お勉強327:オリゴメタとSABR 第一回

https://www.e-crt.org/journal/view.php?doi=10.4143/crt.2022.1460


オリゴ転移とSABRに関するレビュー しばらく連載します
逐語訳+α なので、より詳しく知りたい方は原文を。

10個ポイントを挙げています

1:オリゴ転移の決まった転移数のカットオフはない
2:小規模だがほとんどのRCTが局所治療の利益を示している
3:SABRはエビデンスが最も高い局所治療である
4:SABRで「治る」かもしれない、
5:SABRは通常副作用は許容できる範囲である
6:SABRは費用対効果が高い
7:すべての病変を治療するのが望ましい
8:全身療法とのタイミングや必要性は分かっていない
9:アブスコパル効果に期待するな
10:革新的な臨床試験の立案が望まれる

今回は1-2

1:オリゴ転移の決まった転移数のカットオフは決められない



試験ごとに「オリゴ」の定義は異なり
3個までだったり、10個までだったりする。
さらに「前治療が入ったうえでの」
オリゴメタなのか、そうでないのかも試験ごとに違う
retrospectiveデータのメタアナリシスでは、
48.1%が5つまで、7.4%が4つまで、25.9%が3つまで
となっていたとの事。

ESTRO/ASTROで、聴衆に聞いたところ
「安全に照射できる数」が最大の個数というのが
コンセンサスになったよう。

理想的には「何個」と決まった数を
決める方が良いのだろうが、オリゴ転移というのは

「治せる可能性がある」

と考えるのならばカットオフを決めるのが難しい。
もちろん、いくつかのがんでは「治る」の基準も曖昧である
ただ、多くのがんでは5年無病生存であれば治ったと考えるが、
10年以上必要ながん(ホルモン陽性乳がんや前立腺癌など)
もある。癌腫ごとに決めるというのも
3個なら治る、4個なら治らないというような
線引きができるかというと不可能だろう。

EORTC40004という試験では大腸がんのRFAで
9個まで転移がある患者を含めていたが
OSの改善が認められている。
近年10個以内、10か所以上といった
個数のオリゴ転移への試験も行われている

「治る」を目指すという観点からいうと、
カットオフを決めるのは不可能と思われる

2020年にESTRO-EORTCのオリゴ転移の分類では
・複数部位の転移の既往があるか、
・オリゴ転移の既往があるか
・初発診断から6カ月以内か
(最初からあった転移なのか、途中から出てきたものなのか)
・診断時に全身療法中か
(全身療法にもかかわらずでてきたものか)
・増悪病変か
で9つの病型に分けている。

また、腫瘍のおおきさ、転移部位、
転移が出てくるまでのインターバル
といった患者因子も絡んでくる。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35840110/


 ではPSや治療中か、そうでないかとかを挙げていた

したがって、
オリゴ転移の決まった転移数のカットオフは決められない


2:小規模だがほとんどのRCTが局所治療の利益を示している



放射線だけに限らず、手術や
熱によるアブレーションなども含め
多くのRCTがオリゴ転移に対する局所治療の効果を示唆している。
NSCLC/大腸癌(これはRFAのエビデンス)/前立腺がん
SABER-COMETなどが例として挙げられる

もちろんセレクションバイアスがある
Gomezらは49人のNSCLCの1‐3個のオリゴ転移患者
(一時治療で進行がないことが条件)を対象としてII相試験を行った
手術やSABRをおこなうことでPFSやOSが改善し、
中央委員会が早期の中止を勧告した。
(PFS11.9ヶ月vs.3.9ヶ月)
長期フォローでOSの利益も得られた
(41.2ヶ月vs.17ヶ月)

※Lancet Oncol. 2016;17:1672–82

Iyengarも同様にII相試験でNSCLCで
一次療法を行った転移が6か所以内
をランダム化し、ケモしかしない群より
PFSの利益があることを示した。

※JAMA Oncol. 2018;4:e173501

EXTEND試験はII相のバスケット試験で
様々な癌腫に対してオリゴメタに治療を行うことで
PFSの改善を示した。
とくに前立腺がんに限った報告が
ASTRO2022に行われており
転移が5か所までの87名の患者でADTのみか
ADT+局所の放射線治療かの群に分け、
放射線治療の追加でHR0.25の
PFSのメリットがあることが示された。
前立腺がんではほかにSTOMP・ORIOLE
等でもRTや手術などの局所治療の有用性を
示している

SABER-COMETは99人の様々な組織型の
1-5個のオリゴ転移の患者を
局所治療としてSABRを転移に行う群と
通常治療のみ群とを比較した試験である。
初期報告でMSTで13ヶ月のメリットを示した。
(41ヶ月vs.28ヶ月)
長期フォローでさらにMST23ヶ月のメリットが
あることが最近の報告で示された。

このようにほとんどの(小規模な)RCTで
予後改善効果が示されている

(例外は下記の大腸がんと、乳がんの二試験)

PulMiCC試験では大腸がんの原発と肺転移を
取るか、経過観察するかの試験だったが
ネガティブに終わった(そもそも登録が進まなかった)
NRG-BR002 試験はオリゴ転移の乳がん
フェーズII/III標準治療+手術と標準治療のみの
試験だが、PFSやOSの優位性が3年の時点では
みられなかった。経過はまだ観察中である。

つづく


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