評価できる。
また同時に、組織の詳細な特徴を把握し、
浮腫や線維化など特定の心筋障害を評価することもできる。

心臓CTは、冠動脈の狭窄、冠動脈石灰化スコア(CACS)
ソフトプラークの負荷をできる。
CACSが高いと、MACEや死亡率が高くなる。
RTを受けた患者のCACSに関する小規模な研究では、
糖尿病と冠動脈への放射線量が
放射線治療後のCACSの上昇と関連していた。


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