お勉強290:前立腺がん術後照射、Nが多かったら、adjuvant照射の方が良いかも

いわゆる「前立腺がん術後放射線治療」
に関しては
・ADTを加えるか加えないか
・即時かPSAが上がってきて(それもどのくらいか)からか
・全骨盤がいいか、前立腺床だけでいいか
などなどいろいろ
エビデンスが複雑に絡み合っていて
非常に難しい(というか、私も完全に理解していない)

個人的には
・PSAが高くなければADT加えない
 加えたとしても短期間のみ
・基本PSAがちょっと上がってきたぐらい(0.2以下?)
 でのearly salvageで十分
・前立腺床だけより、全骨盤を足した方が
 (害とメリットのバランスはあるが)よいのでは?

ぐらいのスタンスである
(皆さんはどうされているか、教えてください)

今回はpN1に関しての術後放射線治療の論文
いままではpN1が少ない論文のメタ解析
やADTの使い方、期間などの調整を行っていない
メタ解析などしかなく、
即時RTがいいのか、いわゆるearly salvage
が良いのかはよくわかっていなかったらしい。

そこで今回ドイツのハンブルグ大学の
22年間、17913人の中でpT2-4N1M0の解析
(年齢中央値は64歳)
約9%がリンパ節病理学的陽性
うち約8割が1-3個、約2割が4個以上
摘出リンパ節中央値は12個
陽性リンパ節中央値は1個
陽性リンパ節0個、1-3個、4個以上
放射線無し、即時、early salvageで層別化。

即時もearly salvageも全骨45Gy、術後床照射中央値68.4Gy
即時は術後中央値3.42ヶ月で、early salvageは21.36ヶ月でRT
(論文を読むと一応前向きにデータを集めたとある)

early salvage RT時のPSAの中央値は0.3ng/mL
(ただ、よく分からないが
 測り方の都合上最近のいわゆる`trigger PSA`
 で考えると0.1~0.2に相当するのでは?と言っている)

基本的には前立腺がんに限らない
全ての死亡において3群のRT法を比較する、という趣旨

時間依存性の解析法をとっているらしい(難しくて全然わからない)
骨盤リンパ節転移が一つ増えるごとのリスクを調べていると。
プロペンシティースコアマッチングを特に年齢
(全死亡の因子かつ、治療法の選択に影響するので)
に重きを置いて行ったとの事。

pN1症例のうち即時RTが25.53%、early salvageが21%で行われた。
即時RT症例の方がT3b以上、iPSA、断端陽性率は高いが
アジュバントのADTの割合も高い。

2.5年-23.2年(中央値約7年)のフォローで5.5%が死亡。
それぐらいしか死んでいないうえに、22.6%のみ前立腺がんで死亡
という、前立腺癌らしいデータだが、
即時RTの方が、リンパ節1個当たり8%全死亡を下げる。
放射線無しと、early salvageとの間には差が無し。

7年全死亡は即時RTの方が他群よりN4個以上だと良い。
(しないのとearly salvageの間には差はない)
N1-3個では差が無い。
(筆者らはサンプルサイズの問題でN1-3個だと
 差が「見えていない」可能性を指摘している)

むろん即時RTは害があるが、全死亡が減っていることには
大きな意味がある。
(が、Nが少ない場合は色々考えねばならない
 しかしNが四個以上の場合、
 全死亡の差は3年目ぐらいからついているのも注意)

むろん、以前に即時RTに意味がないという論文も出ている
ただ、これはADTの使い方や期間で補正していないことが
原因ではないかと筆者らは述べている
(事実、この論文でアジュバントやサルベージのADTは
 全死亡に大きく影響している)

この試験では郭清リンパ節が中央値12個だったので、
もっと少ない郭清個数でN1-3個の場合、
もっと即時RTは意味があるかもしれない。

いろいろ難しいところもありますが、
骨盤リンパ節も含めて即時に照射する
というのがNの個数やdensityでスタンダードになるかもしれません。

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