お勉強252:直腸がんはTNTの時代

https://ascopubs.org/doi/full/10.1200/JCO.21.01667
https://www.esmo.org/oncology-news/short-term-radiotherapy-with-preoperative-chemotherapy-followed-by-surgery-is-efficacious-with-acceptable-toxicity-in-locally-advanced-rectal-cancer

直腸がんの術前治療として
5Gy×5FrのショートコースのRTにケモ
(CAPOX4コース)を加えるか(TNT群)
いわゆる50Gy/25Frのカペシタビン併用のCRT
(こちらがスタンダード群と考えて)のみかの
中国からの比較試験
設定としてはTNTがCRTに非劣勢かを見る、という試験だったよう。

一般的には術前CRT後、手術した後に半分ぐらいはケモできなくなるよう。
ということで、TNTが生まれた、という経緯も書かれている。
いわゆる5Gy×5FrのショートコースのRTならば
負担も軽くて、後のケモも入りやすい、
と考えて通常のCRT後のTNTではなく、
ショートコースを選んだよう。

手術はネオアジュバント治療後6-8週後
TNT群はCOPOX2コース、CRT群はCAPOX6コース
(要はちゃんとやり切ればCAPOXは6コースどちらの群でも
 入ることになる)

RTは全例IMRT。
CTVは原発・領域リンパ節
RTOGのプロトコールの骨盤の領域ということ。
TMEで取る領域・仙骨前・内腸骨・閉鎖リンパ節
坐骨直腸窩(これはふつうあまり入れない領域)
cT4bの時は外腸骨も入れる
上部の境界は岬角
下は腫瘍から2~3㎝下部まで
CTVからPTVマージンは5mm-10mm
cCRであったらW&Wも許容であったと。

片群300人ほどのstudyとなった。
プライマリーエンドポイントはDFS

対象はT3-4もしくはN+の下部直腸腺癌
というよくある設定群。
MRIを必須にした、というのがポイントのよう。

※MRIでいわゆる直腸間膜からの距離や、
リンパ節の評価、腫瘍からの脈管侵襲をみれる
というのが明らかになりつつあり、
術前にMRIをとる、というのが欧州では
かなりmustになりつつあるようです。

ショートコースは全員RT完遂
通常CRTは2.4%でRT中断1.4%で照射量低減
術前療法の完遂率はCRT群の方が良く、
有害事象はTNT群の方が高かった。
cCR率はTNT群11.1% CRT群4.4%
様々な理由により(手術拒否や、遠隔転移出現など)
各群230人程度の人が手術に。
手術後合併症は両群15%程度
主に創傷治癒遅延のよう。

各群1/4程度の方が術後化学療法を受けれず
予定したアジュバントを完遂できたのは
TNT群60%、CRT群48%というかんじ(優位差アリ)
アジュバント時の副作用もCRT群の方が多かった

TNT群とCRT群でR0率やypN0率は優位差なし
pCR率はTNTで21.8%とCRT群で12.3%でTNT群の方が優位に多かった。
DFS 64.5%と62.3%で非劣勢証明
遠隔転移無し生存、局所再発は差が無いが、
OSでTNT群の方がCRTより優位という結果(86.5%vs.75.1%)

サブグループ解析も優位差はないが、全体的にTNT有利

OSに関してはまだフォローアップが短いのでくっついてくる
可能性についてはディスカッションで述べられている。
(似たような試験でそういうような例があるらしい)

結論としては主解析の5Gy×5Frを使ったRTでのTNT治療は
CRT群に非劣勢である、という風にまとめられている。
現代のTNTの流れをサポートするデータであろうとのこと。

基本的にアジュバントが入らないのを術前に持ってくることで
相対的なケモのインテンシティーが上がり、
予後の改善があるのかもしれない。
あとは、pCR率の増加を考えると、W&Wの適応も
TNTで広がるわけで、時代はTNTにどんどん流れるだろうと
思わされます。

予後が変わらないのであれば、
コンプライアンスを考えると、通常FrのCRTより
ショートコースのRT,というのもいいのだなぁと。
サルベージの手術も考慮すると、
同等の成績ならば5Gy×5Frのほうが有利な可能性もある。

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