お勉強351:前立腺がんサルベージ治療コンツールガイドライン

<完全に放射線治療医向きです>

https://www.ctro.science/article/S2405-6308(23)00063-0/fulltext

ESTROからいわゆるサルベージ放射線治療のCTVに
関するガイドライン

放射線腫瘍医11人と診断医1人(泌尿器科医は……?)
で作成したとのこと
いかの3つのシナリオが仮に提案

症例1(CTV1): 60歳男性、術前臨床T2a、グリソン9(5+4)、PSA16ng/mL
ロボット支援根治的前立腺摘除術を受け、
pT3b、pN0(リンパ節12個切除)グリソンスコア9(5+4)
右基部に被膜外進展、このレベルの局所手術マージンは陽性(R1)、3mmの進展
右側には精嚢への浸潤が認められた。

※いわゆる「アジュバント放射線治療」

症例2(CTV2): 65歳男性、術前臨床T1c、グリソン7(4+3)、PSA10
根治的後腹部前立腺摘出術を受け、
pT2、pN0(リンパ節2個切除)グリソンスコア7 (4+3)
手術断端は陰性(R0)であった。前立腺摘出後のPSA値は検出不能(<0.1ng/mL)で、2年間検出不能のままであった。
2年後、その後PSA値は0.10ng/mLに上昇し、6ヶ月後には0.25ng/mLとなった。術後のMRI、PSMA-PETスキャンでは病変は認められなかった。

※いわゆる「サルベージ放射線治療」

症例3(CTV3): 70歳男性、術前臨床T3a、Gleason8(4+4)、PSA20ng/mL
ロボット支援根治的前立腺切除術を受け、
pT3a、pN0(リンパ節15個切除)、グリソンスコア8(4+4)
頂部の被膜外進展を認め、このレベルでの手術マージンは陽性(R1)、5mmの進展
PSAは術後約2ヶ月で0.1ng/mLが検出され、その2ヶ月後には0.2ng/mLに上昇
術後のMRIおよびPSMA-PET検査では病変を認めず、サルベージ放射線治療の評価のため紹介

※いわゆる「サルベージ放射線治療」だが、ほとんどnadierがなく、この論文では
‘salvage RT with persistently elevated PSA‘  の例として挙げられている。

以下、おそらくの大意
とりあえず、みんなにコンツールしてもらって
議論の余地がある(コンツールが一致しない)ところに
焦点を当てて、議論しコンセンサスを出しているよう。
一番議論の的になったのは
・下縁 ・上縁(精嚢のあたりをどうするか) ・前縁
だったよう。症例2と3はあまり大きな差がなかったが、症例1は少し大きくなったと
(被膜外進展+精嚢進展によるものだろうと)

(ここまでが前段階で、正直この症例の部分はどうでもよい…)

コンセンサスの細々


<下縁>


※vesico-urethral anastomosis (VUA)がポイント!
・VUAを解剖学的ランドマークとし、VUAの8-12mm下に輪郭を描く。
・VUAは、液体(尿)が見える最後のスライスの
 下のスライスと定義される。
(sagital像で見やすい。術後のMRIがあるならT2でバッチリ!)
・VUAが見えない場合は、陰茎球(penile bulb)を目印にし、
 陰茎球の真上のスライスに輪郭を描く。
 ※penile bulbはCTでもMRIでも容易に発見できるため

某先生(泌尿器エキスパート)によると、
このVUA近辺が一番再発しやすいところのよう

<前方>


・頭側では、CTVは膀胱後壁の1~2cmをカバーするか、
 膀胱後壁の後縁で停止する。
(精嚢のあった後、という解釈。膀胱後壁につけるマージンは
 IGRTで再現性がよいならもっと狭めてもよいとしている)
・尾側では、恥骨結合の半分から2/3までの恥骨の後縁。
(恥骨結合の上までは入れない)
 ※ただし、VUAが被るなら、いれること

<後方>


・直腸前壁まで輪郭を描く。
・頭側(精嚢のあたり)では、直腸間膜まででもOK。
(見えれば。見えなければ直腸前縁まで)
・直腸の前側角と既存の手術用クリップを含む。
※この直腸の前・側角というのは非常に再発しやすいとこらしい(後述)

<側方>


・内閉鎖筋の内縁まで輪郭を描く。
・CTVは閉鎖リンパの領域より前側方に延びないようにする。
(膀胱の過線量の原因となる)
・より尾側では、内閉鎖筋の内縁または挙筋の内縁が側縁となる。

<上部>


・両精嚢の領域を含み、3~5mmの "bridge"も含める。
 (要は「左右をつなげろ」ということ)
・病理学的に精嚢に侵入していない場合(pT2-T3a)は、
 精嚢床の底部(下3分の 1)を含む(→精管切断端の高さ)。
・精嚢に浸潤がある場合は、精嚢床全体を含む。
・既存の手術用クリップを含めるようにする。
※術前のMRI,診断用CTのフュージョンが有効と。

そのほかのリコメンデーション


※術後のMRIを撮ろう
・T2強調で3方向とる
・高いb値のDWI
・造影
・VUA/前立腺床/膀胱底/肛門挙筋/直腸 をちゃんと含める
術前のMRIとのフュージョンでさらにgood

※いわゆるR1の部分の扱いについて
以前はR1方向に5㎜CTVを膨らます、というのが推奨されていたが
今回はコンセンサスに至らず

※PTVマージン、IGRT
CBCTを毎日、最低週三回撮る
軟部組織、もしくはクリップ合わせ。このもとで
一応CTV+5mmということになったと
(当然施設で使っている装置や技師のレベルなどを
 考慮して考えるべしと)
ガイダンスなしや骨照合は推奨しない
マーカー留置などは推奨しない
(通常の前立腺治療よりもIGRTはクリッティカルと記載あり)

※直腸バルーン・直腸スペーサー
どちらも推奨せず

今回のポイントとして

・治療後のMRIを推奨する
(骨構造ではなく、外尿道括約筋で合わせることを推奨している)
 直腸の前縁、VUAなどがよく見える
・恥骨後縁を全部入れない。上のあたりは外す
(PSMA-PETでもこのあたりの再発は少ないと)
・VUAの5㎜上下の直腸の前、外側を含むのは重要

参考のこと

ぱっと見なら

じっくりなら

と比較がおすすめ

臨床的な点は

こっちを読んでね!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?