お勉強359:ASCO23 進行期直腸がんをめぐるあれこれ


PROSPECT試験

https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2303269

https://twitter.com/GillSharlene/status/1665433885789028352

https://www.medscape.com/viewarticle/992747


直腸がんで局所再発リスクが低い群に対してCRTを行わず、
FOLFOXのみの前治療(6サイクル)をする、という試験があり
(FOLFOX群で反応が悪い人はCRTに回ったらしいが、
 9%程度の割合だったと)

対象は臨床的にT2N+、cT3N-、cT3N+に分類される直腸癌で、
括約筋温存手術の候補とあるが、
基本的には低位前方切除の対象、という感じのようである。
(50%が直腸指診で触れず、肛門縁から5cm以下は15%程度
 肛門縁からの距離中央値は8cm)
cT4/4つ以上のリンパ節転移が疑われる/CRM3㎜とれなさそうなどは除外
MRIは85%が撮像されている

5年無病生存率は、FOLFOX6群で80.8%、化学放射線療法群では78.6%、
5年全生存率は89.5%対90.2%、
5年後の局所再発率はmFOLFOX6で1.8%、化学放射線療法で1.6%
すべてのエンドポイントで非劣勢基準を満たした。
pCR率を含めた病理学的結果もほぼ同等

Medscapeの記事によると
・RTにアクセスできない地域はまだたくさんある
・ケモならアクセスできる
・RTの晩期有害事象、肛門有害事象を防げる
・(女性の)忍容性温存
などのメリットを挙げている

副作用の詳細については

https://ascopubs.org/doi/full/10.1200/JCO.23.00903

に報告があり
全般的にネオアジュバント中の副作用はFOLFOX>5-FU+RT
(下痢はFOLFOX群で少ない)
神経障害はネオアジュバント中は予想通りFOLFOXだいぶ不利だが
長期的(1年後)にみるとCRT群のほうがよくない結果
(アジュバントでオキサリプラチンを受けているから?と考察されている
 そうならば、最終的にはあまり変わらない可能性あり)

この試験を含め、TNTなども含めたディスカッションをTwitterから

New York timesが、RTの‘brutal effect‘を防げるかも、と
この試験の結果を受けて書いていたらしく

こういう反論が。
→`brutal`は最終原稿から削除されたらしい…

こんな皮肉ツイートも

https://twitter.com/KrishanJethwa/status/1665407963878522880

非常にわかりやすい矢印の図がついていて、
ケモか、CRTかのバランスについて語っている。
局所成分と遠隔成分のバランスでどちらを選ぶかは考えましょうと。


現地では以下のスライドが出たよう。

Q1 非手術療法を目指すか?
Q2 RTは必要か
Q3 RTがいるならshortかlongか
Q4 TNTするならRTが先か、ケモが先か
について
Q1 非手術療法を目指すらなネオアジュバントは長期間のほうがよい
Q2 このPROSPECT試験のようなLARで対応できるがんで
  nonT4/N0~1/CRM確保可能/EMVI(-) というのでは
  「省略も許容」というのが大体の流れ
Q3 いろいろ意見はあるが、近年はlongが若干有利のよう 
  https://note.com/nijuoti/n/n73212bedcf43

  が、結果的には「遠隔成分」と「局所成分」を加味して
  局所因子(cT4/EMVI(+)/CRMとれなさそう/側方リンパ節陽性)
  が大きいならlongちゃう?という意見
Q4 OPRA trialでは(この試験はTNTでW&Wを目指した試験)
  

  CRTを先にやったほうが臓器温存率がよかった
  (StageII/IIIで50%近く温存できる)
  ※再発は大体3年でプラトーになる
  

結局この一枚のスライドに集約される。

このツイートもすっきりまとめてきている



ここから私見
・日本では「肛門温存」はISRも入ってくる
ISRやっている先生は「肛門温存できてQOL良し」という
お考えの先生も多い。ISRのパートナーとして
この試験のような化学療法のみのネオアジュバントを選ぶ先生もいるだろう

・一方世界的にはCRTは局所再発を減らす→直腸温存を目指す
という目的に変化してきており、それにはさらにケモを乗せてTNT
という流れになってきているのを感じる

・TNTでW&Wに持ち込めない群は当然ケモのみ→オペに直腸機能で
劣ることが推測され、これらのふるい分けが今後の研究の中心に
なってくる可能性が高い

・ICIの導入も期待されており、TNTがさらに進化する可能性はある

・TNTが進行期ではなく中期の直腸がんまで進出してくる(OPERAtrial)
 可能性もある。とうぜんW&Wに回る人は増える可能性
 https://note.com/nijuoti/n/n6af26b9e1438

・日本の今後の流れはどうなのか? 気になります。


参考推奨note


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